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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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75 セーラ再び

「カンパーイ!!!!!」


 明日も来られる方は一緒に飲みませんかと、昨日の帰りに誘っておいたが、皆来てくれたので今日も大所帯の飲み会だ。

 昨日と同じテーブルを占拠して、今日もマリさんがこのテーブルの専属ウェイトレスをしてくれるらしい。昨日はそこそこの量を注文したので、店主も今日は快く専属にしてくれたらしい。


 皆がジョッキを傾けている中、セーラと洋介はビアグラスを傾けた。


 二人にジョッキは多すぎると判断した俺は、今日は量を調節するため二人にはそれを選ばせてみた。「今日はそれ一杯だけな」という注意事項を添えて。


 ペース配分を考えてだろうか、一口だけ飲んだ二人だが思っていたより不満は無いようだ。


「一口でもふわっと体が温かくなるわ」

「そうですね、一口だけも良い気分になってきました。今までが飲みすぎだったのかもしれません」


 一口で良い気分になれるなんて、なんと経済的な二人なんだ。


「ところで姉上、見慣れない洋服を着ていますね?」

「ふふ、カイトがプレゼントしてくれたのよ。可愛いお洋服でしょ」

「へぇ~カイト殿が。とても姉上が好みそうな洋服ですね」


 ニヤニヤしながら、俺に視線を向けないでくれないか。洋介くん。


「たまたま通りかかった店にあったんだよ。新規アイテムは即購入が鉄則だろ?」

「ゲームの習慣が抜けていませんね……。僕はてっきり特別な事でもあったのかと思いましたよ」

「特別な事……」


 思わずセーラと顔を見合わせる。

 セーラの頬が赤く染まったが、俺の顔も今は同じ状態な気がする。


「ほうほう、詳しい事は村に帰ってからでも詳しく聞かせていただくとしましょう」

「何を言うのよ洋介、何もないわよ……」

「そうだぞ!この服は純粋にプレゼントしたかっただけだ……」


 慌てて言い訳をしていると、村人がすかさず口をはさんでくる。


「お!カイト様とセーラ様は今日もラブラブですかぁー!」「いいわねぇ、若いって羨ましいわぁ!」「俺もあの頃に戻りてー!!」


 中身は皆さんとさほど変わらないですよと、言えたらいいのに。

 見た目年齢は十歳以上離れているように見える俺達は、皆から見たら初々しく見えるのだろう。


「い……いえいえ、今日の俺達は至って普通ですよ。なぁ、セーラ」

「そうよ……、今日はまだ酔っていないもの」

「昨日のセーラ様可愛かったわぁ!」「そうそう、胸がキュンっとしちゃったわ!」「俺もセーラ様みたいな子に出会いたい!」


 その指摘はちょっとやめてほしいのですが!やっと落ち着いたセーラがまた大変な事に……。


 心配しながらセーラに視線を移すと、彼女は真っ赤な果実と化していた。


「セ……セーラさん、少し散歩にでも行きましょうか?」


 外の空気を吸えば落ち着くかと思って提案してみたが、これは逆効果だったようだ。

 セーラは俺の顔を見るなり、頭から湯気でも出て来そうな状態になってしまった。


 こんなに意識されると、セーラの中で俺が超美化されていないか、少し心配になってくる……。


 仕方がないのでここは洋介に頼もうと思い、彼に視線を移そうと思ったその時。


「え……?」


 セーラは何を思ったか、俺のジョッキを掴むと一気にそれを飲み干してしまった。

 その動作があまりにも素早くて、俺には止める暇も与えられなかった。


「おお!セーラ様いい飲みっぷり!」「今日も可愛いセーラ様登場か!?」

「ちょっとセーラさん!何やってるんですかーぁ!!」


 そう叫んだ時には既に、セーラはジョッキを空にしていて。それを床に落とすと、とろんとした目に変貌した。


「かいとぉ~!」


 セーラは倒れ込むように、俺の胴に抱きついた。


「昨日より酔っている……。どうしてこうなった……」


 今日はビアグラスで量を調節したはずなのに、俺のジョッキを奪い取るなんて反則だろ!


「ほう、これはひどいですね」

「冷静に観察していないで、どうにかしてくれよ弟」

「スキンシップが激しい姉上には初めて出会いましたので、対処法が分かりません」

「そうなのか……このままでは明日のセーラが心配だ」

「明日とは?」

「セーラには、酔っている間の記憶があったらしいんだ」

「そうなんですか。これを思い出した明日の姉上は、恥ずかしくて失踪するかもしれません」


 それは困る。これ以上セーラが恥ずかしく思う事態になる前に、対策をせねば。

 さっさと宿屋に帰るのが一番だが、せっかく皆を誘ったのにそれも申し訳ない。

 何か、良い策は――。


「そうだ、ヒールをさせよう!」

「ヒールで酔いが醒めるのですか?」

「俺の乗り物酔いは治ったから、酒の酔いにも効くかもしれない」


 セーラを見下ろすと彼女はすっかり、ネコ科の人間になっていた。

 俺の胴に顔をすりすりさせている彼女に、声を掛けてみる。


「セーラ、俺が分かるか?」

「かいとぉ~?」

「当たりだ。セーラにお願いがあるんだ。杖を出してヒールをかけてみてくれないか?」

「ひーるぅ?」

「そうだ、セーラはヒールが得意だろう?見せてくれないか?」

「わかったあ、まかせてぇ!」


 セーラは鼻歌交じりに、ポーチから何かを取り出した。


「それは、杖っぽいけど傘だな」


 傘の形をした杖もあるけど、セーラが出したのは傘の形の傘だ。

 セーラは「あれぇ?」と首を傾げながら、また何かを取り出した。


「それは杖の形だが、キャンディだな」

「ふふ~、これあじぇしーちゃんにあげるあ~!」


 杖型キャンディを渡されたちびっ子ジェシーちゃんは大喜びだ。

 セーラは気をよくして「つぎはぁ~」と何かを探し始めた。


 それから十分ほど経過しただろうか。

 気が付けば俺とセーラは、完全に二人の世界へと入っていた。


「これあ、なんれしょ~!」

「うーん、サマーイベントの時のうちわか?」

「ぶ~、おまつりいべんとのときの、うちわれしたぁ~」

「あー!柄が違うのかー!」


 アイテム当てクイズ大会と言う名の。

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