サクル皇国皇太子夫妻
※『くじ引きで~』の第4章『エルフの王国編』のネタバレを含みます
※今回の語り手は、再びヒロイン・ルティカちゃんに戻りますっ!やったねっ!!
・・・さて、ナディとクロウさまとご一緒に、
竜帝国域のエルフの王国・エストランディス王国に赴いていた、
シュキさまご一行が、無事、帰国されたのはいいのだけど・・・
「久しぶりだな、ルティカ殿」
「久しぶりね、ルティカちゃん」
そのふたりの男女を見て、私は驚きを隠せなかった。
「カヤハンさま・・・それに、アセナさままで!」
シュキさま、アルダさんと一緒にやってきたのは、
ふたりの男女。
まず、カヤハンさまはフーリン国の従国・サクル皇国皇太子殿下。
本来ならば、“第2シリーズ”の攻略対象だが、
既に既婚だからか、よくわからないが、本編では全く接点がなかった。
黒髪の前髪を真ん中分けにしており、
象牙色の竜角、そして菫色の瞳を持つ、
武術に秀でた、サクル皇国の竜族らしい、ガタイのいい体つきである。
そして、アセナさまは、カヤハンさまの妻で、皇太子妃殿下。
アッシュブラウンのロングヘアーは、ぴっちりと切りそろえられており、
前髪も一列にすっきりと切りそろえられている。
カヤハンさまと同じ象牙色の竜角に、銀色の瞳。
とても妖艶で美しい方だが、これでいて、サクル皇国でも
屈指の武術の腕を誇る、とてもカッコいいお方でもある。
「おふたりが・・・どうして?」
驚いていると、シュキさまがやってきて、
まずは、私にぎゅむ~~~っ!
「あの・・・シュキさま!?おふたりの前ですよ!?」
「帰ったらすぐにルティカに抱き着きたかった」
「えぇ~~~っ」
「ははは、仲がいいようで何よりだ」
「そうねぇ、私たちも安心ね」
と、カヤハンさまとアセナさまは微笑んでくださる。
「はぁ・・・こちらは胃が痛いがな」
「まさか、あんなことが起こるなんて」
あんなこと・・・とは?
私がシュキさまの腕の中で首を傾げていれば・・・
「エストランディスで、ひと騒動あったんだ」
「ええぇぇぇっっ!!?」
な、何があったんだろう・・・
サクル皇国の皇太子殿下夫妻まで、
フーリン国へ赴き・・・エストランディスにお忍びで
伺っていた、シュキさまたちと一緒に帰ってくるなんて。
「先ほど、フーリン国王陛下へ、
ひと通り謝罪を終えてきたんだ。
いま、サクル皇国では、父上や弟妹が大忙しで、
調査、摘発を進めているんだ」
と、カヤハンさま。
一体何が・・・?
シュキさまが語ってくれたことの経緯には、
私は唖然として、口がふさがらなかった・・・
まず、エストランディスでメイリィさまに出会った・・・
と言う話は寝耳に水だったが。
メイリィさまは、確か竜帝国の皇太子殿下の婚約者になったのよね?
まぁ、皇太子殿下や、他の婚約者の方々と
仲睦まじく過ごしていらしたそうで・・・
そこら辺は私もとっても安心した。
今度また、お手紙を出そうかな・・・と、思っている。
だがしかし、エストランディスでサクル皇国民が、
とんでもないことをやらかしたことについては、
私も、同じフーリン国域民として、胃が痛くなりそうだ。
そうか・・・その件で、皇太子殿下夫妻のカヤハンさまとアセナさまが、
フーリン国域の従国が起こした失態で、
フーリン国王である義父さまに謝罪に来たのか・・・
今では、早速フーリン国からも調査団が乗り込んで、
サクル皇国と共に摘発したら竜帝国に即送還らしい。
多分、相当重い罪になるんだろうが・・・
あちらの法律は、ツェイロン王国以外のはよく知らないので、割愛しよう。
「そう言えば・・・ずっとカヤハンさまにお聞きしたいことがあったのです」
「ほう、どうした?ルティカ」
「あの・・・“マキア”と言う名に心当たりはありますか?」
その名前を言った途端、アセナさまと顔を見合わせたカヤハンさま。
そしてふたりはぷっと吹き出した。
「あの・・・」
「実はな、同じような名前の娘から、
私宛に、大量の文が毎日のように届いたのだ」
「とんだストーカーよねぇ?妻帯者・・・しかも、
サクル皇国の皇太子に対して・・・」
カヤハンさまとアセナさまも、苦笑交じりでそう教えれくれた。
あぁ・・・本編に出てきてないだけで・・・
接触ははかっていたわけね・・・
当然、相手にはされないでしょうけど。
「まぁ、曲がりなりにも貴族だったようだし・・・
リヤム王国側に苦情を入れてもさっぱりでな・・・
フーリン国側に相談したら、まさにシリンズランドにて、
指名手配されたと言うことを教えてもらい、
接触してきたら即連絡をくれと、頼まれたんだ」
「その後・・・接触は・・・?」
「特にはなかったな・・・」
「えぇ・・・一度、とてもお元気な猿のようなご令嬢が、
私めがけて飛んできたのですが・・・
そく取り押さえられて、国から放り出されたはずですわ」
猿・・・まさか、それ・・・マキアでは・・・?
まぁ、その後はリヤム王国内での地盤固めに動いたのだろうし・・・
また後で攻略しに来ようとでも思ったのだろうか。
「その後、その娘が無事処刑されたと聞き、
あの奇妙な手紙も来なくなったよ。あぁ、もちろんそれらは、
証拠として、フーリン国王に全て献上してある」
あぁ・・・義父さまや、官吏の方々も、読むの嫌だろうなぁ・・・
「それにして、また今回の騒ぎだ」
「本当に、嫌になってしまうわね」
と、おふたりも困ったように顔を見合わせている。
「だが、シュキさまが竜帝国の皇太子殿下との間を
うまく取り持ってくださったらしい」
「あぁ・・・とても趣味や話が合い、仲良くなったのだ」
へぇ・・・そうなのか・・・
まぁ、国域の宗主国の太子同士が仲良しなのは、良いことだ。
立場は違うものの、シュキさまと魔帝国の魔帝陛下も仲がいい。
「その、メイリィさまの旦那さま・・・竜帝国の皇太子殿下は、
サクル皇国に対しては・・・」
「シュキ殿が、徹底的な調査をすると掛け合ってくださったそうだ」
と、カヤハンさま。
「あぁ・・・後日サクル皇国からの謝罪も入れさせることになった」
「これを機に、交流がうまれるといいわね。祖先は違うし、
あちらの竜族の方が、フーリン族と肩を並べる実力を持つのだけど、
お互いの交易が活発になればいいわね」
と、アセナさま。
そうそう・・・そうすれば・・・納豆や、その他懐かしい食べ物も、
もっと手に入るかも・・・懐かしい食べ物に思いを馳せていれば・・・
「ルティカ・・・私が抱き着いている時に、他のもののことを考えるのは・・・」
と、シュキさまが嫉妬してきた。
いや、何でわかったの!?
でも、納豆くらいいいじゃないですか!!
そんな私たちを、アセナさまもカヤハンさまも、
何だかあたたかい目で見守ってくれたのだった。
「あぁ・・・」




