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戦慄、そしてヒロイン襲来

※回想の呼称を統一しました<(_ _)>※


―――数年前


「初めまして。リヤム王国フラン大公が長女・ルティカと申します」

私は国外からも王侯貴族が集まるその会場でとても気になる子を見つけたのだ。赤みがかった私の金色の髪よりも白銀に近いキレイな金色の髪をハーフアップツインテールにした女の子。


彼女の耳は人族よりも尖っていて、恐らくエルフ族との混血かフーリン族との混血かな?と思った。彼女は何となく懐かしい黒曜石のようなキレイな瞳のかわいらしい顔立ちの女の子。


年齢も近いし是非お友だちになりたいなと思った。幸い彼女の周りには誰もおらず、そしてひとり寂しそうにしていた。


私に声を掛けられた彼女はとても驚いた顔をしていた。


「・・・」


「あっ、あのっ!失礼かと存じますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!」

驚いたように固まっている彼女に勇気を振り絞って、そう続けた。


「あの、えぇと。私は・・・な、シェン、ナディア・・・です」


「シェンナディアさま!」

仲良くなりたい。そう願った彼女に名前を教えてもらって、私はついつい満面の笑みを浮かべてしまった。


今思えば、淑女としてははしたないかもしれないが。10かそこらの年齢だった頃の話だから、大目に見てもらえるだろう。


そしてそれが今日こんにちまで続く彼女との絆の始まりの物語だ。


―――


そして話は現在に戻る。今日は予定通りあの浮気バカ男とヒロイン・マキアがエルフ族の王国・シリンズランドを訪問したと知らせが入った。


彼らには私とシュキさまが滞在していることは極秘である。私の抱えている問題が大きいこともあるが、わざわざ彼らに伝えても利益など無いし、シュキさま自身彼らと会う気はないためだ。


さらに私はその日はシュキさま用に用意された部屋に呼ばれていた。


部屋にはシュキさまよりも背の高い青年がいた。彼は深い藍色の髪に赤い瞳を持つ。耳は尖ってはいないが、瞳孔が縦長のため彼もきっとフーリン族なのだろう。


「そう言えば、紹介していなかったな。私直属の近衛騎士団長・アルオだ」

こ、近衛騎士団長!


「よろしく、お願いします!」

立ち上がってぺこりと挨拶すると、あからさまに舌打ちされて顔を背けられた。


んなっ。何故こんなにもしょっぱなから嫌われている雰囲気なんだろう。てか主君の前でそれはいいのかな?


シュキさまをちらりと見れば。


「アルオは恥ずかしがり屋さん、だからな」

主君としての最大限なフォロー感出してるけどっ!それ、絶対違うと思う!!!


「でも、ちょっとナディが心配です。あの浮気バカ男とナディを会わせるなんて」


「では、覗いてみるか?」


「そんなことできるのですか?」


「こんなこともあろうかとシリンズランドの近衛騎士隊から魔動水鏡まどうみずかがみを借りてきた」

えっと。それは指定された場所を映し出す便利アイテムでは?


「よく、そんなレアアイテム、借りられましたね」

シュキさまの側近であるアルオさんがカタっと上半身が軽く映るくらいの大きさの大きな楕円型の鏡を私たちの前に設置する。その鏡面きょうめんは水面のように揺らいでいる。


「あぁ。ほかならぬ私のルティカを振った憎き男の所業だ。この目で確認せねばなるまい」(くわ・・・っ)

あぁ、そう言う目的で。まぁ私も気になるけれど。


―――早速、見てみましょうか。


水鏡の鏡面が波形を描きながら早速お目当ての場所を映し出す。


「本日はようこそお越しくださいました、リヤム王国王太子殿下。そして」

まずはシリンズランドの王太子でナディの兄であるヴィーラさまが出迎えられます。


―――しかし、その時っ!


「まぁっ!ヴィーラさまぁっ♡お会いしとうございましたぁっ♡」

はあああぁぁぁぁぁっっ!!?な、何言ってんの!?何してんの!?あのオトゲーヒロイン!


オトゲーヒロイン・マキアは残念ながら定番のピンク髪ではない。スイートブラウンのセミロングのゆるふわヘアーにアクセントのピンクの花の形のヘアピンをしている。更にまんまるいぱっちりヒロインお目目は桜色である。そのかわいらしい顔立ちに誰もが振り向く美少女だ。


だが、口を開けば。いきなりヴィーラさまの手を握って顔をぐいっと近づけてキラキラした目で見つめている。


な、何なの?あの子。ぶっちゃけ私はあの子を見たことがあるだけで、実際にどんな子なのか全く知らないのだ。


―――けど。ひ、非常識にもほどがある。いきなりヴィーラさまの言葉を切って、勝手に触れて勝手に名前を、しかも愛称で呼ぶなんて!


ヴィーラさまもナディももちろんだが、あの浮気バカ男までもが固まっている。さすがにあの浮気バカ男でもまずいと思ったらしい。


「こ、こらマキア!やめなさい!アリスヴィーラ殿、大変申し訳っ」


「あら、いいじゃない!だってヴィーラさまもすぐに私を好きになるわっ!ロティスもフィルもロッタだって!」

そう、だったか?


ロティスは私の兄で大公子息。異母妹の私に冤罪を吹っかけてマキアの味方をした憎き異母兄。確かにマキアにご執心のようだったな。


ロッタさまはリヤム王国の第2王子であの浮気バカ男の双子の弟だ。確かに彼女とは丁寧に接していたがどこか無理矢理距離を置こうとしていたように思える。


そしてフィルさまだが、フィルさまはリヤム王国の南にあるロディア王国の王太子だ。彼は王太子であり留学してきた身とあって、問題を起こすことを良しとせず根気強く彼女にいていたことを思い出す。


“ロディア王国への一方的な中傷は王太子である自分への不敬にあたる”と。しかし彼の話では、彼女は全く以って聞く耳を持たないらしく、あの浮気バカ男の当時婚約者であった私に散々愚痴っていたのだ。


それで何故そんな言葉が?ちょっと引くんですけど。


「えぇと、フラン大公令嬢でしたね」

と、ヴィーラさまが気を取り直し彼女の手を軽く振りほどいて名前を呼べば。


「どうぞ“マキア”とお呼びくださいませ♡」

いや、そう言う話の流れとちゃうし。


「では、フラン嬢。私はシリンズランドの王太子・アリスヴィーラ。隣は私の妹の」


「あぁ、シェンナディアさまですね?存じておりますわ。どのつらをお下げになってこの場にいらっしゃったのかしら?」

は??


私は硬直した。

ナディもヴィーラさまもあの浮気バカ男でさえも硬直している。


「大丈夫ですわ!他の方が何と言おうと私はヴィーラさまの味方ですから!シェンナディアさまが裏で何をしているか。私、よ~く知っているのですから!」

いや、ちょっと。何言ってるの?ナディが何をしてるっていうの?


「何のお話でしょう」

さりげなくヴィーラさまがナディを後ろに庇い威圧感を強めるが、あろうことかマキアはヴィーラさまの体に抱き着こうとする。それを慌てて浮気バカ男が止めに入る。


「やめなさい、マキア!君は一体何をしているんだ!」

浮気バカ男はもはや顔面蒼白である。


「何って、ヴィーラさまと仲良くなろうと。そのためにはこのシェンナディアをどうにかしなくては!」

んなっ、遂には、ナディを呼び捨てにっ!?


「近衛騎士隊!マキアを下がらせて!」

浮気バカ男が叫ぶと即座にリヤム王国の近衛騎士がマキアを取り押さえにかかる。


「やだっ、やめてよ!もっとヴィーラさまとお話をっ!あぁわかった、アンタね!シェンナディア!アンタが魅了魔法で私のソルさまもみんなも操っているのよ!私、知ってるんだから!」

んなっ、何言ってんの!?ナディがそんなことするはずない!


「ハーフエルフってことでバカにされて、魅了の魔法に目覚めたアンタは周囲を操ってヴィーラさまを辱めるつもりだってことはね!」

マキアは胸を張ってそう叫んだ。


―――そして。


「ちょっ、胸触んないでよ!」

と、近衛騎士に怒鳴ると反射的に男の近衛騎士が拘束を緩め、その隙をついてマキアがナディに迫る。


(「ナディっ!!!」)

思わず私も水鏡の前で叫んでしまった。


しかし次の瞬間、マキアの首筋に白刃が突き付けられる。


(「クロウさま!」)

ナディの傍には姿が見えずとも、必ずクロウさまが控えている。

ナディに不用意に近寄ろうとしたことで、クロウさまがナディの前に飛び出しマキアに剣を突き付けたのだ。クロウさまがナディにはとても向けない恐い顔でマキアを睨みつけている。


しかし、彼女の反応は予想外だった。


「クロウ!?クロウじゃないっ!何でここにいるの!?やだ、どうしよう。ヴィーラさまだけじゃなくってクロウにまで会えるなんて!!」


いや、その―――。絶対クロウさまの顔、こめかみがひくひくしてそうな気がする。大激怒してそう。ヴィーラさまの隣だから抑えているだけで。


「クロウ、シェンナディアを下げてくれ」


「はい、殿下」

いつもよりも低い声でクロウさまが頷き、ナディを連れて下がろうとすれば。


「あっ、待って!あなたもシェンナディアに魅了されているのね!」

と、手を伸ばし、リヤム王国とシリンズランドの近衛騎士たちがめちゃくちゃに入り乱れて彼女を取り押さえる。


「い・・・痛い!痛いよぉっ!」

マキアが泣き叫ぶが、特にシリンズランドの近衛騎士たちが容赦ない。

ナディの周りには、当然ながら女性の騎士も多くおり、

大半は女性である。

だから、胸を触られたとか言い訳をしても、

ナディを侮辱し、危害を加えようとした彼女を許すはずがないのだ。


「リヤム王国王太子殿・・・!」


「は、はい。アリスヴィーラ殿」


「この女は我が国の姫を不当に侮辱し、危害を加えようとした!我が国が拘束させてもらう!」


「そ、それだけは勘弁してやってください!彼女は外交の場に慣れていなかっただけなのです!自分が責任をもって謝罪させて祖国に連れ帰りますから!お、お願いします。どうかっ!」

浮気バカ男がふるふると震えながら必死にヴィーラさまに頭を下げている。私を意気揚々と断罪したとは思えない必死さだ。


「くっ!貴殿の顔にめんじて、責任をもって管理しろ!その言葉が嘘だった時は、覚悟してもらいたい!」

そう忌々し気にヴィーラさまが吐き捨てると近衛騎士たちに連れられ、先に避難したナディたちの元へ向かったようだ。


こうしちゃ、いられないっ!


「私、ナディのところに行ってくる!!」

私はシュキさまの答えも聞かずに部屋を飛び出した!



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