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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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80 巨大スライムのお菓子の完成

 人の隙間を縫って俺達は、巨大スライムのお菓子が見える辺りまでやって来た。


「セーラ見えるか?」

「えぇ、ここからならよく見えるわ」


 良かったと頷いてからお菓子に視線を移動すると、設置されていた移動式の階段は既に撤去されていて、三か所の(やぐら)に男たちが登ってきた。


 男たちが掛け声と共に、巨大スライムの皮を吊るしていた紐を引っ張り始めると、会場からも掛け声が上がる。


「よいしょ!よいしょ!」「がんばれー!」「もう一息だー!」


 会場の熱気と共に、徐々に巨大スライムの皮が巾着のように閉じられていく。


「観客との一体感が半端ないな」

「上手く閉じられるか、見ているだけで体に力が入ってしまうわ」

「確かに、頑張れ!って声を上げたくなる気持ちは分かるな」

「それにしても、あの皮は途中でちぎれたりしないんですかね?」

「あれだけ引っ張ったらちぎれそうなものだが、特殊な加工でもしてあるのかもな」


 そう話している間にも、巨大スライムの皮は完全に上の方で閉じられようとしている。

 最後のひと引きを終えると、会場から盛大な拍手と歓声が上がった。


 上が巾着のように閉じられた巨大スライムのお菓子は、本物の巨大スライムのような形となって完成された。

 水色に透き通った皮の中には、沢山の果物が浮いているのが見える。


『皆様のご協力のおかげもあり、無事に今年も巨大スライムのお菓子が完成いたしました!これから二時間ほど冷やし、午後一時から入刀式を行う予定でございます!その後、一皿につき千リルで販売致しますので、どうぞ年に一度の特別なお菓子をご賞味ください!』


 拡声器の声で案内がされると、周りにいた人たちは満足した表情で解散し始めた。


「今年も絶対に食べましょうね!」「俺、この日の為に貯金したんだぜ!」「またあの食感を楽しめるなんて楽しみだわ!」


 皆、お菓子を食べるのが楽しみなようで、二時間後が待ち遠しそうに会話している。


「さすに良い材料ばかり使っていると値段も良いですが、皆さんは楽しみなようですね」

「だな。村人の賃金を聞いた限りだと、かなりの贅沢品に思える」


 大人に渡すのは気を悪くするかもしれないが、せめてジェシーちゃんにお祭りのお小遣いでも渡せばよかったと、今更ながら後悔する。


「そうだ!村へのお土産として、大量購入できないか聞いてみようかな」

「それは良い考えね。村の巨大スライムを使っているんですもの、皆きっと喜ぶわ!」

「いいですね!あそこに昨日の運営委員さんがいるので、聞いてみましょう」


 残りのかき氷を食べ終えると早速、作業台の近くで誰かと話をしていた運営委員さんの元へ向かった。


「やぁ、皆さん!こんにちは!ちょうど皆さんの話をしていたんですよ!」


 俺達に気が付いた運営委員さんは、笑顔で俺達を迎えてくれた。彼の隣にいたのは、お菓子作りの時に階段上で挨拶をしていた人だ。


「町長、この方たちですよ!夜の部の、巨大スライムを提供してくれるのは!」

「おお!そうでしたか皆様、今回は本当にありがとうございます!おかげでお祭りも滞りなく進みそうでほっとしていたところですよ」

「少しでもお役に立てたなら、良かったです」


 町長は俺達一人ずつに握手を求めてきた。

 俺達は軽い気持ちで提案したが、思ったより喜ばれていたようだ。


「ところで、何か御用でしたか?」


 運営委員さんの質問に頷く。


「実は、村人に巨大スライムのお菓子を食べさせたいと思っているのですが、大量購入する事は可能かと思いまして」

「それでしたら、入れ物さえご用意いただければ、そちらで注文できますよ」


 指さされた場所に視線を向けると、作業台で注文を受け付けているようで何人か並んでいる。

 運営委員さんにお礼を言って、俺達はその列に並んだ。


「セーラ、ちょうどよさそうな入れ物はありそうか?」

「そうねぇ……、大鍋でいいかしら?」


 セーラがポーチから取り出したのは、ラーメン屋でスープを作るのに使いそうな大鍋だった。


「それくらいあれば良いと思います」

「そうだな、これに入れてもらおう」


 セーラから大鍋を受け取ると、ちょうど俺達の順番になった。


「十キロから注文できますが」

「この鍋に入るだけ欲しいのですが、可能ですか?」

「鍋に入れてから重さを測ってお値段を決めてもよろしいですか?」

「はい、それで構いません」

「承りました。こちらが引き換え札になります。一般購入と同じ列に並んでご購入ください」

「分かりました。よろしくお願いします」


 引き換え札を受け取り後ろを振り返ると、二人が消えていることに気が付いた。


 ――あれ?どこ行った?


 辺りを見回すと、巨大スライムのお菓子が見える辺りに二人が立っているのが見えた。同じ色の髪の毛が並んでいるから、割と見つけやすい。


 二人の方へ歩いていくとセーラが振り返り、俺を見つけると嬉しそうに手を振った。


「カイト、こっちよー!」


 俺を見て喜ぶなんて今までの俺なら信じられなかっただろうが紛れも無く今、現実に起こっている事実だ。


 今、俺が何を思っているか丸わかりだと思うので、割愛することにする。

 いや、やはり言わせてくれ。


 ――セーラ可愛すぎるだろー!!

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