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着いて早速の、晩餐会




シュキさまの婚約者として認められるか、

どきどきしながらのフーリン国の国王陛下との対面。


しかしながら、何故だか“娘”に“父さま”と呼んでもらいたがる、

シュキさまそっくりなノリの陛下により、

私は陛下を父さまと呼び、

そして、私の義父であり、今の戸籍上の父である狼家ランカの長で、

当代首長のニカ父さまにあらかじめサインをいただいていた書類に、

私とシュキさまがサインし、

国王陛下の父さまもサインしたことで、婚約がめでたく成立した。


随分とあっさりな・・・


娘に“父さま”って呼ばれたいくらいで、

あっさり承認していいのだろうか・・・?


「あの・・・私で・・・本当によろしいのでしょうか・・・」

つい、父さまに聞いてしまったのだ。

失礼に当たったらどうしようとも思いつつ・・・


「・・・以前、夜会で顔を合わせたな」

フーリン国での夜会だ。

そして、リヤム王国での式典に来てくださったこともある。


「はい、ご挨拶させていただきました」


「その時に・・・」

何か・・・特別なことをした記憶はないのだけど・・・


「娘ができたらいいなって・・・思った」

ぱああぁぁっっ。

父さまの背後に、お花畑が見えた。


・・・やはり、どこまでも不思議ちゃん父子おやこである。


「・・・ルティカ」

父さまが、私の名前を呼んでくれた。


「はい、父さま」


「父さま・・・は、嫌?」

え・・・


「い・・・いいえっ!そんなことないです!」


「・・・なら、よかった」

ほっと一息ついた父さま。

その時、部屋の外から

厳しく咎めるような声が聞こえた。


何でも“宰相さま”に呼ばれたらしく、

ひとまず部屋を後にした。


それにしても・・・


「父さま相手でも、容赦のない宰相さまなのですね」


「うん・・・アルオの・・・父親」


うがっ!!なるほどっ!!あっちもあっちで父子おやこらしい!!


―――


その日の夜は、晩餐会に招待されることとなった。

私は、正装用の着物を、侍女たちに着せてもらった。

色合いは先ほどと同じだが・・・

私の知っている着物と比べると、

あわせ部分には寒さ対策に、フリルえりが付いており、

帯の太さも違って・・・だて締め用のものに似ているし、

着物程しっかり固定する感じではないのだとわかった。

更には、裾は長く、少し床を引きずる感じで、

スカートのように裾が広がっているデザインだ。

広がった裾の隙間からは、レースやフリルのついた、

かわいらしい布地が覗いている。

尤も、リヤム王国とは違い、フーリン国は、

室内でも土足厳禁なので、

このまま歩いても、土などで汚れたりはしない。


無論、大がかりな夜会などが行われる場所や、

外での食事処、お店などは土足である。


晩餐会会場は、畳のお部屋で、

それぞれお膳が用意されている。

シュキさまとフェイくんとやってきた私は、

シュキさまを挟んで、

それぞれフェイくんと一緒に、

その左右の席につく。


やがて、正面のお膳の前に、

父さまと、そして王妃さまがやってきた。


フーリン国の当代王妃さまは、獣人族である。

フェイくんと同じダークブラウンの髪は腰まであり、

琥珀色の瞳は優し気な面差しを映し、

褐色の肌に、ちょっとうらやましいメリハリボディ。

私と同じような、襟元や裾からフリルが覗いた、

ライラック色の着物に、赤紫色の羽織を纏っている。


そして、もちろん狼耳しっぽである。


王妃さまは、ソラノシア連合王国ではなく、

フーリン国の南のリヤム王国よりも更に南に行った、

ロディア王国の出身で、ロディア王国当代国王陛下の妹君だ。


席に着いたおふたり。

そして、まず、父さまが王妃さまに、

私を紹介してくれた。


「ルティカ・・・彼女が、私の世界一かわいい妻のシュアン」

言ってることも父子おやこで一緒――――っっ!!!


「よろしくね、ルティカちゃん。どうぞ、“母さま”と呼んでね」


「は、はい・・・母さま」

まだ、婚約者の段階なのだが・・・

何故だか不思議と受け入れられているようで、恐縮である。


「あと、割と口癖みたいになっているセリフは、

適当に流して大丈夫だからね」

え・・・そ、それは・・・

シュキさま父子おやことわかり合うための・・・

アドバイス・・・ですか!?


「はい、とても参考になります」

と、微笑めば・・・


「うん・・・仲良し母娘も・・・いいね」

と、父さま。

あの・・・盛大に母さまが、父さまのことディスったんだけど・・・

やっぱりノリが独特だ・・・っ!この父子おやこ


「ルティカちゃんは、嫌いなものとか・・・なぁい?」

と、母さま。


「いえ・・・特には。フーリン国のお料理も、

今までおいしくいただいておりました」

フーリン国のお料理は、何故だか和食に似ているのだ。

懐かしいこの味・・・そして・・・お味噌汁のすばらしさ・・・!


「これで納豆があれば、最高です・・・」


「なっとう・・・?」

は・・・っ!母さまが首を傾げている!!

しまった・・・つい、ぽろりと本音が出てしまった・・・

うぅ・・・納豆・・・

フーリン国にならあると思って・・・

ついつい、訪国するたびに、

秘密裏に探したのに・・・見つからなかった納豆・・・


「納豆か・・・」

と、不意にシュキさまが呟く。


「シュキさま、納豆をご存じなのですか?」


「以前・・・ツェイロン王国で食べたな」

ツェイロン王国・・・?

聞きなれないけれど・・・何か聞いたことのある・・・


「あ・・・っ!フーリン国のお山の向こうにある・・・!」


「あぁ・・・友人がいるから・・・以前お邪魔した時に、

友人にご馳走してもらった・・・

多分、庶民向けに輸入していたはずだ・・・取り寄せよう」


「い・・・いいのですか!?」


「うん、もちろん。一緒に・・・オクラと・・・

オリーブオイルとメイカツオブシのだしと甘口醤油をかけて

まぜまぜして食べよう」

何!?その本格派納豆通みたいな食べ方!!

いや・・・私もオリーブオイルとだしを混ぜるのは・・・好きだけど。


「はい、是非」

ひとまず、納豆を楽しみに待つとしようか。



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