夏、シュキさまのお忍び
※国名間違えました。訂正済みです<(_ _)>
※誤字修正済みです<(_ _)>
フーリン国の麓は既に夏模様。
ロディア王国は常に常夏だが、
リヤム王国ではもう夏真っ盛りである。
だが、それでも山の上にあるフーリン国は涼しいのだ。
そんなある日のこと・・・
「え・・・エストランディスに行くのですか・・・?」
「あぁ・・・本来は、シリンズランドの王太子・
ヴィーラ殿が招待されていたのだが、
なんでも、エストランディスには、
ヴィーラ殿にちょっかいを出す不躾なものがいるらしく・・・
更には、それを利用して王女のシェンナディア姫を招待したらしい」
「何ですか、それ!ヴィーラさまにもナディにも失礼です!」
「まぁ・・・それでも、国同士のやり取りは伝統らしいからな。
おいそれと断るわけにもいかない・・・
先方は、シェンナディア姫の見た目を利用して隙を伺い、
上手くシリンズランドの魔道具技術を盗みたい・・・
と言うのが思惑だろう」
「え・・・何ですか、それ!」
ナディは、前世で言う“ハーフエルフ”と呼ばれる見た目だ。
伝統的なエルフ族の容姿を重んじるエストランディスに対して、
シリンズランドは、宗主国であるフーリン族に近い見た目を持つ、
ハーフエルフを歓迎する風潮にあるのだ。
だから、伝統的に交流を続けるのは、
世界的にも数の少ないエルフ族と言う種を守るため・・・でもあるのだが、
そこだけは未だに分かり合えず、
そして、ハーフエルフを差別しろ・・・
などと言う要求をシリンズランドにしようものなら、
確実にフーリン国から、エストランディスの宗主国・竜帝国に苦情が行き、
国域同士の争いに発展してしまう可能性だってあるのだ。
フーリン国は、竜帝国域のツェイロン王国と親しい関係にあるものの、
竜帝国と、国域の主同士の交流はない。
あくまでも、ツェイロン王国を介しているのだ。
だから、エルフ族たちが独自に交流しているとはいえ、
滅多なことはできまい。
「あ・・・だから、シュキさまもご一緒するのですか?」
「まぁ・・・それもあるな・・・あと、クロウの友人に、
例の研究結果をもらいに行くことにした」
「例の・・・あぁ!奴隷の首輪が、
聖女・・・または聖者に解除可能かどうかって・・・実験ですね!」
「そうだ。ただ、私がフーリン族と言うことを
あまり公にはできない。
彼らが私をフーリン族であるにも関わらず、
“ハーフエルフ”と蔑視したのなら、
確実に国域同士の争いになる・・・」
「それは、そうですよね」
「だから、お忍びで行くことにした。
クロウも一緒に行く。私はもしもの時の護衛も兼ねて。
だから、シェンナディア姫は大丈夫だ。
もし、シェンナディア姫を蔑視した場合は、
正々堂々とエストランディスの弱みを握ってくる」
「よ・・・弱みって・・・相変わらず容赦ないですが・・・
てか、それは半分クロウさまの企みのような気はしますけど、
私のナディをお願いしますね!」
「・・・ルティカ・・・」
「はい」
「シェンナディア姫がルティカのだとしても、
ルティカは・・・私のだ」
いや、だから、毎回何を張り合っているのだろうか・・・。