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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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83 巨大スライムのお菓子を食す

 一時間ほど並んだろうか。俺達はやっとお菓子を販売している場所までたどり着いた。


「三皿と、注文していた分もお願いします」

「はい!お預かりいたします!お隣の受け渡し場所でお会計をお願い致します!」


 皿を三枚と引き換え札を出すと、後ろで作業している人達がせわしなく準備を始めた。

 既に切り分けられたお菓子が、山積みになっている場所から一つずつ皿に乗せると、次に何やらトッピングを載せているのが見える。


「わぁ、可愛いわ!」


 出来上がった皿が目の前の台に置かれると、セーラは嬉しそうにそれを見つめた。

 寒天の上に生クリームが乗っていて、そこにスライムの形をしたクッキーが挿してある。実にセーラが喜びそうなお菓子だ。


 次に運ばれてきた大鍋は、相当重いようで三人がかりで台の上に載せられた。


「大量注文用のクッキーは別料金となっていますがどうなさいますか?十枚単位での販売となっております」

「それじゃ四十枚ください」


 ちなみに、村の人口は俺達五人を合わせて三十三人だ。余った分は誰かしら消費してくれるだろう。


「ありがとうございます!お会計、大金貨四枚と大銀貨五枚になります!」


 会計係が元気よく金額を提示すると、周りの人達がざわっとこちらを向いた。

 大鍋でこんなに買うなんて「お前どんだけお菓子好きだよ!」と思われているに違いない。


 この町へ来てから大量買いばかりしていたが、こんなに注目を浴びたのは初めてなので急に恥ずかしくなってきた。


「こっ……これで、村の皆も喜ぶな!セーラ」

「ふふ、そうね。皆でスライムのお菓子パーティーを開きましょう」


 反射的に言い訳のような発言をしてしまったが、セーラは優しく微笑んでくれた。っというか、セーラは本気でお菓子パーティーを開きたいと思っている気がする。

 何はともあれ、周りの人達は納得したようすで俺達から視線を外した。


 ほっと息を吐きながら会計を済ませポーチにお菓子を収納した。




 再び宿屋へ戻った俺達は、バルコニーで巨大スライムのお菓子を食する事にした。


 皿いっぱいに盛られた寒天には果物がどっさりと入っていて、横には巨大スライムの皮が付いている。

 皮は普通のスライムとは違い厚さが五センチほどで、これだけでも程よく腹が満たされそうだ。

 寒天の上には先ほど見た通り、生クリームとスライム型クッキーがのっている。


「皮はスプーンやフォークでは切れそうにないな。上品にたべるならナイフも必要だが」

「僕達は冒険者ですよ!かぶりつけばいいと思います!」

「ふふ、そうね。そのほうが巨大な物を食べている気分になれるわ」

「よし!それじゃ、同時にかぶりつこう!」


 俺達はスライムの皮をフォークで突き刺すと、軽く持ち上げた。


「俺達が狩ってここまで運んできた巨大スライムの皮が、こうして巨大なお菓子となって完成された。初めて受けた大仕事の成果を、存分に味わおうじゃないか!」

「いきなり大仕事感を出してきましたね。僕達そこまでの意識を持ってやっていましたっけ?」

「いや、何か挨拶しなきゃなーと思って、思い付いただけだ」

「ふふ、いいじゃない。お菓子が完成するまでとても楽しかったわ」

「それには同意ですね。何だかんだでここまで楽しい道のりでした」

「そうだな、クエストみたいで楽しかったよ」


 この世界にクエストがあるのか分からないが、仕事を請け負って冒険者らしく行動するのは、ゲームの中のようで楽しかった。

 それは二人も同じだったようだ。


「よし、それじゃ食べようか!いただきまーす!」

「「いただきまーす!」」


 俺達は冒険者らしく豪快に、巨大スライムの皮にかぶりついた。


 普通のスライムの皮とは桁外れの、弾力に驚いた。

 普通の皮をプリプリの食感と表現するならば、これはブリブリの食感と表現するのが相応しい。


「驚くほど食べ応えがありますね!」

「そうだな!この食感は癖になりそうだ」

「こんなに厚いのに、しっかり味も染みていて美味しいわ!」


 次に寒天の部分を食す。

 果物は、イチゴ、ブルーベリー、ブドウ、メロン、桃、さくらんぼ、木苺と、ぱっと見ただけでもこんなに入っている。さすがに南国の果物は無いようだがそれでも、かなりの種類だ。


 桃と寒天をすくって口に入れると、桃のとろけそうな甘さと寒天の主張しすぎないひんやり食感が口の中いっぱいに広がる。


「どれもめちゃくちゃ美味いな!」

「ん~!とっても美味しいわ!」

「皮と一緒に食べると、また違う味わいを楽しめます!」

「本当ね、食感がとても楽しいわ」


 セーラも洋介も満足そうに食べているのを見ると、この依頼を受けて良かったと改めて思う。

 断ることも出来たし、荷馬車だけを貸すことも出来たが、村に引きこもったままでは今日のような体験は出来なかった。


 異世界へ転生され何も分からず不安もあったが、この三人ならばいつまでも楽しくやっていけるのではないだろうか。

 たまにこんな依頼を受けたりして、後はのんびり暮らせたら俺は満足だし幸せだ。


 ふとそんな事を思いながら、クエスト報酬ともいえる、楽しい午後のひと時を過ごした。

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