予言者(?)、そして明らかになる真実
※『くじ引きで~』に登場するシンシャ殿下のネタバレをほのめかす描写があります
メイリィさま、エイダさまと、
義母さまを交えて楽しくお茶をした後は、
メイリィさまとお互いの国の文化や習慣について盛り上がり、
果ては納豆に何を入れるか・・・まで談義させていただいた。
夕食に出していただいたメイリィさまからのお土産の納豆と、
フーリン国の特産品の漬物を、義父さま、シュキさま、
フェイくん、王太子殿下とみんなでおいしくいただき、
早速部屋に向かおうとしていた頃、不意にシュキさまから呼び止められた。
「ルティカ・・・実は・・・話したいことがある」
「え・・・はい、なんでしょう?」
「・・・うん・・・こちらへ来て」
シュキさまに案内された部屋に向かえば、
そこには王太子殿下がいらっしゃって・・・
「あぁ・・・やっぱりルティカちゃんだ!」
え・・・“ちゃん”・・・?
「あぁ・・・おっと・・・すまないね。
挨拶の場ではさすがにエイダに怒られてしまうから、
我慢していたんだけど・・・やっぱり・・・感動だ!」
はぁ・・・何がでしょう・・・?
「ルティカ・・・こっちきて、座って」
シュキさまに促されるまま、私は一緒に席についた。
「ルティカ・・・シンシャは、知られざる予言者なのだ」
「・・・はぁ・・・予言者?」
「実は・・・ルティカと出会ったあそこも・・・
そこでルティカに出会えると、シンシャから予言をもらったのだ」
「へ・・・?」
そう言えば・・・最初に会った時に、“張ってた”と言っていなかったか?
もしかして・・・この方は・・・本当に・・・?
「それで・・・シュキから聞いたよ・・・
あの・・・マキア・フォン・ハレの件について・・・」
んな・・・っ!?
その件についても、シュキさまが王太子殿下に伝える・・・とは、
この方は一体・・・?
「ぼくは恐らく、ルティカちゃん・・・
あぁ・・・ルティカちゃんって呼んでもいいかな?」
「えぇ・・・もちろんです」
メイリィさまのお兄さまだし・・・
「ありがとう、ぼくもシンシャでいいよ」
「はい、シンシャさま」
「では・・・何でもどーんと聞いてくれたまえっ!」
・・・と、言われましても・・・
本当にいいのだろうか・・・?
「あの・・・では・・・第2シリーズについてご存じですか?」
ダメもとだ・・・ここはダメもとでいってみよう。
「あぁ・・・もちろん。
“断罪”が終わったと聞いて、もしや・・・と思ったのだが」
「第2シリーズのヒロインも、マキアなのでしょうか」
「・・・そうだね・・・彼女は、第1シリーズと
第2シリーズにおいて、共通のヒロインだ」
な・・・何と・・・!
彼は詐欺師・・・?いやいや、王太子殿下に対して不敬か・・・
それとも・・・私と同じ・・・前世の記憶を持っている・・・?
そこまで不躾な質問は・・・あれかな・・・?
「では、攻略対象はどなたでしょう・・・?」
「そうだな・・・それは・・・」
シンシャさまが何やら書き連ねていく。
―――
【第2シリーズ 攻略対象】
ヴィーラ(シリンズランド王太子)
カヤハン(サクル皇国皇太子)
ルダ(魔帝)
クロウ(シリンズランド王女の婚約者)
隠し攻略対象/ラスボス シュキ
―――
何と言うか、ほぼ予想通り・・・
そして、この世界の事情に合わせて()で書いてくださった。
てか・・・サクル皇国の皇太子殿下・・・
カヤハンさまって攻略対象だったんだ・・・
・・・本編にまだ、出てきてすらいないけど。
「・・・因みに、フーリン国やフーリン族と言う設定もあるのでしょうか?」
「いや・・・ないな。シュキは魔族と人族の混血・・・となっていた」
「・・・なるほど・・・現実とはわりとかけ離れていますものね」
「まぁね。我がツェイロン王国も、竜帝国の属国と言う設定など無かったし」
おや・・・?
「まさかとは思いますが・・・シンシャさまも・・・ですか?
因みに攻略対象でしょうか」
「うん、まぁね」
そう言って苦笑される。
てことは・・・やっぱりシンシャさまも・・・
私と同じ・・・
「あの・・・エイダさまは」
「悪役令嬢役かなぁ~、でも、実際の彼女は、
悪いぼくにお尻ぺんぺんをしてくれる、素晴らしい女性なんだ」
いや、どこが素晴らしいのかはわからないけれど、
エイダさまは普通に女子として憧れるお姉さまである。
同じ・・・と言うか、その人知の外にいる気がする。
「うん、シンシャはなんでも、知っている・・・
私が・・・ルティカと結ばれたい・・・
そう、相談した時も、的確なアドバイスをくれた」
それが、私を砂漠で拾ってくれた真相・・・
と言うことは・・・シンシャさまは私にとっても、
命の恩人なわけで・・・
「あの・・・っ!シンシャさまは・・・」
そう、言いかけたその時、部屋の扉がバーンッッ!!と、開いた。
「・・・シンシャ兄さまっ!!」
その扉の向こうに現われたのは、雪の妖精のような王女・メイリィさまで・・・
「もぅっ!またシュキさまと妄言遊びをしていると思ったら・・・
ルティカさままで巻き込むなんて、ダメです!」
と、メイリィさまがシンシャさまに詰め寄る。
・・・妄言遊び・・・?
とてもそうは思えぬ現実味があったのだが・・・
まぁ・・・天然気質なシュキさまは別として、
こんな話を聞いたら・・・誰でも妄言だと思うのかも・・・?
「えぇ・・・っ!メイリィ~、これは、お兄ちゃんの慈善事業・・・」
「そんなものありませんよっ!殿方は殿方だけで楽しんでください!
ほら、ルティカさま、行きましょう!」
メイリィさまに手を差し伸べられ、その手を取る。
「あの・・・!実は、エイダ義姉さまとも話したのですが・・・
ルティカさまと、女子会をしたくて・・・」
「女子会・・・ですか?」
「いかが・・・ですか?」
「えぇ、もちろん!楽しそうです!」
女子会なんて・・・前世以来だなぁ・・・
「ルティカ・・・今晩は・・・」
シュキさまが声を掛けてくれたものの・・・
「シュキさま!今晩は、ルティカさまをお借りしますね!」
と、笑顔で告げたメイリィさまに、シュキさまが机の突っ伏していた。
「あの・・・シュキさまは・・・」
「殿方は殿方で語り合ってくれればいいんですよ!
私たちは私たちで楽しみましょう!」
そう、誘われ、シュキさまに手を振ると、
何故かめっちゃじと見されて、
愛狼を残してひとりでかけるうしろめたさを覚えつつも、
久々の女子会の誘惑には・・・勝てなかったのであった。
まぁ・・・攻略対象が判明したことで、
何だかすっきりしたけれど・・・
ヒロイン・マキアはもう、いない・・・
恐らく、乙女ゲームが再び始まることも・・・
きっとないのだろう・・・
ま、参考までに覚えておこう・・・ってことで。
今日は、おやすみなさぁ~い。