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断罪、そして裁きの行方

※前話のシュキさまの出自に誤記がありましたので修正してます<(_ _)>



「さて、リヤム王国王太子」

シリンズランドの玉座の前にフーリン国の騎士たちに拘束されながら引きずり出されたのは、かつての私の婚約者であるソルであった。淡い金色の髪に少したれ目がちな青い瞳。美しい美貌だけが取り柄の浮気バカ男がそこにいた。


その玉座に座すのは今はシリンズランド王ではない。玉座に座る宗主国の王太子・シュキさま。そしてその左右にはシリンズランド王陛下とシリンズランドの王太子・ヴィーラさま。その傍らには私、ナディ、クロウさまも共に控えている。


シュキさまの次に私の顔を見たソルは途端に顔を青ざめた。何故死ぬように国外追放した私がここにいるのか、と言うことだろうか?


「何故、貴様がここに呼ばれたかわかるか」


「い、いぃ、え」

シュキさまのあからさまな威圧に顔面蒼白になったソルは、震えながらそう答えた。


「貴様が連れてきた婚約者だと主張する女が私を侮辱した挙句魔法を向け、あまつさえ私の妃となるルティカを侮辱し害そうとした。」


「んなっ、ルティカを!?そんなバカな。それに何故ここにルティカがいるんだ!」


「軽々しく我が妃になるルティカの名を呼ぶな。貴様はルティカを殺そう画策し、放逐した」


「ご、誤解です。その、その女は聖女であるマキアに対して罪を犯し、そして正当な罰として国外追放に」


「バカバカしい。聖女だから何だと言うのだ?我らがフーリン族をバカにしているのか?」


「そ、そう言うわけではっ」


「それにルティカへの罪、だったか?それに関してはルティカの名誉にも関わる。我が妃となるルティカにそのような不名誉な冤罪をなすり付けられては困る。即刻、リヤム王国へ調査を依頼する」


「それでしたら、私がっ!」


「ルティカをおとしめた貴様がその任をになうと?笑わせるな。あと、私とルティカを侮辱した上、害そうとした件についても宗主国王太子である私自ら、リヤム王国王に問いただす」


「そんなっ、父上にっ!?」


「更に我が属国であるシリンズランドの姫を貴様が連れてきた聖女とやらが侮辱し、害そうとした罪についてもだ」


「んな、それは、その。アリスヴィーラ殿と話を付けた件であって」


「では、アリスヴィーラは何と言った?」


「え」


「貴様があの聖女とやらを責任をもって管理するのではなかったのか?その結果私とルティカへ危害を加えようとした」


「そ、それは何かの間違いでっ!」


「間違いで済む問題ではない!」


「し、シリンズランドは我が国と同じ属国ではないですか!何故シリンズランドにばかりに肩入れなさるのですか!」


「同じ属国?シリンズランドは我がフーリン国の属国だ。だからこそ属国に手を出されれば、我ら宗主国は黙っていない。それが同じ我らが宗主国の属国が手を出したからといって情状酌量の余地が与えられるとでも?貴様らリヤム王国がやったことは立派な我らへの反逆行為だぞ」

シュキさまの威圧が強まりソルは今にも失神しそうな勢いだ。


「この件については即刻、リヤム王国王に問いただすこととする」


「そ、そんなっ!」


「黙れ。貴様は即刻母国に強制送還させる。良いな?」


「ひ、ひぅっ」

まぁこの場で処刑されるか、フーリン国に連れていかれて堅牢な獄中に放り込まれるかよりはましだろう。つまりリヤム王国王が彼にどのような待遇、処罰を与えるかで宗主国への忠誠を今一度確かめるつもりなのか。


ソルはシュキさまの部下の騎士たちに終始顔面蒼白でガタガタと震えながら、連れていかれた。


「シュティキエラ王太子殿下。此度の件、我らがシリンズランドとしても感謝の意にたえません」


ひと通り断罪を終えればシリンズランド王陛下と王太子のヴィーラさまが共にシュキさまへ頭を垂れる。


「構わない。私もルティカとその大切な友人に手を出されたのだ。野放しにはできまい」


大切な友人。そのシュキさまの答えにナディがそっと私に抱き着き、私もナディの頭を優しく撫でる。


ナディだって、いろいろ言われて辛い思いをしたよね。


ナディを腕の中で優しくあやしていれば、シリンズランドの騎士が玉座の間に乗り込んでくる。


「捕らえていた聖女が、脱獄しました!!」


えっ!?


「そんなバカな。魔封じの結界は万全だったはずだがっ!」

シリンズランド王陛下もヴィーラさまも唖然としている。


「行方は!」

シリンズランド王陛下が叫ぶ。


「掴めません!恐らく転移魔法のたぐいかと!」


「そ、そんな。も、申し訳ございません!」

シリンズランド王陛下が即座にシュキさまに謝罪する。


「どのような手を使ったかはわからないが。私はそなたらを疑ってはいない」


「殿下!」


「何より、ルティカへのそなたらの対応はとても温かいものだった。その対応に感謝こそすれ責めるつもりはない」


「はい」


「それに狙われているとみられるルティカは私が守る。だから心配には及ばない。あの聖女の女は、シェンナディア姫をルティカだと思い込んでいる。ルティカを狙ってくる可能性は大きいが再びシェンナディア姫を狙う可能性もいなめない」


「その通りでございます」


「引き続き、警戒されよ」


「はっ」

シリンズランド王陛下とヴィーラさまが宗主国の王太子へ臣下の礼をとる。


クロウさまが傍にいればナディは恐らく安全だろう。それに私にもシュキさまがいてくれる。


だから、きっと大丈夫。

そう、胸に押し込めるように不安を呑み込んだ。




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