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ソラノシア連合王国にて、予期せぬ来訪者



ソラノシア連合王国の首長を含む6氏族の主家しゅかの長、そして当代首長・狼家ランカの太子でシャーラさまの弟のニオくんとともに、外交的な会合と言う名の座談会に出席していたシュキさまが会合を終え、ニオくんと私たち姉妹の前にやってきた。


ニオくんはたれ耳のシャーラさまとは対照的に、ぴーんとたった狼耳が特徴で、狼しっぽがふっわもふな弟くん。髪はダークブラウンで、瞳はサファイア。無表情が多く、褐色の肌の大人びた少年だ。確か今年で15歳だったっけ。彼は縦襟の服に着物のようなあわせのある装束を重ねている。


「ルティカ、その格好は?」

まずシュキさまが私の装いを見て目を丸くされていた。


「あ、うん。シャーラさまやお姉さま方に着付けていただいて」


「―――そうか。とても、似合っている」


「あ、ありがとう、ございます」


「やだっ♡初々しいわねぇ」

「こらぁっ、フェリったらぁっ!」

後ろでフェリお姉さまとリリーお姉さまが茶化してくるけれど、まぁ、ともかく一段落ついたわけで。


早速シャーラさまが何より大切なシャーラさまの弟ニオくんが、シャーラさまに駆け寄りぎゅむ~していた。


ここでも安定のシスコンである。


「シャーラお姉さまっ!」


「ニオったら、甘えん坊さん?」


「うんっ」

ぎゅむ~~~、しっぽふりふり。やっば。ニオくんすごいかわいい。シャーラさまもだけど。あれ、姉弟で世界文化遺産に登録したほうがいいんじゃ?そう思っていると、シュキさまもじ~っとふたりを見つめている。


シュキさまにもあのかわいさがわかったのだろうか。


「かわいらしいですよね」

と、微笑みかければ。


「あぁ、ルティカはかわいい」

と、真顔で言われて後ろからお姉さま方に“ヒュゥヒュゥ”言われるし。いや、そう言う意味じゃないし。


やっぱりシュキさまって天然なのかもしれない。そう微笑ましく思っていた時だった。突然慌ただしく主家しゅかおささま方がやってこられて?


「ご歓談中大変申し訳ございません、シュティキエラ殿下」


「いや、構わない。どうした」

恐縮しながら頭を下げる長さまのひとりにシュキさまが答えを返すと。


「リヤム王国より使者がまいったとのこと。至急、シュティキエラ殿下にお目通りをと」


「何故、ソラノシア連合王国へ?直接本国へ赴けばよいものを」


「そうなのですが、先方がどうしてもと譲らず。大変申し訳ございません。無下に断れば多くの交易路をたれてしまいますがゆえに」

んなっ!シュキさまに会うためにソラノシア連合王国を脅したってこと?確かにソラノシア連合王国から他の属国と交易をするためにはリヤム王国を介するのが最も経済的で時間も短縮でき、効率がいい。


ソラノシア連合王国とフーリン国は地図上では斜め向かいに位置するが、実際はその間に山岳地帯がそびえており。山岳に慣れた獣人族たちが暮らすものの、交易に利用するにはいかんせん不向きである。どちらにしろリヤム王国から回り道しなくてはならない。


更に諸外国と繋がる港のあるフーリン国の“従国じゅうこく”に渡るためには、リヤム王国を挟まなくてはならない。ソラノシア連合王国の南に位置するシリンズランドから回り道する方法も取れるが、砂漠の国・ロディア王国を通らなくてはならず、時間も距離も手間もかかってしまうのだ。


また、ソラノシア連合王国の国境は北方と東方を魔帝国に囲まれており、魔帝国を介せばバカ高い関税を払わなくてはならない。


私がリヤム王国にいた頃はその関税を何とかすることで、もしリヤム王国で何かあった時のための行路を開けないかと、度々魔帝国に掛け合っていたのだが。あぁこんなことなら早くやっとけば良かった。あの浮気バカ男が私に仕事を全部押し付けるから、実質私の方のプロジェクトがなかなか進まなかったのである。


あんなもの全部ほっぽりだしてシャーラさまたちのためにやっておくべきだったと今更ながら後悔してしまう。いざとなったらどうせ魔帝国との間に行路を作るのだからシャーラさまたちのところに亡命してしまえばよかった。だって結局は婚約破棄の末、国外に死ねとばかりに放逐されたのだ。


全く。後悔先に立たずとはこういう時に使うんだなぁとしみじみ。しかしまぁこんな強引な手を使えば。


「はぁっ!?信じらんないっ!?リヤムは何考えてるの!?」

リリーお姉さまが激昂する。


「やっぱりルティカをソラノシア連合王国籍にしてからフーリン国に嫁がせるべきだわ」

と、アオイお姉さままで。


「いや、それはお気持ちだけで」


「遠慮しちゃだめよっ!」

「そうだそうだ!ルティカは私らの妹なんだからねっ!」

「そうですっ!ルティカさまは私たちの姉妹です!」

わぁ、お姉さま方。それにシャーラさまっ!ぐすっ。私、本当にソラノシア連合王国に亡命しておこうかな。


「―――ひとまず、会おう。リヤム王国はフーリン国の属国であってソラノシア連合王国の宗主国ではない。そのような一方的なことをソラノシア連合王国に要求する権利はない」


「シュティキエラ殿下!ありがたきお言葉にございます!」おささま方がシュキさまにこうべを垂れれば、シュキさまを伴って早速使者に会いに行かれた。


「ねぇ、私たちもこっそり見にいきましょうよ」

と、リリーお姉さま。


「えっ、それはさすがにっ」


「ソラノシアの危機なのよ!?シュティキエラ殿下がどう対応するかこの目で確認しないとだねっ!」

わぁ~、サンドラお姉さままでやる気。


「―――あの。ニオも、行きますよね」

何となく、お姉さま方を止めたい雰囲気だったニオくんだけど、シャーラさまにくいくいと袖のたもとをかわいらしく掴まれ、見事に完敗したみたいだ。



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