主人公/化物
花凜視点です。
「宇治峰祐希くん。あなたはもう、人間じゃない」
私がそう告げた時の彼の顔を、私は一生忘れないだろう。
私はこの時、この瞬間、自分の人を見る目の無さを、これ以上無いほどに痛感したのだから。
私は彼を初めて見たとき、主人公だと思った。
己が危険を顧みず、たった一人の女の子を救うために夢中で駆け出したその背中を見た時。
ボロボロになって目を覚まして、それでも他人の身を案じる彼の優しさに触れたとき。
私みたいな面倒な女の相手をめげずに真面目にしてくれる律儀な性格だと知ったとき。
そのどれもが、私の思う主人公そのものだと、本気でそう思った。
だから、告げた。
普通の人なら受け入れられないであろう事実も、現実も、真実も、きっと彼なら受け入れてくれると信じて。
受け入れて、私と共に戦ってくれると、私と共に歩んでくれると信じて。
けれど、それは私の一方的な思い込みに過ぎなかった。いや、思い込み足りなかった。
もっと考えるべきだった。彼のことを。
もっと見るべきだった。彼のことを。
もっと知るべきだった。彼のことを。
一体、私は何度、同じ過ちを繰り返すのだろう。
きっと、彼は分かっていたのだ。何故なら・・・・・、
彼は、嗤っていたのだ。




