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リヤム王国からの知らせ、そして疑惑

※文字数多くなりました<(_ _)>※



フーリン国国王陛下である義父さまからの

問い合わせについて、リヤム王国からの親書と、

私がお願いした調査の結果が届いたのは、3日後のことだった。


どうやら、馬車で片道5日かかる距離を、

フーリン族の精鋭騎士たちを使者として派遣し、

最速で返答をもらい、調査を終えてきたらしい。


私はシュキさまと一緒に、

フーリン国国王陛下である義父さまに呼ばれた。

その場には、アルオさんとレツィアの父君だと言う、

宰相閣下もいらっしゃる。

見た目は、本当にアルオさんとそっくりだ。

シュキさまの側近として、アルオさんも控えているけれど、

違いと言えば、宰相閣下は耳がとがっていて、

若干アルオさんよりも大人しそうな印象なところか・・・


「小娘、なにか失礼なことを考えなかったか」


ぎくっ


「言いがかりです、アルオさん」

にこにこしながら答えれば、

またアルオさんからぎろりと睨まれる。


「アルオ、め」

と、そこで主君のシュキさまからお叱りが飛んだ。


「ルティカと見つめ合うのは、私の権利」(キラッ)

いや、注目すべき点がちょっとずれてるー。


「これはただの監視だ。見つめ合いではない」

監視って、オイ!!


「なるほど・・・ならば問題はないな」

騙されないで―――っ!!!

本当に・・・仕事も武術も、

部下の騎士さんたちをまとめ上げるカリスマ性もパーフェクトなのに・・・

な・・・何故か・・・シュキさまが天然すぎる・・・!


「・・・ケモ耳しっぽ萌え・・・」

しかも・・・義父さままで謎発言を・・・っ!


「集中!!」

と、そこでまさかの宰相閣下の厳しい怒号が飛んだ。


「父子揃ってよそ見すんじゃねぇっ!今から報告を始める!

貴様ら!まさかたるんでるんじゃないだろうな!」

ひえええぇぇぇっっ!!!

やべぇ・・・このひと、やっぱりアルオさんのお父さんで間違いない。

口の悪さは遺伝だったか。


「では、冗談はこのくらいにして、始めようか」

と、義父さま。

いや・・・どこら辺から冗談だったんだろう・・・

宰相閣下の口の悪さは・・・多分本気だったと思うけども。


「ではウェル、頼む」

宰相閣下のお名前は、“ウェル”さまと言うのか。


「まずは、こちらから届けた親書の回答についてだ」

と、宰相閣下が話し始める。


「こちらから、わざわざ親書を携えていったわけだが・・・

結論から言えば、リヤム王国国王は、表に出てこなかった」

え・・・そんな・・・リヤム王国国王陛下が・・・?


「リヤム王国宰相曰く、もともと病がちで、

ここ数日で急激に悪化したらしい。

我が国に元王太子の処遇に関して、親書を届けた時点については、

かろうじて起き上がれたと言うが、今は全く起き上がれない状況だとか」

そんな都合のいい話って・・・ある・・・?

そもそも国王陛下は・・・


「ではせめて、見舞いをと使者が申したものの、

何がきっかけで病状が悪化するかどうかわからないため、面会謝絶だそうだ・・・

また、返答についてだが・・・こちらはあちらの宰相が代理で寄越してきたものだな」

と、宰相閣下が実物を私たちの前に出す。


「元王太子の処罰に関しては、

全面的に我が国にゆだねるとの回答だ。

そして、こちらへの招集については、

新たな立太子候補となるロティス・アシェ・リヤムが、

正式に謝罪に伺いたい・・・とのことだった」

その言葉を聞いて、私は思わず立ち上がった・・・


そして、宰相閣下と、その親書を交互に見る。


「まぁ、待て。順を追って話していこう」

宰相閣下の言葉に、私は再び椅子に腰かける。


「本来は・・・シュキさまの婚約者とはいえ、

しがない小娘が、この親書を見るなど考えられないのだが」

うぅ・・・確かにその通りだけど・・・

相変わらず口の悪さはアルオさんの父子おやこそっくりだ。


「まず、リヤム王国国王についてだ。

我々は、リヤム王国国王が長年病を患っていたなどとは

全く把握していない。そこで、小娘」


「は・・・はい」

相変わらず、私の呼称が“小娘”なんだけど・・・。


「小娘は、この件について、何か心当たりがあるか。

あと、国を追放される前に、最後に国王に会ったのはいつだ」


「えぇと・・・まず、国王陛下とお会いした時に、

国王陛下は昔から、風邪ひとつひかない丈夫さだけが取り柄なのだと、

私に自慢していらっしゃいました」


「そこからして・・・リヤムの宰相の話は、既に破綻しているな」

と、宰相閣下。


「あと、私が最後に国王陛下に会ったのは・・・

1か月前・・・くらいですかね?

浮気男の公務の手伝い・・・と言うか、ほぼ私がやっていたのですが、

その仕事帰りに、声をかけてくださって・・・

とても元気そうでしたね。でも・・・」


「何か、気になることがあるのか」


「私が断罪された学園の創立記念パーティーの際、

国王陛下夫妻が来られる予定だったのですが、

急遽キャンセルになったのです。

事情を確認しようにも、その頃浮気男は既に、

マキアにべったりでしたし、

第2王子のロッタ殿下は会場にはいらっしゃらなくて」


「そうか・・・それは気になるな・・・」

と、宰相閣下。


「あまりにも、タイミングが良すぎる」

義父さまも同意のようだ。


「では、次に、この親書の文字、

そして、先日送られてきたこの、

リヤム王国国王が書いたとされる親書の文字を見て欲しい」


「・・・」

宰相陛下が出してきた親書に、私の目が点になった。


「同じ・・・筆跡では?」


「そうだ。これは・・・リヤム王国宰相の筆跡で間違いないか」


「・・・えぇ・・・間違い、ないかと」

長らく口もきいていない産みの父親だが、

公務に携わっていた以上、その筆跡くらいは記憶している。


「でも・・・何故・・・最初の親書に・・・

国王陛下しか使うことを許されない、御璽が押してあるのですか?」

無論、国王陛下が起き上がれない・・・と言うことで、

リヤム王国の宰相が書いて寄越した親書には、その御璽がないのである。


代わりにリヤム王国の宰相の署名がしてある。


「つまり・・・これは、偽造された親書だと言うことだ・・・」

なんて・・・こと・・・

もう、戸籍がリヤム王国にない以上、

リヤム王国の宰相・・・いや、大公とは既に赤の他人である。

だけど・・・親書の偽造までやるなんて・・・信じられない・・・


「さらに・・・小娘も相当面食らっただろう・・・

新たな王太子候補についてだ・・・」


「ロティス・アシェ・リヤム・・・ですね」


「あぁ・・・彼は、リヤム王国の宰相の長男だ」


「はい、間違いなく」

彼は、“ロティス・フォン・フラン”。

本来なら、王家の姓を名乗るなんて考えられないのだ。


「そのいきさつを聞いたところ・・・

ロティス・アシェ・リヤムは、第1王女・フィオナと婚姻し、

王家に婿入りした。そして、廃嫡された元王太子の代わりとして、

新たに第1王子とし、王太子の位を継がせたいらしい・・・

この件については、病床のリヤム王国国王に付きっ切りで

付き添っている王妃も賛成しているそうだ」


そんなバカな話があろうか・・・


「この件について、小娘の見解を聞きたい」


「・・・はい。まず、ロティスの件ですが・・・

ロティスが婿入りするにしても、不自然です。

リヤム王国には、れっきとした王位継承権第2位であった、

ロッタ殿下がいらっしゃいます。

もし、次の王太子候補を出すとすれば、

ロッタ殿下であるはずです。

そして、フィオナ王女はロッタ殿下よりもひとつ年下・・・

王女の婿が王太子になるとしても・・・

普通は年上のロッタ殿下の王位継承位が上になるでしょうし、

国内では、何故ロッタ殿下が王太子ではないのか・・・と、

裏で囁かれるくらい・・・ロッタ殿下は優秀な方です。

例え大公子息と言えども、ロッタ殿下を差し置いて、

王太子になるなんて、不自然にもほどがあります」


「確かに・・・第2王子には会ったことはあるが・・・

彼はとても素晴らしい少年・・・だったな」

と、義父さま。

本当に・・・何故あの兄に、この弟・・・

と思われるくらい天地の差があった。


「それに、王妃さまの件だって、おかしいですよ」


「ふむ・・・それは・・・?」

宰相閣下が改めて私を見やる。


「・・・その、あまり大きな声では言えないのですが・・・

ここ、だけの話です」


「もとより、そのつもりで呼んである。

ここでした話は、我々以外には他言厳禁だ」


「は・・・はい」

それならば・・・


それに、この方たちは、信頼できるひとたちだ。

そう、思う。


「王妃さまは、私には優しかったんです。

大公の娘だからと、本当にかわいがってもらって・・・

だけど、同じ大公の息子である、ロティスを毛嫌いしていました。

本当に・・・憎悪を隠せないくらいに・・・

同じ大公の子であったにも関わらず・・・です」


「確かに、妙だな」


「さらに、多分・・・ですけど・・・

王妃さまと、国王陛下は・・・っ」

思わず、膝の上で両手の拳をぎゅっと握りしめれば、

シュキさまが、私の腰に腕を伸ばし、

そっと抱き寄せてくれる。


「大丈夫だ、ルティカ」

仏頂面に優し気な微笑みを浮かべて、

シュキさまが夕陽のような温かな双眸で見つめてくれる。


「・・・おふたりは・・・おふたりの間には、

決して触れてはならない・・・確執のようなものを・・・感じました・・・

王妃さまが・・・国王陛下を・・・ひどく、

怨んでいるような・・・憎んでいるような・・・目を、

向けているのを・・・一度だけ、見てしまったんです。

“あの事が許されたと思わないで”・・・と、

王妃さまがそう囁いたのが・・・聞こえてしまったんです・・・」

言えなかった・・・そんなこと・・・


大公と、私は似ていない。

私は母親似だから。


たいしてロティスは、大公にそっくりだ。

本当に大公の隠し子だと誰もが認めるくらいには・・・


そして、同じ大公の子でありながら、

王妃さまがロティスだけを毛嫌いする理由・・・


大公と、国王陛下はそっくりだった・・・

では、“あの事”とは・・・


王妃さまが、国王陛下とロティスに向ける憎悪の表情が、

同じであることに気が付いた。


もしかして・・・そう思った・・・


王妃さまが、見た目が国王陛下似で、

優秀なロッタ殿下ではなく、

あくまでも・・・王妃さまによく似た、

ソルを王太子にと持ち上げた理由・・・


私はふと、恐ろしい仮説にぶつかってしまったのだ・・・




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