獣人族の国、ソラノシア連合王国
シリンズランドを出発する日はナディから目一杯のお別れのハグをされ、私たちはヴィーラさまやシリンズランド国王陛下ご夫妻、エルフ族のひとたちたちから盛大に見送られてお次の目的地・ソラノシア連合王国へとやってきた。
ソラノシア連合王国は6つの氏族の長が持ち回りで国の代表“首長”を務める特殊な国である。そしてフーリン国の属国でもある。
彼らの国はエルフ族の国・シリンズランドの北。そしてその先には魔帝国がある。その昔、魔帝国の脅威から逃れるため彼らはフーリン国の属国として与することを選んだ。
さて、ソラノシア連合王国の6つの氏族の話に戻るが、全て獣人族で、狼種、狐種、獅子種、寅種、牛種、鳥種に分かれている。首長は3年周期で変わり、今の首長一族は狼種・狼家が務めている。
シュキさまの訪国を前もって連絡したからか、何故かその場には狼家の他の氏族の長の方々も勢ぞろいしていた。
さすがは宗主国の王太子殿下だとシュキさまへの挨拶を見守っていると、次は何故か私に来た。
「ルティカ嬢、祖国でのことは聞きましたよ」
「大変でしたなぁ」
「国外追放ですって?なんてひどい」
「我が国なら喜んでルティカ嬢をお迎えいたしましょう」
と、温かい言葉をかけていただいた。どうやらひと晩のうちに私の国外追放はソラノシア連合王国の各氏族の長にまで知れ渡っていたようだ。それでいて皆さま心配してくれて、温かい言葉をかけてくださるとは。氏族を大切にするソラノシア連合王国ならではの風景なのかもしれない。
「ありがとうございます」
そうにっこり微笑むと、不意にシュキさまが私の肩に腕を回してくる。
「ルティカは我が妻となる娘だ。心配には及ばぬ」
と、ひとこと告げれば氏族の長の皆さまから驚愕の反応を返される。
「そんなっ」
「既にシュティキエラ王太子殿下のお手付きですと!?」
「ぐぬぬ。悔しいですが我らが宗主国の王太子殿下にならルティカ嬢をお任せできるっ!!」
「私たちの娘を頼みましたよ!」
『シュティキエラ王太子殿下!!』
と、何だか長さま方の娘のように温かいお言葉をいただいて。
そしてここでも・・・
「ルティカさまっ!」
とてとてと狼しっぽをゆらしながら、かわいらしい狼耳の少女がこちらへ駆けてくる。
「ルティカさま!心配していたのですっ!」
ぎゅむっ
そして盛大に抱き着いてくれた。
彼女は狼家の姫君。シャーラ・ラン姫。黒いロングヘア―にたれ耳の狼耳。瞳はサファイアのようにキラキラと輝きを放っている。かわいらしい顔立ちにふりふりフリルがあしらわれたかわいらしい着物風な桃色のドレス。そしてスカートの裾から見えるかわいらしいもっふもふ狼しっぽ。何より狼耳しっぽなのに、仔犬を連想させるこのかわいさは世界遺産並みである。
「シャーラさま、心配させてしまってごめんなさい」
「いいえ!こうしてルティカさまと再び出会えて本当によかった!他の氏族の姉さまたちもお待ちなのです!とっても心配していたのです!」
シャーラさまは他の氏族の姫であるお姉さま方からたいそうかわいがられている。そして彼女と仲のいい私も妹のようにかわいがってくださって、彼女たちには感謝の念でいっぱいだ。そしてきっと今も心配させていると考えると胸が痛いが、みなさま既にお待ちとは。
「お姉さま方にも心配してもらえるなんて、私は幸せ者のようです」
「ルティカさまには、私たち姉妹がついていますからね!」
ぎゅむっ
はうっ
やっぱかわいいっ!
シャーラさま癒されるっ!
そしてシャーラさまからのぎゅむっから名残惜しくも解放されると、次はシュキさまに抱きしめられる。
「あの、シュキさま?」
「きゃっ♡さすがはシュティキエラ王太子殿下ですっ!」
シャーラさまがぽっと顔を赤らめる。
「ルティカさまのこと、きっと幸せにしてくださいます!!」
と、シャーラさままでノリノリである。
「その、正式な決定はフーリン国の国王陛下に許可を」
得てからなのだが。
「心配ない。父も昔から応援してくれていた」
「え、国王陛下がですか?」
シュキさまは王太子殿下なのでご結婚は推奨されるだろうけど。
「ルティカとの婚約を」
え、私?私で決定なの?
「ど、どうして私なのですか?」
戸惑っていればシュキさまは迷わず答えた。
「俺には、ルティカしかいない」
そんなっ!?いきなり展開なんだけど。
「父上も、ノリノリ」
何故宗主国の国王陛下まで、ノリノリ!!
「何も問題ない!」
その、シュキさまって天然なんだろうか。何故か彼の口からはこれ以上の情報は得られない。そんな気がしたのであった。
~今回の馬車メシ~
シュキ「ハンバーガーを包んでもらった」
ルティカ「しかもベジタブルバーガーです。川で獲れたお魚を使ったフィッシュバーガーですね」
シュキ「因みにベリーソース味のサンドイッチもある!」
ルティカ「もぐもぐ。おいひぃれすね」
アルオ「お前本当に元大公令嬢だったのか?」
ルティカ「ほぉゆぅいみれすかぁっ!」
※ついつい前世のファーストフード店に入った時の感覚で食べていたらしい※




