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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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89 モンスター襲撃イベント

 広場へ出ると、拡声器の声が聞こえてきた。


『冒険者登録をしている方は、こちらへ集まってください!詳細が分かりましたのでお伝えいたします!』


 拡声器が聞こえてきた方へ向かうと、そこには多くの冒険者が集まっていた。

 今はお祭りで町の外からも多くの人が集まっているし、ポーチ目的で冒険者登録をしている人も加えると相当な数の冒険者が町にはいたようだ。


 だが、実際に戦える人はどれだけいるのか……。

 とりあえず俺の周囲に、高ランク装備の人は見当たらない。


 この辺りだと襲撃してくるのはスライム・ターキー・ボアくらいだ。最悪、俺達だけでも楽勝だ。

 だがそれにしては、けが人が多いのが気になるが。


 広場へ避難してきた人たちは、壁の外に住んでいた人達だろう。

 一定の時間が経たなければ、襲撃してきたモンスターは町へ入り込んだりしないが、壁の外は町ではない。

 襲撃されれば最初に襲われるのは、外に住んでいる人達だ。

 そういうリスクを承知で皆、あそこへ住んでいるのだろうが……。


 村の男性陣が無事か心配だが、今は悠長に探している暇はない。あまり時間が経つとモンスターが町の中へ入って来るはずだ。


『ではモンスターの詳細を、そ……そんな!!』


 拡声器を持っている人は、詳細が書かれている紙でも読んだのだろうか、悲痛な叫びをあげた。


『皆さん……、落ち着いて聞いてください。襲撃してきたモンスターの群れはワイバーンだそうです……。町の結界は一時間程度しか持ちません……どうか……どうか、町を助けてください!!』


 最後の方は涙声で叫ばれ、周囲は一気に動揺が広まった。


「ワイバーンなんて俺には無理だぞ……」「私だってEランクだから無理だわ」「誰か、高ランクの冒険者はいないのか!!」


 ワイバーンはAランク向けのモンスターだ。

 本来なら王都を襲撃するレベルのモンスターだが、現実では都合よく地域によってランク分けなどされないようだ。


 誰も名乗りを上げずにいると、次第に集まっていた冒険者たちは悲鳴にも似た叫びへと変わっていった。


「嘘だろ!?俺達だけでワイバーンを倒すなんて不可能だ!!」「誰か本当にいないの!?私達を助けてよ!!」


 泣き崩れる人や、腰が抜けたように座り込む人も出てきて、残念な事に逃げ出す冒険者も現れた。

 彼らは多分、ポーチ目的の冒険者なのだろう。

 逃げ出した人たちの一人が、商会会長の息子に見えた。


「カイト……どうしたの?」

「何かあったのですか?」


 そこへセーラと洋介がやって来た。二人ともDランク装備に着替えている。


「襲撃して来たのはワイバーンだったらしい」

「そんな……」

「それでは、ボスは……」

「あぁ……、おそらくドラゴンのどれかだ」


 モンスター襲撃イベントは、モンスターを先導しているボスがいる。ワイバーンの種類を確認しないと詳細は分からないが、ボスがドラゴンなのは決定だ。

 ドラゴンはSランク向けのモンスター。

 皆ワイバーンというだけでこの騒ぎだ、ボスが何かまでは知らないと見える。


「とりあえず、このままでは(らち)が明かない。避難状況を聞きに行こう」

「狩るのは決定なんですね」

「俺達なら出来るだろう?」

「そうですね、ワイバーンでサクサクレベル上げでもしますか」

「ふふ、一気にCランクへ昇格ね」


 人をかき分け拡声器を持っている人の所までたどりつくと、泣き崩れている彼の肩に手を置いた。


「外の避難は終わっているのですか?」

「え……あ……わかりません……。外の住人の人数は把握できていないので……」

「そうですか……。っとなると、逃げ遅れている人達もいるかもしれないな」


 二人に視線を向けると、洋介が神妙な表情になった。久しぶりに見たなそれ。


「僕達がおとりになって、その間に救出してもらうしかありませんね」


 俺は頷くと、拡声器を借りてそれを口元に当てた。


『冒険者の皆さん!ワイバーンは俺達が倒します!その間に逃げ遅れた人の救出をしてくれる方はいませんか?』


 辺りを見回すと、皆ザワザワと相談をし始めた。


「あ……あんたら、勇ましいのは結構だがその装備、Dランクじゃないか!」


 その指摘はごもっとも。

 俺達はDランク。だが、バグっているのでスキルはSSランクだ。


『大丈夫。俺達はDランクの装備を着ていますが、本当は……Bランクなので慎重にやればワイバーンくらい倒せます』


 嘘も方便だ。詳細を説明するわけにはいかないが、強さとしては低く見積もってもBランクくらいあるはずだ。


 工夫次第では自分より高ランクのモンスターを狩ることが出来るのは、冒険者なら誰でも知っている。

 その説明で納得はしてくれたようだが、救出を名乗り出ようとする人は現れない。

 冒険者の知り合いがいない俺達では、人を動かすことは出来ないようだ。


 仕方がないので、モンスターを倒し終えてから助けに行こうかと思っていると、奥の方から手を上げながらこちらへ向かって来る人がいた。


「私が救出の指揮を取ろう!」

「ディデリクさん!」


 領主自ら動いてくれるなら、これほど頼もしい事はない。

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