ルティカ観察日記
―――その日、私は見つけてしまったのだ・・・
禁断の、その、書物を・・・
―『ルティカ観察日記 7歳』―
な・・・なにこれ・・・!?
恐る恐る中身を・・・見てみると・・・
『今日、リヤム王国へ父上と共に赴いた。
王太子候補だと言う、第1王子は、
以前フェイをバカにした憎き仇敵。
陰ながら、殺気を放っていたら、
かわいらしい赤みがかった金色の髪に、
かわいらしい鬼灯色の瞳のかわいらしい女の子がいた』
え・・・この特徴って、私・・・?
てか、“かわいらしい”連発しすぎだけど。
『―何かいやなことでもあったの?これ、食べたら元気になるよ!―
と、屈託のない、かわいらしく微笑んだ女の子は、
リヤム王国大公令嬢のルティカと言うらしい。
彼女のかわいらしい微笑みと、彼女がくれたあんぱんの味が、忘れられない』
あ・・・ああああんぱん―――っっ!!?
私、初対面でシュキさまに何を渡して・・・っ!!
てか・・・あんぱん・・・パーティーに出るとは思えないけど・・・
まぁ、私は和食、和菓子も好きだが、菓子パンも好きなのだ。
そう言えば・・・当時から婚約者だったソルのおもりが嫌で、
かくれんぼと称してお城の中を散策したら、
いつも賄い用の菓子パンをくれる料理長がいて・・・
度々もらっていたっけ・・・
硬いパンしか知らなかった私・・・
学園に通うようになって、友人から
メロンパン、ジャムパン、ちくわパン、
クリームパン、チョココロネなどの菓子パンと言うものをもらうまで・・・
私にとっての唯一のご褒美が・・・そのあんぱんであった・・・
そして、そのあんぱんが、一番素朴な菓子パンなんだよと、
友人に紹介された時、私は初めて、“菓子パン”と言う存在を知ったのだ。
まさか・・・その菓子パン!?そのあんぱん!?
んもぅ・・・はずかしい・・・
あ、因みにその友人は、ロッタ殿下が即位してから、
正式に外交官として、城に召し上げられ、
今ではフーリン国に赴く際には、
必ずお土産にと、わざわざ王城の厨房の片隅を借りて、
菓子パンを作ってくれる、とてもよいと友人だ。
因みに、この菓子パン作りについては、
私のためともあって、シュキさまが直々に許可してくれたことだ。
あぁ・・・友人ってすばらしや。
『〇月×日 今日からルティカ観察日記をつけることにする。
報告によると、ルティかは今日もお城でお勉強。
今日もあんぱんをもらって、とても嬉しそうだったそうだ』
あんぱんもらってたことにも気づかれてた・・・
てか・・・報告って、何!?
『〇月▽日 報告によると今日はルティカの婚約者に収まった
憎き王太子候補・ソルが、ルティカに当たり散らして泣かせた。
いつか、八つ裂きにしてやる。覚悟しろ』
こ・・・恐い恐い!
てか、ソルったら・・・このころからシュキさまに
明確な殺意を持たれていたとは・・・
パラパラとめくっていけば・・・
『〇月××日 今日、どうしたらルティカを、
この手にできるだろうかと、予言者に相談した』
え・・・?これって、ツェイロン王国王太子のシンシャさまのこと?
この頃から親し気だったのか。
『それによると、ルティかは将来、“断罪、国外追放”に
なる可能性がでてきた。今のところは、ルティカのことも考え、
危険が迫れば守り通す。だが、もし本当にその未来が来た時は・・・
ソル、貴様を絶対に許すわけにはいかない・・・』
ぞわわ・・・っ
何か、筆圧に怒りが込められている・・・
と言うか・・・私・・・昔からシュキさまに守られていたって・・・こと?
そう思うと、何だかとっても、シュキさまを愛おしく感じてしまう・・・
「・・・ルティカ・・・」
は・・・っ!!
なんだか・・・後ろに・・・け、気配・・・が?
びくびくしながら、振り返れば・・・
「ルティカ・・・それを、読んだのか」
「ご・・・ごめんなさいっ!他人の日記を読むなんて・・・
し・・・失礼・・・ですよね!?」
シュキさまの表情は相変わらず無表情なのだが・・・
でも、やっぱり他人の日記を読むのは不味かったか・・・
いや・・・まって・・・これ、『ルティカ観察日記』・・・
つまり、私の日記じゃねぇか。
書いたのは私ではないものの・・・私にも・・・読む権利あるよね・・・?
と、何となく思った。
よし、もしもの時は、その言いわけでっGO!!
「気に入った・・・?ルティカの7歳の時から、
一日たりとも、欠かしたことはない・・・
だから・・・これからは・・・一緒に読む・・・?」
何故か、とても嬉しそうな仏頂面を向けながら、
私の両肩を掴んでくるシュキさま。
てか・・・一日たりとも欠かしたことはない!?
私が7歳の時からぁっ!?
「え・・・遠慮しますぅ」
私は、ドン引きながらも必死に声を絞り出した。




