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確信、そして近づく裁きの時


「続いては、小娘が依頼した調査の結果だな。

こちらも、重要な情報となる可能性があるため、

今ここで、共有させてもらう」

まずは宰相閣下が仕切りなおす。


私が依頼したのは、

ロディア王国の王太子・フィル殿下、

そしてリヤム王国の第2王子・ロッタ殿下の安否の確認だ。


「まず、ロディア王国の王太子に関してだが、

彼は現在、ロディア王国城にいることが確認され、

また、その身も無事なようだ。

ただ、リヤム王国側から、食料の提供と引き換えに、

王太子を寄越せと脅されたらしい」

はぁ・・・?な・・・何、それ・・・

確かに、ロディア王国はリヤム王国に比べて、

豊かな国ではない・・・


食料や水は、他国からの提供で生計を立てている。

その代わり、資源が豊富なため、

その資源を他国が提供してもらうのだ。

その昔、ロディア王国の南のカイエ魔王国と対立した背景には、

そう言った豊かな資源の奪取が含まれていたのだ。


けれど、今はフーリン国と魔帝国の友好関係のおかげで、

近年は大人しくしているが・・・


「現在は何とか、シリンズランドと

サウザンランドからの支援でつないでいる。

リヤム王国側へ入れない以上、彼らとシリンズランドの使者が、

東海岸経由で我が国へ向かっているらしい。

ウチの密使と行き違いになったらしいが・・・

恐らく数日中にはつくだろうし・・・

我々としてもサクル皇国経由で支援を頼んでいる」

そんなおおごとになっていただなんて・・・


「そして、肝心のリヤム王国内について・・・だが・・・」

ロッタ殿下は・・・ご無事なんだろうか・・・


「リヤム王国第2王子は、現在行方不明だ」


「え・・・そんな・・・」


「王城内を探索したが、彼の行方はしれなかった」

ロッタ殿下は・・・一体、どこに・・・っ!


「さらに、密偵が調べたところ、国王夫妻は寝室で眠っており、

目を覚ます気配がないと言う・・・病気の可能性も考えられたが、

彼らの寝室の周りには、騎士のひとりもいなかったとか」


「そんな・・・っ」

まさか、おふたりまで・・・?

それに、王妃さまは、病床の国王陛下を付きっ切りで看病しているのでは・・・?

いや・・・王妃さまが抱える闇のことを考えれば、

それはあまり現実的ではないとは思ったけど・・・


「さらには・・・王女だ」


「フィオナ王女殿下・・・ですか?」


「王女は淡い金色の髪に、青い瞳のはずだが・・・」

そう・・・ソルとそっくりな王妃さま似なのよね。


「淡い金色の髪に、桜色の瞳だったそうだ・・・」


「それって、まさか・・・」

私は、ハッとしてシュキさまを見やる。


「・・・あの女の瞳の色だな・・・

髪は染めているのか・・・ウィッグか・・・」

シュキさまの表情が曇る。


「いずれにせよ・・・リヤム王国は我がフーリン国に対し、

虚偽の親書と報告をし、ソラノシア連合王国への不当な要求、

ロディア王国への勝手な脅迫行為・・・

また、他の属国、そして他国域からも被害の報告が相次いでいる・・・」

シリンズランドも散々な目に遭わされたし、

サウザンランドだって、

国賓として招いた魔帝陛下に無礼な行いをされたのだ。

そのことが原因となって、

魔帝国とフーリン国域との友好関係にひびが入れば、

サウザンランドにとって、カイエ魔王国がなによりの脅威となりえる。

魔帝陛下もそのことで不快感を示していた。


もしかしたら、サクル皇国でもやらかしているかもしれない・・・

そう思うと・・・気が重い・・・


「マキア・フォン・フランは、シリンズランドより指名手配されている。

そしてその指名手配犯が、リヤム王国に、王女として紛れ込んでいる可能性がある。

我が国を含め、フーリン国域全体が大きな被害、中傷を受けていることからも、

マキア・フォン・フランを、フーリン国域内の最重要指名手配犯とする」

義父さまが凛として告げる。

つまりは、フーリン国域で見つかったらアウト。

無論、魔帝国域でも魔帝陛下の不興を買った以上は寄りつけまい。


「大罪人・マキア・フォン・フランを捕え、

更には我が宗主国をたばかったリヤム王国宰相一家と、

王族全てを捕え、罪が明らかになった時点で、即刻処刑とする」


「・・・」

その、言葉に私は息を呑んだ。


「ルティカ・・・現在こちらで捕えているソルは、

リヤム王国宰相が我が国を騙して王族から廃嫡した・・・

つまりは、その廃嫡に対する我が国の答えもその時点でなかったことになる。

そのため、彼は未だまだリヤム王国の第1王子。

彼もまた、処刑する」


「・・・はい」

私に、庇い立てする義理はどこにも残っていなかった。


「国王陛下夫妻は、被害者の可能性もあるが、

あのような第1王子を野放しにした以上、その責任はとってもらう」


「わかりました」

そして、第1王女の愚行も見てみぬふりをした・・・


「宰相である大公夫妻はもちろん、

真実がどうであれ、ロティス・アシェ・リヤムも、

全てをつまびらかにしたうえで、処刑する」


「・・・」


「何か、迷いがあるのか」


「・・・ロティスは・・・昔は優しかったんです・・・

けれど・・・継母の影響で、ロティスは変わってしまった・・・」

私を顧みず、母を愛してくれなかった、私を迷うことなく捨てた父に、

最早、父娘おやこの縁も、情もない・・・


継母も同じだ・・・


「情状酌量を求めるか」


「・・・いいえ・・・もし、私にその権利があるのなら・・・

どうか・・・ロッタ殿下だけは・・・助けていただけませんか」


「理由を聞こうか」


「ロッタ殿下は多くの国民の心を掴んできました。

国民のために率先して魔物討伐に加わり、武勲を上げています。

同罪として処刑すれば、国民の反感も必至かと存じます」

そのことは私も聞き及んでいるし、

そのために、学園を休むこともざるにあった。

学園でマキアとイチャイチャしていた浮気男とは比べ物にならない。

ゲームの設定の中ではなかった、彼の真実。


「・・・確かに・・・今回の話を総合すれば・・・

そこだけが腑に落ちないのも事実だ。

彼については、私も思うところがある・・・

今回の裁きでは、彼については、

処刑すべき彼個人の罪がない限りは、罰則も、処刑もない。

彼に関しては、保護を最優先とする」


「ありがとうございます・・・!」


「いや・・・確かに、ルティカの言葉は私も信じているし、

実際に、彼のことは私も期待している」

義父さまが・・・期待を・・・


「最後に、リヤム王国内で、一番近い場所で彼を見てきた、

君の考えが知りたかった。試すような真似をしてすまないな」


「いえ・・・っ!お心遣いありがとうございます!」


「だが、まだ油断するな。彼の行方も、その罪についても、

まだ・・・無罪と決まったわけではない」


「はい・・・」

確かに・・・そうなのだ。


「だが、最善を尽くそう」


「はい・・・!」


「ルティカ・・・ルティカは、

あの女に命を狙われたこともある・・・今回は、城で待っていてくれ」

シュキさまが、静かに私に語り掛ける。


「シュキさま・・・いえ・・・私も、行きます」


「ルティカ・・・?」


「足手まといになるかもしれませんが・・・」

前世の記憶がある私にも・・・例え知らない第2シリーズに移行していても、

それでも・・・何かできることがあるかもしれない・・・


「小娘がちょろちょろ動いていたら、邪魔になる」

その時、アルオさんから厳しいひとことが飛ぶ。


「アルオ、私の傍にいれば・・・安全だ」


「ふん・・・我々の戦力からリヤム王国の戦力を引いても、

五万とおつりは来る。その小娘の足手まとい分を指し引いてもな」

え・・・

アルオさん・・・それって・・・


「確かに・・・現地に詳しい君は、我々の助けにもなる」


「義父さま・・・」


「ただ、シュキの側を離れないようにしなさい」


「・・・わかりました!」

義父さまの言葉に答えると、

私はシュキさまと顔を合わせ、

お互いの決意を確かめるように頷きあった。



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