フーリン国、そこは世界最強種族の国
フーリン国、そこは世界最強種族が治める国。
私はついに、シュキさまや、その近衛騎士団のひとたちとともに、
フーリン国へ向かうこととなった。
私の生まれ育ったリヤム王国は、
フーリン国より南に位置し、
広大な平原の上に座す温暖な国で、
四季はあるものの、雪は降らず、
夏はそれほどまで酷暑ではない。
たいして、フーリン国は、冬は寒く、豪雪。
夏は驚くほど涼しい気候の国だ。
その理由は、ソラノシア連合王国とフーリン国を隔てる山岳地帯にある。
その山岳地帯の先にあるのがフーリン国。
山岳地帯の麓ではない。その上にあるのだ。
リヤム王国からは道は通っているものの、
その道も中継の町村、また、中継地点がいくつも連なる
長い登り路なので、馬車や馬がなければ、
余程鍛えたもの以外は、
自分の脚で登ることとはできないだろう。
更には、歩いて移動しても何日もかかる。
移動の早さを考えれば、
確実に馬やなんらかの乗り物に乗った方がいい。
まぁ、そんな地形にあるフーリン国だが、
フーリン族のひとたちにとってはあっという間に行き来できるらしい。
・・・羨ましい。
だが、魔帝国から行けば、3時間ほどでついてしまう距離にある。
軍事的に危険ではないか・・・?
と、思われるかもしれないが、
魔帝国の方が低地にあり、そしてフーリン族がめちゃつよなため、
攻めようものなら見事にボッコボコにされるので、
この距離でもさして問題はないのである。
そしてそのもうひとつの秘密が・・・
「ひ・・・ひやあああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
「ルティカ・・・ちゃんと、捕まってて」
私が絶叫すると、耳元で冷静なシュキさまの声が聞こえる。
「も・・・もちろんです~~~~~~っっ!!!」
私、今、宙に浮いてる。
てか、シュキさまにお姫さま抱っこを決められ、空を飛んでいる。
ぐおぉ・・・っ
正確にはジャンプしている・・・と言う感覚だ。
数秒おきに陸地に着地しては、
金鱗フル展開し、
ジェット機のようにびゅびゅびゅんっっと飛び立つのである。
もちろん、他の近衛騎士さんたちも、
シュキさまと同じように飛んで移動している。
そう、先ほど言った3時間・・・と言うのは、
彼らからした移動時間。
ひとの足・・・乗り物だともう少々かかる。
何せ、山道だから。
でも、ここの山道が交易路として認められれば、
ソラノシア連合王国からの距離がぐぐっと縮まるのである。
リヤム王国を経由するよりも格段に速い。
そして、このジェット機風ジャンピング・・・
ソラノシア連合王国から山岳地帯を抜けた場合、
その移動時間と、異動に伴う衝撃がとんでもなくかかるため、
私の体に負担がかかるそうだ。
運よく魔帝ルダさまから招かれたこともあり、
少しでも私の体に負担の少ない経路をとってもらったわけだが・・・
再び・・・下り坂・・・
「ひゃあああああぁぁぁぁぁぁ―――――っっ!!!」
もはや、ジェットコースターのようである。
高所恐怖症じゃなかったことに、とても感謝する。
「ルティカ・・・ルティカが
ぎゅっと首に腕を回してくれて・・・嬉しい・・・
この時間、私はルティカを独り占めしているのだと、
そう実感できるのが、一番嬉しい・・・」
と、そんな甘々なセリフをしれっと告げるシュキさまだが・・・
私はそれどころではない・・・
今度は急上昇・・・
と言うことは・・・遠くない頃にまた、
あの急降下が来るのである。
「ルティカの赤みがかった金色の髪が、
ふわふわと宙を舞って、風になびいているようで・・・
とてもキレイだな・・・思わず見とれてしまいそうだ」
「やああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――っっ!!!」
※ただいま急降下中
「うん、ルティカ・・・かわいい・・・
ルティカは、世界一かわいい・・・」
状況とセリフが全く・・・
合ってなああぁぁぁ――――――――っいっっ!!!