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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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93 ファイアドラゴン

「よし、来たな!ファイアドラゴン!」

「久しぶりの高ランクボス、存分に楽しませていただきましょう!」

「ふふ、二人ともがんばってね!」


 俺が槍を構えると、洋介は身を潜めるため森の中へ走り込んだ。セーラは俺の後ろだ。


 ドラゴンは大きく旋回しながら降下してくると、俺達を確認したのか一気に急降下してきた。


 大きく口を開けてこちらへ向かってくる様子は、とてつもない迫力だ。

 これを自分の経験上から何かに例えるのは難しい。何故ならこんなに狂暴そうな巨大生物に出会うのは、人生で初めてだからだ。

 後ろにセーラがいなければ、確実に逃げている。


 だが、今の俺は一歩も引く気はない。

 セーラを守りたいし、セーラに良いところを見せたい。

 邪道な理由だが、これが俺の原動力だ。


 俺はワイバーンの時と同じく思い切りジャンプすると、ドラゴンの鼻の上めがけて槍を振り下ろした。


 ファイアドラゴンは鱗に覆われている。

 顔周りは石垣のような鱗で、背中のごつい鱗に比べたら攻撃しやすそうだが、思いのほか硬くてびくともしない。

 振り下ろしたまま、力を込めた反動で鼻先に飛び乗ると、二回通常攻撃を加えてからスキルを発動させた。


「ピアススピア!」


 ドラゴンがうめき声を上げる。

 多少の痛みはあったようだが、攻撃した箇所の鱗はヒビ一つ入っていない。


 ゲーム内では攻撃する場所など関係なかったが、攻撃が通りそうな場所を狙ったほうが効率的な気がする。

 素早くクラッシュスピアで攻撃しながら、ドラゴンの翼まで移動した。

 狙うは翼を曲げ伸ばししている部分、人間の腕なら肘に相当する場所だ。


 そこにピアススピアをぶち込むと、ドラゴンは先ほどより大きなうめき声をあげて上昇し始めた。

 リアルで上空から地面に落下してしまうとシャレにならない事態になるので、もう一発ピアススピアを打ち込んでから地上へ退避した。


 セーラとは距離が開いていたようで、彼女はヒールをしに駆け寄って来る。


「ヒール!カイト、大丈夫?」

「あぁ。さすがにドラゴンは硬いな。心臓を狙ったほうが良いかもしれない」


 胸部や腹部はヘビのように柔軟性がありそうだが、飛んでいるままだと懐へ入るのは難しそうだ。

 まずは、なんとかドラゴンを地上に落としたい。


 再び俺に向かって急降下してきたドラゴン。今度は直接、翼を狙う。

 だが一直線に翼へ向かえばドラゴンの手に捕まりそうだ。先ほどと同じルートで、翼に向かいピアススピアを放った。


「よしっ!」


 通算三発目の攻撃で翼の肘のような部分が折れ、ドラゴンは急に体勢を崩し引きずられるように地上へ落ちた。

 俺は巻き込まれないように、一度距離を開ける。


 ゲームと違い死ねないと思うと、スキル効率は悪いが安全過ぎるくらいでちょうど良いと思う。


 ドラゴンは立ち上がると、グオオオオオオオン!と再び地鳴りのような叫び声を上げた。


「ぐっ……!」


 この距離でこの爆音を浴びると、鼓膜が破れそうで思わず耳を塞いだ。叫び声が全身に響く。


 そして、長い尻尾で弾き飛ばされそうになったので、慌てて後ろにジャンプして退避する。


 セーラが駆け寄り、ヒールと補助魔法をかけ直してくれた。


「ありがとうセーラ!」


 左の翼を折ったので、次は左腕を折って安全に懐へ飛び込みたい。


 ドラゴンへ向かって走り出すと、俺を捕まえようと腕を伸ばして来る。それをかわし、尻尾の攻撃もジャンプで避けると、折れて地面に垂れ下がっている翼を駆け上がった。

 通常攻撃を三回加え、クラッシュスピアで一気に腕までショートカットだ。


 腕の付け根は、肩は鎧のような鱗だが脇に近い部分は腹部と同じだ。

 そこへピアススピアを三回ほど突き刺すと、腕の付け根を損傷できたようで腕が力なく垂れ下がった。


 そのまま心臓を狙おうと思ったその時、ドラゴンの右手が襲ってきた。

 叩き潰されそうになり、ジャンプして回避し一度地上へ退避した。


「ヒール!もう少しね、頑張ってカイト!」

「ありがとう。安全に仕留めるなら右腕もどうにかしたほうが良いな」


 再びドラゴンの体に登ろうと思っていると、ドラゴンが大きく息を吸う動作を始めた。

 これはドラゴンブレスと呼ばれる火を吐く前のモーションだ。

 今から退避しても丸焦げ確実。ドラゴンブレスの攻撃範囲は特大だ。


 セーラは素早く俺の前へ出た。


「ホーリーシールド!」


 セーラが魔法を唱えたのと同時に、ドラゴンはブレスを放った。


 セーラの前には半透明に輝く巨大な盾が出現して、ブレスの攻撃を防いだ。


「助かった!さすがはセーラ!」

「んっ……!押されるっ……!」


 セーラは前に倒れそうなほど力を入れて盾を押さえているが、彼女の足は徐々に後ろへ下がっている。

 ブレスにこんな威力があったとは思わなかった。


 俺は後ろからセーラの杖を一緒に持って、盾を支えてやった。


「ありがとう、カイト」


 俺に振り返り、極上の微笑みを見せてくれるセーラ。


 ――このまま抱きしめたいっ!!


 こんな時に考える事では無いが、抱きしめたい!(二度言う)


 そんな事を思っていた罰だろうか、ホーリーシールドはブレスの衝撃で、ぴきっとヒビが入った。


「はっ!?嘘だろ!」

「どうしよう、カイト……このままでは丸焦げになってしまうわ……」

「どっ、どうしよう……ジャンプして逃げるくらいしか思い浮かばない……」


 尚もヒビの範囲は広がっていく。


 本当にどうしよう!

 ジャンプしたところで、ブレスの向きを変えられたら意味がない。


「そうだ、俺が盾になればいい……」 


 そうすれば、さっき願った『抱きしめたい』は死ぬ前に達成できそうだ。


「ふふふ……」

「カイトぉ~~~!」


 セーラが泣きそうな声で俺の名前を叫んだ直後、ドラゴンはうめき声と共にのけ反り、ブレスが中断された。

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