男子会
「それにしても、興味深いものだな・・・ふふ、
こうして魔帝でもある私が、そなたらとスイーツを囲むとは」
妖艶な微笑を浮かべながら、魔帝・ルダは、
側にその奴隷であるヤタを侍らせながら、
ぱくっと竜皇国からのお土産・リキュールチョコを口に含む。
「あぁ、そうだな、ルダ殿。ディルは私ともとても気が合うし、
スイーツも好きなのだ。今宵はとても有意義な宴になるだろう」
と、シュキが答える。
「あぁ・・・魔帝陛下とこうしてスイーツを食べながら語らえるのは、
とても光栄なことだ」
そう、竜帝国の皇太子であるディルも頷く。
「そして今日は、弟たちも招待したのだ」
そう言うと、シュキが両腕にそれぞれフェイと、ニオを抱えて
仏頂面を輝かせる。
「ほぅ?やはり・・・比べてみるとまことににておるな」
ルダが妖艶に微笑む。
「兄さまったら・・・」
フェイはそう言いつつも、仏頂面を輝かせる。
「・・・義理の弟だと言うのに・・・光栄です」
と、ニオも照れながら答える。
「だが、義理だとは言え、私の弟には変わりない」
「兄さまはわふたん好きなので、わふたんな弟ができてウッキウキなのです」
と、シュキとフェイがニオに告げる。
「・・・はい。俺もウッキウキです」
と、ニオが頑張って答えれば、シュキがとたんにふるふるし出す。
「シュキさま・・・?」
「“にぃさま”がいい」
「では、義兄さま」
「・・・!」
その瞬間、シュキの仏頂面の背後に、
ふわわわわっと、お花畑が咲き誇った。
「ふむ・・・汝らだけずるいな・・・そうだ・・・おいで、クロウ」
そう、ルダが微笑めば、なるべく気配を消して、
静かにチーズをつまんでいたクロウを引き寄せる。
「おわっ!?いきなり、な、何を!?」
驚いているクロウに対し、ルダは余裕たっぷりな笑みを浮かべる。
「ふふ・・・っ、従兄弟同士とは言え、
クロウは弟も同然。さぁ、“兄上”と呼ぶ権利をやろうぞ」
「な・・・何を・・・っ」
「何だ、呼んではくれんのか?」
「・・・あ・・・あに・・・ぅ、ぇ・・・」
クロウは照れながらも口にする。
「よいなぁ・・・ヤタ、そなたも呼べ」
「はい、ルダ兄上」
「ちょっと、ルダさま!?ヤタ殿に言わせるなら、
俺に言わせなくても・・・っ」
と、クロウが焦りながらも口に出せば・・・
「兄上と呼ぶように・・・な?」
「・・・あ、兄上・・・」
「ふむ、そうだ。シュキが両手に弟を抱えているのだ。
私にも両手に抱えさせるがよい」
「んもぅ・・・っ!る・・・兄上も、シュキも、
これではディラン殿下が困りますよ!」
と、クロウは必死にルダの腕から逃れられる理由を探し、口にするが・・・
※ディラン=ディルの本名
「問題ないっ!!」
そう告げたディルの腕の中には・・・
「キーシャだよっ!」
「たまだよっ!」
いつの間にか、白い髪に金色の瞳、金色の竜角を持つ、
竜族の子どもがすっぽりと、おさまっていた。
「ほぅ?汝ら、神龍と・・・その系統の者か?」
と、ルダが問えば・・・
「よくわかったね!ぼくは神龍だよっ!たまはぼくの双子の弟!」
と、キーシャが答える。
「ふふ・・・伊達に魔帝はやっておらん」
「おみそれしました、魔帝陛下」
そう、ディルが言えば・・・
「ふふ、このようなところで、堅苦しい呼び名はよせ。
“ルダ”と呼ぶがいい。今後もな」
「ありがとうございます、ルダさま。
私のことも、どうぞ“ディル”とお呼びください」
「うむ、わかった、ディル殿」
「そうだ、クロウ殿も、どうか、私のことは“ディル”とお呼びください」
「え・・・・っと」
クロウが戸惑っていれば・・・
「クロウ殿には、私の弟の“イザナ”も世話になっていると聞くからな」
「・・・はい、むしろこちらの方が、世話になっているようなものです」
「まぁ、お互いに縁があるのだ。“ディル”でいい」
「わかりました、ディル殿。ところで、その、弟君たちは、
ついてこられたのですか?先ほどの宴では、お見掛けしませんでしたが」
「あぁ・・・この子らは・・・」
ディルがキーシャに目を向ければ・・・
「ぼくたち、神龍だから!ディルお兄ちゃんが呼んでくれたから・・・」
「空間魔法使って、駆けつけたのー!」
と、キーシャとたまがかわいらしく順番に告げる。
「そうなのだ!」
と、ディルもふたりの言葉に頷く。
「え・・・、え・・・?」
クロウは未だ理解ができず、ルダを見上げれば・・・
「ふふ・・・神龍とは、“そういうもの”なのだ。弟よ」
と、ルダが微笑む。
「そういうもの・・・ですか」
「あぁ・・・神龍とは、
そういったチートのできる生き物・・・いや、神にほど近い存在か」
「まてー詳しぃ!」
と、キーシャが嬉しそうに頷く。
キーシャが不躾に“魔帝”と呼ばれても、
ルダは怒るそぶりも見せない。
つまり彼らは、そう言う存在なのだとクロウは認識した。
そして・・・
「そんな弟君たちを持つディルさまは、すごい方なのですね」
「まてーの弟の方がすごくない?たま」
「うん、お兄ちゃん」
その、神龍と双子の弟の言葉に、
クロウがルダを見上げれば・・・
「まぁ、確かに・・・」
「ふふ、存分私を敬うがいいぞ、弟よ」
「えぇ、そこはもう存分に、敬っていますよ、兄上」
そう、クロウが苦笑すれば・・・
「さて、互いに打ち解けたところであろう?そろそろメインにするか」
と、ルダが提案し、彼らの元にチョコレートパフェがやってくる。
「神龍たちの分もあるぞ」
「わーい」
「ほんとだー!いつの間に?」
キーシャとたまが不思議がっていれば・・・
「魔帝だからな」
と、ルダが苦笑する。
「ルダ殿は・・・たまに底知れない」
と、シュキ。
「兄上は、なんでもありなんです」
クロウが嘆息し・・・
「まるで竜帝みたいだな」
と、ディルがこぼした。
「それは、光栄なことだな。天下の竜帝陛下と並べるとは・・・」
そう、ルダが不敵に笑み・・・
「では、乾杯だ」
ルダが乾杯の音頭をとる。
『乾杯!!』
一同がそれに続いて、ワイングラスのようにパフェの容器を掲げれば・・・
スイーツ男子たちの賑やかな夜もまた、更けていく・・・




