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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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86 準男爵

 もうしばらく様子を見てから外へ出ようという事になり、町長や運営委員さんたちと一緒に食事をしていると、スタッフさんがテントの入り口を開けて誰かを招き入れた。


「これは、ブリルブレイユ準男爵様!このような場所へどうなさまれました!」


 宿屋で会った準男爵だ。町長と運営委員さんが慌てて立ち上がり、スタッフさんに席の用意を指示する。


「突然押しかけてすまないね。実は、皆様にお願いがあって参りました」


 準男爵はそう言いながら俺達に視線を移した。


「俺達ですか?」

「はい。その前に先日の件について改めて謝罪させてください。あのような騒ぎを起こし、皆様に不愉快な思いをさせてしまい誠に申し訳ありませんでした」


 まだ準男爵は、俺達を地位のある人間だと思っているようだ。


「俺達は気にしていないので、頭を上げてください。それより話を聞きたいのでどうぞお座りください」


 用意された椅子に座るよう促すと準男爵は頭をあげた。

 しかし何故、席が三つあるのだろうと疑問に思っていると。


「ありがとうございます。お前たちも座りなさい」


 準男爵が下を向くと、彼の足元から小さな顔が二つ、ひょっこりと顔を出した。

 レオくんと同じくらいの歳に見える、男の子と女の子の双子だろうか。手にはスライムヨーヨーを握りしめている。


 準男爵と双子が席に着くと、改めて自己紹介をした。


「私はディデリク・ブリルブレイユと申します。準男爵として、この辺りの領主をしています。これは次男のアルベールと三女のリリアーヌです。うちの子供たちは巨大スライムが好きでして、このお祭りへ来るのがすっかり恒例になっているのですよ」


 それだったら、やはりあの部屋は譲りたかったな。あの時は結局うやむやになってしまったから申し訳ない。


「俺はカイト、隣が妻のセーラと妻の弟で洋介です。冒険者ですが今はエミジャ村に住んでいます。今回は、巨大スライムの皮を納品しにここへ来ました」

「あの皮も皆様が仕留められたのですか?今年の皮はとても新鮮でおいしかったです」

「村で依頼されたもので。喜んで頂けてよかったです。それで、話とは?」

「はい、会場に展示してある巨大スライムについてなのですが。あちらはお祭り終了後はどうなさるご予定でしょうか?」

「特に予定はないです。あのままにしていては邪魔でしょうから、ポーチへ撤去するつもりでしたが……」

「よろしければお祭り終了後に、あの巨大スライムをお売りいただけないでしょうか?」


 まさか、あれを欲しいと言って来る人がいるとは思わなかった。

 思わず、セーラと洋介と顔を見合わせる。


「食用として必要でしたら、皮だけもありますが……」

「食用ではなく観賞用として欲しいのです。実は子供たちが気に入ってしまいまして、どうしても家に持って帰りたいと言うもので……」


 ディデリクさんは恥ずかしそうにそう言いながら、双子に視線を向けた。双子はスライムヨーヨーで遊んでいる。


「どうする?洋介」


 あれを倒したのは洋介なので、彼の意見を尊重しようと思う。


「僕は構いませんが、どうやって運ぶのですか?」

「私も名ばかりですが、一応は冒険者登録をしているのですよ。モンスター退治は苦手なのですがね」


 苦笑しながらディデリクさんはべストに隠れていたマジックポーチを見せてくれた。

 商会に続きここにも、ポーチ目的の人がいたようだ。

 富裕層がポーチ目的で冒険者登録しているのなら、この国にはかなりの数の冒険者がいる気がする。


「それなら問題ありませんね。僕はお譲りして構いませんよ、カイト殿」

「分かった。では、ディデリクさんにお譲り致します」

「ありがとうございます!お前たち、屋敷に巨大スライムを持って帰れるぞ。しっかりお礼を言いなさい」


 ディデリクさんさんが双子に視線を向けると、二人は目を輝かせて俺達を見た。


「ありがとうございます、おにいさんおねえさん!さわってみたらとっても、つめたかったよ!」

「どうしてあんなにつめたいの?すらいむはみんな、つめたいの?」

「あれは、このお兄ちゃんが凍らせたんだよ。生きているスライムは……、生暖かいかな……」


 巨大スライムに食べられた時の事を思い出すと、ドロドロの気持ち悪さが蘇ってくる……。


「おにいさん、すごい!」

「かっこいいわ!おにいさん!」


 巨大スライムを仕留めた洋介は、双子の熱い視線を受けて照れている。

 それを見ながら、ディデリクさんが洋介に声をかけた。


「ぶしつけな質問で申し訳ありませんが、洋介様には婚約者か許嫁はおられるのでしょうか」

「いえ、いませんが……」


 洋介が不思議そうにディデリクさんを見ると、彼は言いにくそうに口を開いた。


「その……もしよろしければ一度、長女に会ってやっていただけないでしょうか。長女は宿屋で洋介様をお見掛けしてから、何も手につかない状態になってしまいまして……。もちろん、長女では不釣り合いだと何度も説得したのですが、一度でいいからお話しをしてみたいと泣きつかれまして……。一度お会いすれば諦めも付くと思いますので、ご迷惑でなければお願いできないでしょうか」


 気が付かなかったが、あの場にディデリクさんの長女も居合わせたようだ。


 だがその長女は、もしかしなくても商会会長の息子との婚約を破棄した令嬢だよな……。

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