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過去夢、そして全てが遅すぎた



ぼんやりとした記憶。これは私が子どもの頃から度々見る、私じゃないもうひとりの私の記憶。その記憶の中で私は“地球”と言う星に住んでいた。そして育ったのは“日本”と言う国。


誰もがおとぎ話だとか、また私が妄想しているとか言い出し、そして嘲笑されてからはその記憶のことを他人に話したことはない。


そして今日は、どんな記憶を見られるのだろう?


もうひとりの私は部屋でゲームをしていた。そしてゲームのパッケージ、パンフレット。


―剣と魔法の世界のリヤム王国で平民として育ったマキアはある日、ハレ男爵家の血を引く令嬢だと言うことが明らかになる。更にマキアは聖女としての魔法の素質を持っていたことからリヤム王立学園に編入し、4人の男性との恋を育むゲーム―


―――は?


何だこれ。


しかも攻略キャラクターは、


その1:孤高の第1王子・ソル・アシェ・リヤム。


いや誰だよ孤高って。カッコつけてんじゃねぇよ浮気者。


その2:冷静沈着な学園一の秀才・大公子息・ロティス・フォン・フラン


私の兄だが、後妻の子。何故妹の私が前妻の娘だったかと言えば、私の母と政略結婚だった父はあろうことか私が産まれる前に愛人だった後妻との間に男児をもうけていた。


私の母が男児をもうけず若くして他界したため、父は跡取りを招くために浮気相手の愛人とその間にできた男児・異母兄を迎え正式な跡取りと決めたのだ。あと、私の方が成績上だったし。


その3:亡国ロディアの王族・フィル・ロディア


いや、滅んでないし。ロディア王国。


その4:天真爛漫な第2王子・ロッタ・アシェ・リヤム


因みに、あの浮気バカ男とは双子。そして似ていない。

二卵性双生児ってやつ。


そしてヒロイン・マキアに立ちはだかる悪役令嬢がまさかの公爵令嬢ではなく、大公令嬢のルティカ・フォン・フラン。


あぁ、そう言う事だったか。ここは“前世”にプレイしていた乙女ゲームの世界。そして今、それが通常通り繰り広げられて終わったということだ。


―――何故このタイミングで思い出したぁ~~~っ!!!


しかも、しかもっ!!!


―――


「世界最強種族とか宗主国って設定、何処にも書いてなかったぁ~~~~っ!!!」


と、目をカッと見開くと。案の定、ほど私をひょいっと馬車につぎ込んだその宗主国の世界最強種族のシュティキエラ王太子殿下が、私を腕の中で抱きながら無機質な表情でそっと首を傾げていた。


―――そして前話の冒頭に戻るわけだ。


彼の名前はシュティキエラ・カムイ・フーリンさま。

通称:シュキさま。


我が祖国・リヤム王国の宗主国であらせられるフーリン国の王太子殿下である。そして彼は世界最強種族である。無論人族ではない。


彼らは体の表面のどこかに“金鱗きんりん”と言う鱗を持つ種族。先ほど彼が添えるようにして持っていた双剣と背中から見えた三日月型のやいばの形のそれが、金鱗。それは竜族の鱗とも関連がるのだとかないのだとか言われている。その名をフーリン族と言う。


「あの、私たちはどこへ向かっているのでしょう」


「君がリヤムへ寄れないと言うから、シリンズランドに寄ろうと思う」

私を強引に連れていこう、婚約しようとか言ってきたシュキさまにはこれまでの経緯を簡単に説明してある。シリンズランドはリヤム王国の南西に位置し、ロディア王国の西にあるエルフ族の国である。


「いや、そもそも私がいなければシュキさまは宗主国の王太子殿下なんですから、わざわざ回り道しなくてもフーリン国へ直行できますのに」

ロディア王国の北方にリヤム王国、そして更に北方に突き進むと宗主国・フーリン国があるのである。


「私はルティカと一緒がいい」

こんな砂まみれのボロ着の私とですか?


「それに」


「他にリヤム王国へ行きたくない理由でも?」


「あの王太子嫌い」

ぶっちゃけちゃったぁ――――。

あぁ。き、嫌いだったんですね。あのひとのこと。


「あ、私もなので気が合いますね」


「あぁ、嬉しい」

そこは喜んでいいのだろうか。と言うか、あの浮気男は私も嫌いだが宗主国の王太子に嫌われてるって詰んでないか?てっきり詰んでいると思っていた私だが。あの浮気バカ男よりはましなのかもしれない。だって私は世界最強種族の王太子殿下に拾われてしまったのだから。


あの浮気バカ男は見事ヒロインとハッピーエンドを迎えたものの、ゲームの設定にはないいろんなことがこの世界には溢れている。ゲーム開始時には滅亡しているはずのロディア王国はまだ現役だし、そもそもフーリン国も出てこないので、リヤム王国がその属国であると言う情報ももちろんなかったのだ。


―――更には世界最強種族の存在。


いや、ほんと。ゲームの中ではヒロインが聖女になって魔族から身を守り、リヤム王国は繁栄するのだけど。そもそもロディア王国の更に南の魔族の国はロディア王国やリヤム王国に手を出せば、即刻宗主国のフーリン国にケンカを売ってぼっこぼこにされるので手を出してくることはないだろうし。フーリン国と国境を接している魔族の国・魔帝国だっていろんな属国を束ねる大帝国だが、フーリン国にケンカを売ったら世界最強種族の彼らにぼっこぼこにされるので、今のところ大規模な争いはないのである。


「あぁ、そうだシュキさま。リヤム王国には“聖女”と言うものが発現したのですが、魔王国や魔帝国との関係はどうなるのでしょうか?」


「そうだな。聖女と言うものが我らに歯向かうことがないのであればどうでもいい。我らの方が強いのだから魔族どもも感知しない」

わぁ―――。さっすが世界最強。まるで眼中にないっ!!!


「ところでシュキさまは何故あんなところにいらしたのですか?」


「ロディア王国に所用で赴いていた」

その途中に拾われた私、運が良かったのかも。いやむしろ奇跡である。その所用が何なのかはわからないが感謝しなくてはなるまい。


「もうすぐエルフ族の王国。シリンズランドだ」


「はい。その、エルフ族の王国には私の友人がいるのです」


「そうなのか」


「はい。でも、追放された私とは、

もうお友だちではいてくれないかもしれません」


「どうでもいい」


「え」


「ルティカには私がいるのだから」

なっ。えっと、その・・・っ。


「何で私なんですか?」

普通おかしくない?だってあの浮気バカ男に同伴して社交の場でちらっとお見かけして、ちらっとご挨拶をしただけのシュキさまが私を道端で拾って婚約者にしたいだとか言い出した。


「ずっとっていた」

聞き間違いだろうか。は、張っていた?


「私は友人に助言をもらったのだ」


「はぁ。ご友人ですか」

王太子殿下の友人なら同じように王太子とか?


「かなわない願いと思っていたがやはりそうではなかった。だから、ルティカは私の妻になる」


さっぱり意味がわからないんだけど。



シュキ「今日の馬車メシは、“ホイップどら焼き”」

ルティカ「どら焼きだけでも魅力的なのに、更にはホイップどら焼きだなんて!!」

護衛「ちゃんとご飯も食べてください、殿下」

シュキ「とろろ昆布おにぎりもある」

ルティカ「何故にとろろ昆布!!」

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