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魔帝国、そして魔帝陛下



ソラノシア連合王国の家族から盛大に見送られ、

次はいよいよフーリン国へ・・・と、

なるわけだが・・・フーリン国へ向かうためには、

リヤム王国か魔帝国を経由せねばならない。


尤も、フーリン族からすれば、

山岳越えなど朝飯前なので、

ソラノシア連合王国から山岳地帯を飛び越えて、

そのまま直行もできる・・・


どうするのかと思っていれば・・・


「魔帝国・・・ですか?」


「あぁ・・・私が近くに滞在したことから、

よかったら寄って行かないか・・・と、魔帝陛下から誘いがあった」

ま・・・魔帝陛下からの誘いって・・・

さすがは宗主国同士。

そして、魔族よりも強い、最強種族の王太子殿下なだけなことはある。


「あれ・・・休暇中では?

魔帝陛下はよろしいのですか?」

リヤム王国からの使者には、

めちゃくちゃいらだっていたけれど・・・


「あぁ・・・遊びの誘いだから」

ぐはっ。


「だが、交易路についての話も、少しはすると思う。

だから、ソラノシア連合王国の姫として、

話す時間をもらうことも可能だ」

魔帝陛下に・・・っ!


「魔帝陛下は・・・その、了承してくださる・・・でしょうか」

あくまでも、呼んだのはシュキさまであって・・・


「魔帝陛下も、是非ルティカと話がしたいと言っていた・・・

そうだな・・・今回の訪問中ではなくとも、後日、

改めて時間をとってもらえばいい。

そもそも、君は彼とは親しいのだろう?」


「それは・・・その、それなりには。

けど、今回はシュキさまがメインで・・・」


「君もメインだ。問題はない」


「わ・・・わかりました・・・その、ありがとうございます」


「いや・・・未来の妃の祖国のことだ。力にはなる」


「は、はいっ!」

新たな祖国のために、早速動けると言うのは・・・

何だか嬉しいものだ・・・。


さて、これから向かうのは、魔帝国・・・それは魔族の国。

数ある国を配下に治め、発展してきた大帝国である。


彼らの国には奴隷制度があり、

侵略して手中に収めた国の民は、ほぼ奴隷としてこき使う・・・

と言う、恐ろしいこともやってきたのだが、

最近は活躍に見合った平民階級への進級や、

奴隷に対する法や権利の確立などもやっているという。


周辺の宗主国を中心とする国々からは、

結構恐れられてはいるものの、

最近はフーリン国のおかげで案外平穏なものである。


フーリン国とも親交を深めており、

隣国の宗主国同士、交流も頻繁に行っている。


そのため、私もリヤム王国の王城のパーティーで、

一度だけ我が国を訪問された魔帝陛下と邂逅している。


その縁あって、魔帝国に招かれた際は、

元婚約者の浮気男ポンコツが怯えて話にならなかったし、

元実家では冷遇されていたため、

使用人たちもついてきたがらず、

ましてや、浮気男ポンコツは護衛の騎士すらつけなかった。


だからこそ、私は単身、ソラノシア連合王国を経由して

行くこととなった・・・

もちろん、その際は主家しゅか一家のシャーラや

お姉さまたちに一泊の宿を頼んだら、

是非、主家にいらっしゃいと誘われ、

家族そろっての晩餐会に誘ってもらったりもした。


主家のおささまたちは、

護衛の騎士を付けると仰ってくれたけれど、

さすがに魔帝国内までは他国でもあるわけだし、

当時リヤム王国民であった私に、

他国の騎士がつけば、魔帝国側から余計な詮索をされかねない。


だからこそ、国境まで送っていただき、

そこからひとり、魔帝国へと向かい、

正式な招待状を持っていることを国境警備隊に示せば、

ひと晩待てと言われ、人族であるはずの私は、

割と好待遇をしてもらえ、3食寝床付きの

大変楽しい滞在を終えたら、翌日、魔帝陛下自ら迎えに来てくださったのだ。


それ以来、ひとりで魔帝国にまで乗り込んで来た私を気に入ってくれた。

その際に、ソラノシア連合王国の交易路についても相談していたのだった。


そして、今回は国境を越えても、

シュキさまやその騎士団の方々が同行してくれるので、

そのまま一緒に魔帝国城へと向かった。


「此度は大変であったな、ルティカ」

アッシュブルーの髪に、切れ長の群青色の目は、瞳孔が縦長。

そして頭から生える、歪んだ大きなずんぐりとしたダークブラウンの角は、

獣人族の一種である、牛種の角よりも巨大で、

天に伸びるように立派なたたずまいだ。


お顔はお肌のつやも女性がうらやむほどで、顔立ちも美しい。

そんな美貌の若き魔帝陛下が、シュキさまとのあいさつの後、

私の名前を呼んで、挨拶をしてくれた。


「いえ、ご心配をおかけしました。魔帝陛下」


「私のことは、いつも通り“ルダ”でよい、ルティカ」


「はい、ルダさま」


「それにしても、リヤム王国・・・か。

聖女を輩出したと大々的に発表していたが・・・

まさかルティカを国外追放にするとは驚いた・・・!

我が魔帝国に追放されたのなら、是非妃にと望んだのだが」


「冗談がお上手ですわ」


「冗談ではない、本気だ」

え・・・本気?

社交辞令ではなく?


「ルダ殿、恐れながら、ルティカは我が妻となる身ですので」

シュキさまがすかさずそう、付け加える。


「わかっている。先を越されてとても残念だが・・・

もし、夫婦喧嘩をすることなどあれば、

いつでも我が帝国を実家と思って訪ねてくればよい」


「そ・・・それはありがたいです」

まさか、ルダさまからも温かい言葉をかけていただけるとは。


「夫婦喧嘩などしない!」

シュキさまは全くその気はないようだけど。

すごい自信だ。

まぁ、命を救われた身、シュキさまには感謝しているし、

できれば円満な夫婦生活を築きたいものだ。


「私も、シュキさまと仲良く過ごしたいです」

と、微笑んでみれば、シュキさまに盛大にぎゅむ~された。

えと・・・ルダさまの前なのだけど・・・


「ははは、これでは、私が付け入る隙などないな。

安心せよ。私はリヤム王国の聖女のように、

シュキの婚約者を横恋慕などせぬよ」

と、苦笑する。

うわ・・・盛大な皮肉。


「しかし、まぁ・・・ルティカのような才女を、

バカバカしい冤罪で放り出すとは・・・

リヤム王国国王は、もう少しまともだと思っていたが」

あぁ・・・ルダさまはあれが冤罪だと、見抜いていらしたってこと?

そして同時に、私を信じてくださる・・・


「いえ、今回のことは、第1王子殿下が独断で行ったことです。

罪状を述べられた場には、陛下も、第2王子殿下もいらっしゃらず・・・

陛下や第2王子殿下は・・・きっと私が無実だと信じてくださると・・・

私は信じております」


「ほう?ルティカをないがしろにした国を、信じるか」


「はい・・・最も信頼していたひとたちには裏切られましたし・・・

リヤム王国民である戸籍も失い、

新たにソラノシア連合王国民となりましたが、

それでも、大切な友人や、知人はたくさんいるので・・・」


「ルティカがそう言うなら、此度の件は、多目に見てしんぜよう」


「ありがとうございます」

私ごときのことで魔帝国が怒ったら、

魔帝国の名にも傷がつくだろうし。


「さて、私がこうして煮え湯を飲んで、

煮えくり返る腹をおさめたのだ。

フーリン国はそれ相応の処罰をくだすのだろう?」


「あぁ、もちろん。ルティカを辱めた罪は重い」

シュキさまが躊躇いもせず断言する。


「いや・・・その、私は別に・・・」


「けっちょんけっちょんにやってやらねば、私の腹の虫もおさまらん」


「もったいなきお言葉ですが・・・」


「これは、宗主国としての意地だ」


「そう言われてしまうと、反論の余地がないのですが・・・」


「未来の宗主国の王太子妃に、冤罪を吹っかけ、

国外に放り出したのだぞ?全く、酷い話だ」


「うむ、私の妃に、酷いことをしてくれた」

まぁ、そう言ってもらえるのも・・・

幸せなことなのだろうと思うけれど。

本当に、私で認められるのか・・・

シュキさまはあぁは言っていたけれど、

やはり不安だった。



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