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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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95 町の被害状況

 ディデリクさんの言葉に町長が大きく頷いた。


「そうですとも、今回皆様に助けていただき本当に助かりました!町民にはその旨を周知させます!皆にとっては命の恩人ですから、きっと協力してくれますよ!」


 命の恩人とまで言われると、少し大げさだと思う。

 結果的には命を助けた事にはなるが、俺達は逃げ遅れた人たちを避難させたかっただけだ。


「すみませんが、よろしくお願いします。ところで、怪我人や犠牲者の状況はどうなんでしょう……」

「幸いな事に、犠牲者は一人も出ませんでした。ですが怪我人はかなりの人数で今、広場で手当てをしているところです」


 犠牲者が出なかった事にとりあえずほっとして、セーラと洋介に視線を向けると二人も安心した様子だった。


「それにしても、外の被害がひどいですね……」


 洋介は辺りを見渡してため息をついた。

 なるべく建物や畑の少ない場所で戦ったが、ドラゴンブレスのおかげで辺りは一面焼け野原だ。


「復興には時間がかかりそうだな……」


 壁沿いに立っている住居の被害も相当なものだ。これはワイバーンの攻撃によるものだろう。元々が簡素な作りの建物が多いので、無事な住居を数えたほうが早いレベルだ。


「しばらくは広場に避難所を作ろうと思っています。秋になれば出稼ぎに来ている者達の大半は故郷へ帰りますので、部屋が開けば順次住まわせる予定です」


 町長はこれからが大変そうだ。


「お金もかかりそうね。カイト、このドラゴンを売れないかしら?」

「鱗とか牙はそこそこの値で売れるんじゃないか?」

「このドラゴンのおかげで町の外が壊れたのですから、身をもって償ってもらいましょうか」


 ドラゴンは貴重な素材ばかりだ。

 セーラはそれを知っていてわざわざ聞いてきたのだから、町に寄贈したいということだろう。

 洋介もその考えには同意のようだ。


「ディデリクさん、面倒なお願いで申し訳ありませんが、出所が分からないようにこれを売って、町の復興資金に充ててくれませんか?」

「そんな……こちらは皆様の戦利品ではありませんか。そこまでしていただくわけにはいきません」

「俺達、こういうのを解体するのが苦手なんです……。持っていてもポーチの中で腐らせるだけなんで、有効活用していただけると助かります。それから、できれば外の建物をもう少し良い物にしてくれるとうれしいなーと。エミジャ村から来ると、まず目に入るのが外の建物なんで」


 町の外を一周してみて分かったが、南側は富裕層が住んでいるためか外の建物もそれなりだったが、北に向かうにつれてどんどん建物の質が落ちていき、北ゲート付近の建物は住居というより小屋の集合体だった。

 町の中も北側は簡素なものだったが、もう少し生活レベルを上げてやりたい。

 このドラゴンを売れば、余裕でその資金は調達できるはずだ。


「お見苦しい状態で申し訳ありませんでした。大変恐縮ですが、大切に使わせていただきます」


 ディデリクさんは俺が予想した通り『見苦しい建物を撤去してくれ』と受け取ったようだ。

 彼は俺達を地位のある人間だと思っているようだから、善意で渡すよりこのほうがきっちりやってくれる気がする。


 ドラゴンの回収はディデリクさんに任せ、俺達は広場へ行ってみる事にした。

 村人が怪我をしていないか確認したいが、広場を出る時点で大勢の人が集まっていたから見つけられるかどうか。


 そう思いながら広場に差し掛かると、見たことのある一団を発見した。


「おっ!戻って来たぞ!」「おーい!カイト様!セーラ様!洋介様!」


 出稼ぎに来ていたエミジャ村の人たちが全員揃って、俺達を迎えてくれた。


「皆様がワイバーンやドラゴンを退治してくれたと聞いて驚きました!本当にありがとうございます!」


 代表して村長の息子ナッシュさんが、興奮してそう感謝を言ってくれると、皆も口々に感謝の言葉を述べてくれる。


「皆さん見たところ、大きな怪我はしていないようですね」

「外に住んでいたのは男三人だけで、幸いな事に俺達は北ゲートの近くが住居だったのですぐに逃げられたんです。ただ、町がどうなるか分からない状況だったので、情報を得るためにもここに全員集まったんです」

「そうでしたか、無事で何よりでした」


 ドラゴンを撃破したのは速報で広場に伝えられたようだが、戦ったのが俺達だと知った皆は、俺達の無事な顔を見るまでは安心出来なかったらしい。


 ふとズボンが引っ張られた気がして下を向くと、そこにはジェシーちゃんがいた。

 怖くて泣いていたのか、目が真っ赤だ。


「もう……、ぐおおおおんっていうの来ない?」

「あぁ!俺達が倒したから、もう大丈夫だ!」


 間近にいた俺達は鼓膜が破れそうなほどの大音量だったから、広場にいてもかなりはっきり聞こえてたと思う。

 子供でなくても皆不安だっただろう。


 セーラはジェシーちゃんの前に屈むと、ポーチから可愛らしい棒キャンディを取り出した。

 あれは確か、ホワイトデーイベントの時にモンスターからドロップしていた物だ。

 

「甘い物を食べると心が落ち着くわ」

「わぁ!……でも、こんなに可愛いキャンディ食べるのがもったいないわ……」

「ふふ、村へ帰ったらまたあげるわ。今度はレオくんも一緒に食べましょ」

「うん!ありがとう、セーラ様!」


 ジェシーちゃんは彼女のお母さんに食べていいか確認を取ってから、口に頬張った。

 幸せそうな顔になった彼女は、やっと不安から抜け出せたようだ。


 俺もほっと一安心しながら、視線を広場に向けてみた。


 村人は無事で良かったが、町の怪我人は相当数いるようだ。

 包帯をぐるぐる巻きにされている人も数多くいるが、セーラのようなヒールを使える人はいないのだろうか。

誤字報告ありがとうございます!

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