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決別、そしてその先へ



私たちは、お姉さま方の手引きで、

謁見の間を覗ける場所へと移動。

本来は護衛の方々が潜む・・・場所なのだが・・・

実はお姉さま方はとっても強いのだ。


しかも、その先には世界最強種族の王太子・シュキさまがいる。

危険は・・・むしろ姫さま方ですが、と、

騎士さんたちに言われつつ、

彼らが安全と判断した場所までは行くことができた。


そして謁見の間にいた人物に・・・私は、息をんだ。


その人物を前に、シュキさまが声を掛ける。


「それで、何故、ここへ来た」


「此度の我が王国の不始末について、

一刻も早く、シュティキエラ王太子殿下にお目通りをと願いまして」


「・・・ならば、直接フーリン国へ赴き、私の帰国を待てばいい。

わざわざソラノシアまで出向き、たかだか属国の分際で、

ソラノシアを脅して私との面会を求めるとは、何事だ?

貴様らは、いつからソラノシアの宗主国になった?

ソラノシアの宗主国は、我らフーリン国だ。

その座をかたるその意味がわかっているのか?」


「い、いえ、我らは、そのようなつもりでは・・・」

シュキさまの前で、ちぢこまるその姿には、

私を大公家から即刻追い出したあの気迫など・・・どこにもなかった。


「では、何故ここへきた」


「シュティキエラ王太子殿下が、

こちらをご訪国なさるとの情報を掴みまして」


「それが、何だ?」


「え・・・」


「此度は、休暇で来ている」


「は・・・はぁ・・・」


「お前たちが起こした不始末のために、

わざわざ私の休暇中の行動を調べ上げ、

そして堂々と邪魔をするように乗り込んできた・・・

その理由は一体なんだ?」


「ですから、早急に謝罪をと・・・」


「私が望んだのは、謝罪ではなく、

調査結果、そして、お前たちの国の王太子の処遇についての答えだ」


「は、はい、わかっております」


「では、示せ。貴様が、自身の娘を冤罪で婚約破棄させた上に、

国外追放とした件についての調査結果だ」


「い・・・いえ、シュティキエラ王太子殿下・・・

恐れながら・・・我が娘・・・いえ、もう、娘ではございません。

あの娘は・・・許されない大罪を犯し・・・ですね・・・

我が家の養女となった聖女をおとしめ・・・苦しめ・・・」


「・・・もう、いい」


シュキさまは無表情のまま、そう短く斬り捨て、席を立とうとする。

すると、使者は立ち上がり、シュキさまに詰め寄ろうとして、

側近のアルオさんに剣を突き付けられていた・・・


その姿は・・・哀れと言うか・・・

みっともないと言うか・・・怨みを通り越して、

あきれ果ててしまう。

血がつながっているという事実が本当に・・・

情けない・・・。


シュキさまは、私たちが見にきていることをわかっていたかのように、

真っすぐ私の元へ来てくれた。


「ルティカ」

シュキさまの掌が、私の頬に添えられる。


「・・・まだ、あの男に、父娘おやこの情があるのか?」


「・・・いて言えば・・・

それを問われて本当に、父娘だったのだな・・・と、思います。

そうとだけしか・・・思えないので・・・」


「・・・そうか・・・ルティカ」


「はい、シュキさま」

私は、俯きかけた顔を、

再びその声を聞き、見上げた。


「首長たちが言っていたように、ソラノシアの娘になるか?」


「え・・・私が・・・ですか?」


「さっすが私たちの殿下~」

「わかってるわねぇ~」

「ルティカなら大歓迎だなっ!」

と、お姉さま方は盛り上がっておりますが・・・


「・・・ですが・・・私、人族ですし」


「関係ないわよ。分家には、人族のお嫁さんもいるし、

混血のこだって、いるのよ?

それになにより、ルティカだからいいのよ!」

と、アオイお姉さまがにこりと笑えば、

他のお姉さま方もうん、うんと頷いてくれました。


「その、認められるのでしょうか」


「ルティカは、もう国外追放となり、

かの国の大公家の籍から外されているし、

リヤム王国籍も持たない」

実質上、国外追放されれば、

生きびたとしても、無国籍の浮浪者にしかなれない・・・


「ここで、戸籍をもらえばいい」


「よいのですか?」


「首長たちがそれを望んでいるからな。

私としても、ルティカの籍をどこかの、

信頼の置ける家に入れたいと考えていた。

形だけでは意味がない。

ルティかや、姫たち、首長たちを見ていて、

ここならば、私は安心できると判断した」


「・・・シュキさま・・・」


「だから、ルティかはそれでも良いか?」


「・・・はい・・・っ!願ってもいない・・・話です!」

冤罪とはいえ、咎人となり、戸籍を失った私にとって、

再び、他国で戸籍を受け取れる・・・

それは、浮浪者にとって、願ってもみないことだろう。


それも・・・お姉さま方や、シャーラさまの、お家に・・・


「でも・・・お姉さまたちは・・・」

私がお姉さま方を見れば、きょとんとした表情をされる。


「もちろん、願ったりかなったりね」

と、アオイお姉さま。


「問題は、どこの主家しゅかに入るか・・・じゃない?」

と、リリーお姉さま。


「ねぇ、瞳の色が似てるし・・・私の牛家ニウカ!」

と、フェリお姉さま。


「なら、私の小麦色の髪も、近いじゃないか」

と、アンお姉さま。


「んもぅっ!そこで判断するのは卑怯よ!

誰が一番ルティカのお姉さま好感度を稼いでいるか・・・

・・・で勝負じゃない!?」

と、リリーお姉さま。

いや・・・その、オトゲーの好感度みたいなのを、

いつの間に稼いでいたの・・・?


「ひゃう・・・わ、私も、お姉さまっ!!」

と、シャーラさまがかわいらしく主張します。


『シャーラは妹じゃなきゃぁっ!!!』

お姉さま方、譲らねぇ。


「ひゃううぅぅっっ!!?」

シャーラさまはニオくんにどうしようと

あたふたと抱き着いていて・・・

あぁ・・・かわいい。

私もお姉さま方に混ざり、なでなで、なでなで。


「・・・私から、提案してもいいだろうか」


「えぇ、この際ですから、私たちの王太子殿下に決めていただきましょ?」

と、アオイお姉さま。


「誰がルティカの戸籍上もお姉さまになるのか!」

と、サンドラお姉さままでずいっと前にでてくる。


「うん・・・私は・・・」


『ごくり・・・っ』

お姉さま方が、一様に唾を呑み込む。


私も、ちょっとドキドキするなぁ・・・


狼家ランカ


・・・ってことは・・・シャーラさまのお家・・・!?


その瞬間、シャーラさまにぎゅむっと抱き着かれ、

とっても幸せな気分になった反面・・・・


『のおおおおぉぉぉぉぉぉ―――――――っっ!!!』

お姉さま方の敗北の叫びがこだました。


こうして、めでたくすぱっと解決した、

私の無戸籍状態問題。


首長さま大喜び、他の長さまご落胆。

でも、同じソラノシアの6氏族なんだから、

“お父さん”って呼んでねとめっちゃ迫られた。


まぁ、お姉さま方は・・・お姉さまと呼んでいるので・・・

お姉さま方と相談しながら決めていこうと思う。


それが、ソラノシア連合王国が私の新たな故国となった日だった。



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