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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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84 凍った巨大スライムのお披露目

 日が沈み辺りが薄暗くなってきた頃、俺達は再び中央広場へ足を運んだ。


 昼間にお菓子作りの作業台があった場所には火が焚かれ、イノシシ型のモンスターであるボアが、棒につるされ何体も丸焼きにされている。

 原始時代にでもタイムスリップしたような光景だが、焼き肉の良い匂いで一気に腹が減ってくる。


 会場のあちこちには、スライムやボアの形をした色とりどりのランタンが灯っていて、日本でもなじみのお祭りの雰囲気が出ている。


 夜はお菓子作りで何度も並ぶ必要がないからか、席も大量に増えていて既に多くの人達が場所取りや、既に酒盛りを始めているテーブルもある。

 完全に出遅れたので、俺達はまたバルコニーでの食事になりそうだ。


 俺達は今、巨大スライムのお菓子があった場所で待機をしている。あの巨大なお菓子は既に皮つきの部分は完売していて、今は場所を移動して寒天部分だけを半額で販売しているようだ。

 寒天だけでも果物たっぷりでお得な為、販売場所には列が出来ているのが見える。


「それでは、そろそろ始めたいと思いますので、ご準備の方よろしくお願い致します」

「分かりました」


 運営委員さんに言われ、俺はいつでもポーチから取り出せるよう準備をした。


 村長が一歩前へ出て拡声器を口元に当てた。


『皆様!大変長らくお待たせいたしました!これより夜の部のお祭りを開催いたします!今回は誠に残念ながら巨大ボアの入手は叶いませんでしたので、今から普通のボアの丸焼きを五百リルにて販売させていただきます!』


 それを合図に、ボアの丸焼きの販売が開始され買い求める列が動きだした。


『その代わりと言ってはなんですが、今回は素晴らしいものを見せて頂く機会を得ました!こちらにいらっしゃる冒険者様三名がご提供してくれます!』


 とりあえず何か見られるという期待感からか、周りからは拍手が起きる。


『とても大きいので、慌ててこちらへ来る必要はございません!お祭りが終わるまで展示させていただきますので、どうぞ空いている時にごゆっくりとご覧ください!では、ご覧いただきましょう!本物の巨大スライムでございます!』


 町長が手を差し出す合図と共に、俺はポーチから凍った巨大スライムを取り出した。


 ドスン!とお菓子があった場所に着地した凍った巨大スライムは、その巨体と重量ゆえに木製のステージを半壊させてしまった。


「やばっ……」

「壊れちゃいましたね……」

「壊れちゃったわね……」


 三人で恐る恐る町長と運営委員さんの方を向くと、二人とも呆気にとられた様子で半壊したステージを見ている。


 しかし、この威力は会場を一気に盛り上げた。


「すっすげー!本物なんて初めて見たぞ!」「何これ!生きてるの!?」「巨大モンスターの破壊力やべー!!」「こんなのに踏みつぶされたら一溜りもないわ!」


『こっ……これぞ巨大モンスター!とてつもない破壊力ですね!このような凶悪モンスターをどのように仕留めたのか、お話を伺ってみましょう!』


 我に返って進行を再開した町長は、段取りに無かったインタビューを求めてきた。


 これは洋介が一人で倒したから、俺に拡声器を向けられても困るのだが……。

 そして、この大人数。緊張する……。


『こっ……こんばんは皆さん。こちらの巨大スライムは、こちらの彼が弓スキルで凍らせたものになります』


 洋介を紹介すると、会場からは女性たちの黄色い悲鳴が響き渡る。


「キャー!昼間の彼だわー!」「キャー!かっこいいだけじゃなくて強いなんて素敵ー!」「キャー!私と結婚してくださーい!!」


 洋介を一目近くで見ようと、あちこちから女性たちがこちらへ向かい始めた。

 正直言って、巨大スライム以上の人気だ。


 そして、セーラを目指して向かってくる輩も出てきたので、俺は一歩前へ出てセーラを隠した。


『皆様、落ち着いてください!殺到すると危険です!』


 町長が必死に静止を促すも、女性たちのボルテージは上がるばかりだ。


 巨大スライムに殺到されないよう配置されていた運営スタッフの人達が、必死に抑えるもそろそろ限界のようだ。


「このままでは危険です!皆さん、一旦事務所へ避難しましょう!」


 町長に促され、俺達は事務所と呼ばれたテントの中へ逃げ込んだ。


 中へ入ると、少し喧騒が和らぐ。


「はぁ……、洋介の人気は本当にすごいな……」


 ため息を付きながら洋介に視線を向けると、彼は頭を掻きながら照れ笑いしている。


「いやぁ、イケメンをやるのも楽ではありませんね」

「お前……嬉しそうなのが顔に出ているぞ」

「あ、バレました?」


 俺ならあそこまでの人気は逆に恐ろしくなるが、洋介は望むところらしい。


「申し訳ありませんが、ほとぼりが冷めるまで皆さんには、こちらで待機をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 テントへ入ってきた運営委員さんが申し訳なさそうにそう告げる。


「はい、騒ぎになってしまい申し訳ありません」

「とんでもありません!巨大スライムには皆喜んでいましたよ!今は、子供たちが大勢集まっています」


 洋介の人気には驚いたが、それ以外は成功と言ってよい結果になったようで一安心した。

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