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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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90 西ゲート

「私は領主として、この町を守る義務があります。戦闘には向きませんが微力ながらお手伝いさせてください」

「ありがとうございます、ディデリクさん。大変助かります!」


 彼は俺から拡声器を受け取ると、とてもよく響き渡る声を発した。


『冒険者の皆さん、私は領主のディデリク・ブリルブレイユです!彼らはとても信頼出来る冒険者です!どうか、安心して救出に加わってほしい!』


 彼は俺達の実力がどの程度か知らないが、巨大スライムを凍らせた洋介がいる事で、それなりの実力はあると判断したのかもしれない。


 ディデリクさんが頭を下げると、周りからは動揺が起きた。


「ディデリク様!俺、手伝いますから頭を上げてください!」「私もお手伝いします!」「オレも怪我人を背負う事ならできます!」


 領主としてディデリクさんは、領民から信頼があるようだ。あちこちから手が上がり始めた。


『ありがとう、皆!感謝する!』


 拡声器を下ろすと、ディデリクさんは俺に向き直った。


「それで、作戦はどうなさいますか?」

「まず、西ゲートから出て、俺達がワイバーンを引きつけながら北へ向かいます。ディデリクさんたち救出班はそれに合わせて、取り残されている人達を救出しながら北ゲートへ向かってください。北ゲートで救出者を町の中に入れたら、次に東ゲートへ向かう。その繰り返しで町を一周しようと思います」

「それなら、ゲートで救護を待たせておく必要がありますね」


 ディデリクさんがそう言うと、周りで話を聞いていた人達から声が上がった。


「外へ出る自信はないけど、町の中でなら手伝えます!」「俺も、少しならヒールが使えるぞ!」「広場まで運ぶのは任せてくれ!」


 これなら何とかなりそうだ。


「ディデリクさん、編成はおまかせします!俺達は先に行ってワイバーンを減らしておきます!」

「よろしくお願い致します!どうかお気をつけて!」


 ディデリクさんと別れ、人をかき分けながらとりあえず走れそうな位置まで移動する。


「セーラには魔法を沢山使ってもらう事になるから、悪いがゲートまで背負わせてくれ」


 おそらくポーションを大量に飲むことになるので、西ゲートまでのヒール回数を一回でも減らしたほうがセーラの負担にならないはずだ。

 背負われるのが恥ずかしいのか、セーラは頬を染めながら頷いた。


 セーラを背負うと、洋介に視線を向けた。


「できればヒールなしでゲートまでたどり着きたい!厳しくなったら合図してくれ!」

「了解です!」

「行くぞ!!」


 俺達は全速力で、西ゲートへ向かって走り出した。


 広場でだいぶ時間を食ってしまったので、逃げ遅れた人が心配だ。

 幸いな事にワイバーンは巨体と翼があるので、壁際の建物の隅にでも身を潜めれば、割と生存確率は高いと思う。危ないのは開けた場所へ逃げ出すことだ。


 俺より体力の少ない洋介はかなり辛そうだったが、西ゲートが見える辺りまでヒール無しで走り切ってくれた。

 どんなに体力が減って疲れようとも、速度を変えることなく走っていられるのが、スキルの恐ろしいところだ。


 西ゲートには救出に出ていたと思われる自警団風の人達がいて、救出された人達も何人か横たわっている。

 その団体の中に、町長がいた。


 セーラにヒールをしてもらい走る速度を緩めると、町長が俺達の元へ駆け寄ってきた。


「おお!皆さん、必ず来てくれると信じていました!どうか町を……助けてください……」


 期待に満ちた表情の町長だったが、洋介とセーラの装備を見て次第にトーンが下がっていく。


 とりあえず俺は背負っていたセーラを下ろすと、彼女は怪我人の元へ行ってしまった。

 これから戦闘に入るので出来ればヒールは使わないで欲しいが、彼女は怪我人を見捨てられなかったようだ。

 セーラの優しさは、俺が彼女を好きな理由の一つなので仕方がない。


 苦笑しながらセーラを見送ると、町長へ視線を戻した。


「俺達の装備はランクと合っていないので、気にしないでください。それより避難状況は?」

「そうでしたか……。私達でだいぶ救出したのですが、ワイバーンが多くなってきてもう外へは出られません。何人かはここから見えるのですが……」


 町長は悔しそうにゲートを睨んだ。

 ここからでも、多くのワイバーンが集まっているのが見える。

 

 俺と洋介はゲートまで近づくと、顔を出して外を確認した。


「たすけてくれぇぇぇ!」


 物陰に隠れている人が声を上げている。


「今、助けますから動かないでください!動くと襲われますよ!」

「わかった~~~!」


 ここから見るだけでも何人か確認できるので、逃げ遅れた人はまだまだいるようだ。

 ワイバーンは動くものがいないせいか、今は上空を旋回している。


 ワイバーンは竜の仲間だが鱗は無く、爬虫類のように見える皮膚のシワとコウモリのような翼が特徴的なモンスターだ。大きさは個体差はあるが巨大スライムと同程度、翼を広げるとそれよりも大きくなる。


「ファイアワイバーンですね。っとなるとボスは……」

「ファイアドラゴンだろうな」


 ワイバーンやドラゴンにもこのゲームお馴染みの、各種色違いが存在する。ファイアワイバーンとファイアドラゴンは赤い体で火属性。口から火を噴く攻撃がある。

 今の所、ファイアドラゴンの姿は無いが、遥か上空から様子を伺っているに違いない。


 モンスターの種類も把握したことだし、そろそろ戦闘を開始しようと思っていると、後ろから「おおお!」と歓声が上がった。


「全員治ったぞ!凄いなあんた!」「もしかして、貴女様は聖女様では!?」「聖女様!?あの伝説の!?」


 怪我が治った人達に囲まれ、セーラがおろおろしているのが見える。

 どうやら今度は、聖女と間違われているようだ。

誤字報告ありがとうございます!

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