異母兄
※冒頭からグロ表現あり
※処刑シーンあり
※苦手な方はご注意くださいまし
※誤字修正しました<(_ _)>
さて、あのマキアの正体が、まさかの魔族だと言うことが明らかになり、
マキアは処刑された。
そして私の前に連れて来られた“亡骸”を見て、
私は戦慄した。
それは、国王陛下夫妻と、フィオナ王女の亡骸であった。
3人とも、干からびたように皮膚の水分を失っている・・・
「マキアだったもの・・・魔族の転移魔法の代償に、
体中の魔力を水分と共に吸い取られたのだろう・・・
昔から、やつらの扱う魔法は・・・えげつない」
そう、シュキさまが呟く。
“やつら”と言うのは、先ほどの失われた転移魔法を持っていたと言う、
大魔神帝国のことだろうか・・・
無論、魔帝陛下の転移魔法は、このようなえげつないものではなく、
本人のスキルなので、このような代償は存在しない。
だが、大魔神帝国は、このような非人道的な魔法を、
かつて扱っており、現代に復活させたと言うのか・・・
そして・・・
「マキアの姿を騙っていた・・・と言うことは、
本物のマキアは・・・?」
「ルティカには話していなかったが・・・
マキアの生家・・・ハレ男爵家は既に押さえている」
いつの間に・・・
「そこには、男爵夫妻と、女児の亡骸があった・・・
あのマキア・・・魔族は、かなり前から、すり替わっていたのだろう・・・」
「やることがえげつないですよ」
「あぁ・・・だからこそ、魔帝国もあの国は攻めなかった。
自分たちの手中に治めるのも嫌悪しているのだ」
「また・・・ある意味すごい国ですね」
魔帝国すら嫌がると言う・・・
「ま、近年は国力も落ちて、魔力も落ちていると言う・・・
だからこそ、他人を媒介にせねば、魔法も使えなかったのだろう・・・
・・・さて・・・次だ」
シュキさまがそう告げれば、また捕えられた人物たちがやってきた。
私の異母兄・・・だったひと・・・
ロティス・フォン・フラン・・・いや、今は、
ロティス・アシェ・リヤム・・・
リヤム王国の王太子・・・王位をぶんどろうとした、
フーリン国からみれば、国賊でもある。
「さて・・・申し開きはあるか、ロティスとやら」
シュキさまと私の顔をみたロティスは、
愕然とした表情を浮かべ、そしてクツクツと笑いだした。
「そうか・・・そうだったのか・・・ルティカは・・・
貴様に・・・よりにもよって・・・お前に連れ去られていたのか・・・」
「どう言う意味だ」
シュキさまが険しい表情を浮かべる。
「本当は・・・俺が、ルティカを迎えに行くはずだった!」
「は・・・?」
私は思わず聞き返した。
だって、このひとも、ソルと一緒に、
私を国外追放にした張本人。
「追放した上で、俺がお前を娶る計画だったんだ!」
「めと・・・っ、何を言ってるの・・・?」
理解が追い付かない・・・
「俺がこうして、他の王族を廃して、王位を得て、
そして、お前を王妃にしてやる計画だった!」
「やはり・・・お前は・・・今は亡き、元リヤム王国王の妾子か」
シュキさまが問うと、
ロティスは再び、口元を歪ませる。
「・・・そうだよ・・・俺は・・・あのクソ国王と、
クソ女の間に産まれた・・・子どもの頃はよく聞かされていた・・・
王妃になれなかったクソ女は・・・クソ女に懸想していた、
国王の弟の懐に入り込んで、
国王との子・・・俺を産んで、しめしめとその時を待ち望んでいた・・・
だから、俺がそれを利用して・・・ルティカ・・・!
全てはルティカを手に入れるために!
なぁ・・・ルティカ!まだ遅くはない!俺と・・・
俺の妻になれ!お前を・・・王妃にしてやる!!」
「・・・ふざけるな」
そんな、ロティスに怒気をぶつけたのは、シュキさまだった。
「ルティカは、私の妻になる。
元より、ルティカを傷つけ、冤罪を擦り付けて追放した
貴様が言う事ではない」
「んな・・・っ!全ては・・・全てはお前のせいだ!バケモノぉ―――っっ!!!」
「私からしたら、あなたたち母子の方が・・・よっぽどです。
自分たちの身勝手な欲望のために・・・
私も、父も利用して・・・こんなことを仕組んだんですね・・・」
「んな・・・っ!違う!あの女と一緒にするな!
マキアと結婚したのは・・・単なるルティカを手に入れるための口実で・・・
実際に俺が王位についたら、マキアなんて捨てるつもりだった!」
「無理ですね・・・マキアは、ひとの魔力を吸って、
恐ろしい魔法を使う、魔族でした。
あなたなんて、ひとたまりもないですよ」
それを聞いた瞬間、ロティスは「は・・・?」と呆然と私を見つめた。
どうやら、その正体に気が付いていなかったらしい。
「あなたも所詮は利用された身」
「なら、被害者だ!俺を・・・お兄ちゃんを助けてくれ!
ルティカ!な・・・?」
「この期に及んで・・・信じられない・・・っ!
あと、私、もうリヤム王国籍じゃないので、
あなたの妹ではありません!」
「では・・・夫を・・・!」
「私はシュキさまの妻になるんです!」
そう、言えば・・・シュキさまが私の肩を抱き寄せてくれる。
「そうだ・・・ルティカは、私の妻になる。
お前の入る余地はない。ルティカを捨てた、時点でな・・・」
「そん・・・な・・・」
ロティスは絶望に満たされた表情を浮かべる。
「お前だけは、私の手で、処刑してやろう」
そう、シュキさまが言えば、ロティスの背を、
シュキさまの三日月型の金鱗が貫いた・・・
「・・・っ!」
「辛いか・・・ルティカ」
「・・・ごめんなさい・・・あのひとの、不始末まで・・・シュキさまに」
「これは・・・私の、夫になるものとしての・・・けじめだ」
「・・・っ、はい・・・」
私はただ、シュキさまに身を委ね、
まだ純粋に兄として慕っていた頃の記憶に・・・
思い出そうとしてももう、思い出せない記憶に、思いを馳せた。




