歓迎の宴、そして新たな故国
「そんじゃ~、ルティカちゃんが我が家の娘となった記念に~かんぱ~い!」
そう、現首長であり、私の父となった、
ニカ・ランさま・・・いや・・・お父さま。
お父さまは、シャーラさま・・・いえ、姉妹になったので、
今はシャーラと呼んでいて・・・とよく似たダークブラウンの髪に、
ニオくんとそっくりなぴーんと伸びた狼耳、ふわもふしっぽ、
瞳は紫で、肌は褐色、左頬の十字傷がワイルドなお方。
そして、お父さまがそう告げると・・・
「いや、わしらにとっても!」
「ルティカちゃんは娘じゃぁ~っ!」
「私たちにとっても妹じゃぁ~っ!」
「そだ~っ!独占すんな~っ!独占禁止法~!」
何か、そんな名前の法律を、前世で聞いた気もするけど・・・
他の長さまたちや、お姉さまたちも出てきて大盛り上がり。
何だかみんなでわいわいやる晩餐会というのは・・・
ソラノシア連合王国に訪問すれば当たり前のことなのだけど、
それが訪問する度に、妙に楽しみで仕方なかった・・・
「ふふっ♡ルティカちゃんが娘になってくれて、嬉しぃ♡」
と、私にぎゅむっと抱き着いてくれたのは、
シャーラとよく似た狼耳しっぽのかわいらしい女性。
彼女はリーラ・ラン。
私の新しいお母さまだ。
ダークグリーンのロングヘアーを、
低い位置で余裕を持たせてふたつに結っており、
シャーラとよく似たサファイアの瞳を持つ。
あぁ・・・シャーラと並ぶと姉妹にしか見えなくて・・・
「お母さまばかりずるいです~っっ!私も・・・ですっ!」
ぎゃふぅっ!左右からお母さまとシャーラに抱き着かれて、
あぁ・・・もう何この幸せな状態・・・
しかし・・・ぎゅむっ!
後ろから・・・誰かに抱き着かれたと思って、
ビクッと後ろを振り向けば・・・
「シュキさま・・・?」
シュキさまのお顔があった。
「ルティカ」
ぎゅむ~~~。
何だか、負けじと抱きしめられた。
えと・・・ヤキモチ・・・?
いやいや・・・そんなぁ・・・
「あの、ルティカお姉さま」
「えぇ、ニオくん」
新たに弟となったニオくんも来てくれた。
「結局、シャーラお姉さまとルティカお姉さま・・・
どちらが姉なのでしょう・・・?」
あぁ・・・そう言えば・・・
「もう、双子でいいじゃないっ!同い年なんだしっ!」
と、お母さま。
「双子でも、姉と妹がいたりしますよ」
と、尤もなニオくんの指摘。
「じゃぁ、お誕生日は?」
「私は秋生まれで・・・」
「ひゃうっ!シャーラ・・・冬産まれです・・・っ」
わなわなとしているシャーラもかわいいが・・・
「一緒に、お姉さまたちの妹・・・でいいんじゃないかな?」
『それいいっ!!!』
と、お姉さまたち大賛同の元、
私たちはお姉さまたちの“妹”となったのだった。
「そうだ・・・あの、シュキさま・・・
ソラノシアの交易路の件は、どうなるでしょうか?」
「もし、不当にリヤム王国が勝手な関税をかけたり、
ソラノシアの交易の邪魔をすれば、
それはすなわち、我らがフーリン国への反逆とみなされるだろう。
先ぶれは、既に送った」
おぉ・・・仕事、早い。
さすがはシュキさま。
「では・・・ソラノシアは・・・大丈夫でしょうか」
「あぁ、もちろん。属国は、我ら宗主国が守るべき存在だ」
「・・・ありがとうございます。なんだか、嬉しいです」
「・・・ルティカが歓ぶのなら、何でも叶える」
「なんでも、はダメです。時にはダメなものはダメと言わないと」
「そう・・・なのか・・・?」
「はい」
「では・・・ルティカに他のものが抱き着くのは、ダメだ」
「家族はOKでいいですよね」
「え・・・」
「シュキさまはご兄弟がいらっしゃったはずです。
ハグとか・・・しないのですか?」
「・・・する、な」
「それと同じです」
「じゃぁ、俺とソラノシアの・・・家族とだけだ」
「はい」
「それ以外は、ダメ」
「わかりました」
そう、私がにっこり笑えば・・・
「やった~!王太子殿下のお許しが出たぞ~!」
と、アンお姉さまが迫ってきて・・・
「私も~~~っ!」
と、フェリお姉さまや、他のお姉さまたちまでやってきて、
ぎゅむぎゅむともみくちゃにされつつ、
最後まで私の後ろをキープしたシュキさまに、
尊敬のまなざしを向けたのだった。