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ふにふに、ふわもふ、時々嫉妬


「ついに・・・ついに・・・できた!」


「ルティカ、それは?」

レツィアが私の手元を覗いてくる。

じゃじゃ~んとそれを掲げれば・・・


「そ・・・それは・・・っ!」

ふふふ~、レツィアも驚愕している・・・!


王太子妃教育はほぼリヤム王国で終えたとはいえ・・・

フーリン国にはフーリン国の王太子妃教育がある。

だからシュアン義母さまに、

足りないところを追加で習いつつ、

そして同時進行でこちらもせっせとチクチク頑張っていたのだ!


「シャーラ風・・・わふたんぬいぐるみ!」


そう・・・それは、ソラノシア連合王国の

狼家ランカの養女となったことで、

義理の姉妹となった、私のかわいいシャーラと同じ

黒い毛並みのわふたん(※狼)ぬいぐるみ!


「すごい・・・ふわふわわふたん・・・!」

レツィアもそのもふり具合にメロメロらしく、

わふたんぬいぐるみの頭をなでなでしてくれる。


「でも、どうして急に・・・?」


「それは・・・シュキさまが・・・!」


「・・・シュキが・・・?」


「ことあるごとに、フェイくんのお耳ふにふに、

しっぽふわもふしてるのが・・・羨ましい!!」


「確かに・・・あのふわもふは・・・誰もが憧れる」

レツィアも頷く。


「・・・ルティカ義姉さま」


びくっ


抑揚のない、静かな声が響く。

そのぬしは紛れもなく・・・


「フェイくん!?」


「義姉さま・・・俺を、ふにふにふわもふしたかった・・・の?」

こてんと首を傾げるさまが、とてもかわいらしい。

表情筋がたいして動かず仏頂面なところも何だか癖になるっ!


「いいよ・・・義姉さまなら・・・」


「いや・・・でも・・・!そのふわもふは・・・シュキさまの・・・だから!」


「・・・義姉さま・・・」


「私は・・・私のふわもふ・・・シャーラをふにふにふわもふしたい!

でも・・・今は遠く離れた故国(※ソラノシア連合王国)にいるから・・・

シャーラ風ぬいぐるみで・・・我慢するわ・・・!」


「義姉さまの、覚悟は・・・わかった」


「・・・うん!」


「・・・でも、もう一匹・・・ほしい・・・」


くぅ~んっっ


がはぁっ!!!


このフェイくんのくぅ~んにかなうはずもなく・・・


「わかった!もう一匹、つくってあげるね!色は何色がいい?」


「・・・ん、ダークブラウンで」


「わかったわ!楽しみにしててね!」


「・・・ん」

そう言って、頬を赤らめながら部屋を後にするフェイくんを見送る。


「さて・・・時間もあるし、もう一匹作るかぁ~!」


こうして、レツィアと楽しくおしゃべりしながら

もう一匹こしらえた私は、フェイくんに無事、

ダークブラウンのわふたんぬいぐるみをあげることができた。


その晩・・・


「と言うことで、えへへ、シャーラそっくりでしょ?シュキさま」

ベッドの上で、シュキさまにシャーラ風わふたんぬいぐるみを自慢してみたのだが・・・


「・・・」


あれ・・・?仏頂面だけど・・・何だか不満そう・・・?

何故・・・?

フェイくんを溺愛している以上、

わふたん系は好きだと思ったのだけど・・・


「それは・・・シャーラ姫なのか」


「はい。むしろもう、シャーラの化身と呼んでもいいですよ」


「・・・」


しゅぱんっ!


「・・・あ」


何故かシャーラわふたんをシュキさまに没収されてしまった・・・


「シャーラ~~~っっ!!!」

私が絶叫したのは、言うまでもない。


「ど・・・どうして・・・どうしてなんですかぁ・・・シュキさま・・・

シャーラのふにふにふわもふを・・・私だって・・・私だって・・・!」


「・・・ルティカ・・・ルティカも・・・

わふたんの魅力をわかってくれて、嬉しい」


「シュキさま・・・」


「だけど・・・俺以外を抱っこするなんて・・・耐えられない・・・」

いや、シュキさまを抱っこなんてできないけども。

ぶっちゃけ逆では・・・?

と思いつつも、つまりは・・・


「シャーラわふたんに嫉妬されて・・・」


「・・・ルティカ・・・」


「その・・・っ!寝る時は・・・抱っこしないので・・・

せ、せめて・・・枕元に・・・っ!」


「うぐ・・・っ」

シュキさまも苦悩しているみたいだ。

ぬいぐるみ相手に嫉妬心を燃やしても、

相手はわふたん。あくまでもわふたんなのである。

そこにわふたんがいるならば、

シュキさまも嬉しいに他ならない。

シュキさまだって、わふたんを眺めながら癒されたいに、決まっている。


「・・・兄さま」


「びく――――――っっ!!?」

いつの間にか・・・いつの間にかシュキさまの背後にフェイくんが・・・!?

それに、胸元にはダークブラウンのわふたんぬいぐるみを抱いている。


「・・・フェイ」

シュキさまは静かにフェイくんを見やる。


「兄さまに・・・こちらを」

フェイくんが、そっとダークブラウンのわふたんぬいぐるみを差し出すと、

シュキさまは仏頂面のまま、驚きつつも、それを受け取る。


「これは・・・」


「ルティカ義姉さまに・・・作ってもらった・・・

ルティカ義姉さまの覚悟は受け取った・・・

だから、俺も、覚悟を決めた」

え・・・何の覚悟・・・?

何か、微妙に私とかみ合っていない気がするのだが・・・


「これを・・・俺だと思って・・・かわいがって」

んなぁ・・・っ!?

それって、まさかの・・・

自分の化身のぬいぐるみを兄であるシュキさまにあげることで、

ブラコンの更なる高みへの覚悟を決めたってこと・・・!?


「・・・フェイ」


「・・・シャーラ姫は、ルティカ義姉さまの・・・姉妹・・・

だから、俺たちも、お揃いです」


「・・・そうか・・・私は、勘違いをしていた」

シュキさまは、フェイくんぬいぐるみを受け取って、

私の方へ向き直る。


「・・・シュキさま?」


「うん・・・私も、ブラコンを極めると誓った身だ」

そうだったんですか?初耳です。


「ルティカも、同じくシスコンを極めると誓った身だったのだな」

それは私は初耳なんだけど。

シャーラのためなら極めてもいいけど。


「同じ志を持つ者同士・・・わかり合わなければならない」

まぁ・・・わかり合うのは大切だけど。


「・・・だけど・・・ベッドの上では・・・

ルティカを抱きしめるのは、私の権利だ」

えぇと・・・まぁ、婚約者だし・・・?


「だから、お互い・・・わふたんぬいぐるみは・・・」


「は・・・はい・・・」

ドキドキ・・・

不思議っ子系のシュキさまだからこそ、その後の展開が、

よ、予測ができない・・・


「枕元に置いておくことにしないか」


「・・・そ、そうですね」

割と普通の解決策だった・・・


まぁ・・・そう言うことで。


無事、わふたんぬいぐるみを枕元に置き、

今日も今日とて、私はシュキさまにぎゅむーされて、

眠りにつくのであった。


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