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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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85 人気者

 テントの中で待機している間、スタッフさんたちが気を遣って料理を運んできてくれた。

 ボアの丸焼きは、野菜と一緒にトルティーヤのようなもので包んで食べるらしい。

 他にも露店で色々買ってきてくれて、申し訳ないほどに豪華な夕食となってしまった。


 ありがたく食事を頂いていると、テントの入り口が大きく開けられた。

 二人がかりで板に乗せて運ばれてきたのは、ボアの丸焼き丸ごと一体だ。

 続いて町長もテントの中へ入ってきた。


「大したお礼も出来なくて申し訳ないのですが、良ければこちらを村へのお土産にお持ちください」

「食事までご馳走になったのに、そこまでは……」

「食事はほんのお詫びですが、こちらは巨大スライムへのお礼になります。午後にお会いした時にちょうど、お礼は何にしようかと話し合っていたんですよ。皆さんは随分と村人を大切にしているご様子だったので、こちらが良いのではということになったのです」


 どうやら、巨大スライムのお菓子を大量注文している様子からそう思ってくれたようだ。

 村の事を気にかけてくれたのなら、素直に受け取ったほうが良さそうだ。

 二人に視線を向けると同じく思ったようで頷いてくれる。


「そういう事でしたら、ありがたく頂きます。村の近くにはボアがいないので皆も喜ぶでしょう」

「エミジャ村も今は冒険者が訪れなくて大変でしょうな。皆さんが定住されるなら心強いと思います。どこも冒険者不足は深刻で、イーサ町も騎士に頼らなければ立ち行かなくなってしまいました」


 そういえば、騎士がこの辺りのモンスター被害を対処していると村長が言っていたな。


「騎士が不在の今は大変ですね。モンスター被害で困ったことがあればお手伝いしますよ。エミジャ村から駆け付けるんで少々時間はかかりますが」

「そういって頂けると大変ありがたいです。幸い今は大きな被害も無くやっていますが、手に負えない時はご好意甘えさせていただきたいと思います」


 ゲーム内では基本的にモンスターは一定の場所から出る事は無かったが、現実だとそうも行かないのかもしれない。

 そう思うと、急に村が心配になってきた。

 あの辺はスライムしかいないが、村人はスライムを倒せないと言っていたからな……。

 明日には帰るから、それまで何事も無いと良いが。


 冷めないうちにポーチへどうぞと言われたので、ボアの丸焼きをポーチに収納すると、またテントの入り口が開いて今度は運営委員さんが入ってきた。


「騒ぎは収まったか?」


 町長が尋ねると、運営委員さんは首を横に振った。


「それが、洋介さんの人気は相当なもので、皆さんプロフィールが知りたいようなんです。それを聞かない事には家に帰れないと泣き出す子までいる始末で……」


 もはや王子かアイドルかってレベルだな。

 洋介に視線を向けると、流石に困った様子を見せた。


「女性を悲しませるのは僕のポリシーに反します。簡単なプロフィールで良ければ伝えてもらえますか?」

「ありがとうございます!」


 洋介が紙にプロフィールを書き始めると、運営委員さんは次にセーラに視線を向けた。


「それから、セーラさんにも同じく要望が来ているのですが――」

「却下です」

「え?」


 思わぬところから返答が来たのだろう、運営委員さんは豆鉄砲を食らったような顔で俺を見た。


「夫が却下したと、お伝えください」


 セーラのプロフィールを見知らぬ輩に渡せるわけ無いだろう。誘拐やストーカー被害に合わないか心配で眠れなくなるじゃないか! 


 内心を悟られないよう、にっこり微笑んだつもりだったが、運営委員さんは冷や汗をかきながら何度も頷いた。


 運営委員さんがそそくさとテントを出ていくと、拡声器のスイッチが入る音がした。


『えー、皆様のご要望にお応えして彼の許可を頂き、プロフィールをご紹介することにいたしました』


 会場からはキャー!と歓声が上がる。


『お名前は洋介さん。年齢は……乙女の秘密。彼女無し。趣味はでぃーあいわい?、お住まいはエミジャ村です。是非、村へ遊びに来てください。歓迎します。とのことです』


「あんなこと言っていいのか?村にファンが殺到するぞ……」

「まぁ良いではないですか。訪れる人が増えれば、村も活性化しますし。それに徒歩で二日ですよ。女性だけでホイホイ来るとは思えません」

「確かにそうだな。いっそのこと、送迎付きで洋介の握手会でも開けばいいんじゃないか。団体で来てもらったほうが対応もしやすいし」


 冗談交じりに提案してみたが、洋介は真剣に考え始めた。


「その件については、もう少し考えさせてください」

「やる気かよ……」


 今のは極端な話だが、何か人を呼び込めるような要素があれば、村人も本来の職業に戻れるのではないだろうか。

 何か考えても良いかもしれないな。


『続いてご要望がありました彼女についてですが、誠に残念ながら彼女の旦那様のご要望により却下されました。以上です。引き続きお祭りをお楽しみください』


 アナウンスと共に会場からは、「えー!!」という低い声が沸き起こった。


「今、優越感に浸っていませんか?カイト殿」

「なっ……何を言っているんだよ。設定に優越感も何もないだろう……」

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