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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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74 新規アイテムのお土産

「あ……、そういえばセーラにお土産があったんだ」


 テーブルの上を片付けるため、残ったパンをポーチに収納しながら思い出した。

 食後に渡そうと思っていたが、話し込んでしまったのですっかり頭から抜けていた。


「お土産?」

「帰り道で新規アイテムを見つけてさ、セーラが好きそうだったから買っておいたんだ」


 ゲーム内で露店でも回ってきたかのような口調で話しながら、マジックポーチに手を掛けたが、そこで俺は自分の行動に疑問を感じた。


 ここはゲーム内ではない。


 告白の約束はしたが、俺達はまだ付き合ってもいないのに、そんな男から大量に服をプレゼントされたら気持ち悪くないか?百年の恋も冷めてしまわないか!?


「あのう……セーラさん……。俺から服をプレゼントしても嫌じゃないですか?」

「え……?あの……、カイトにプレゼントしてもらえるなんて、とても嬉しいわ……」


 頬を染めて嬉しそうな反応を見せたセーラ。どうやら、嫌ではないようだ。


「良かった……。店内の服はどれもセーラが持っているものばかりだったんだが、新作コーナーって場所があってさ」


 ソファーの上に購入した服を積み重ねていく。数えながらポーチから出していくと三十二着あった。


 ――うん、買いすぎた!


 やはり引かれるかなと思いながらセーラに視線を向けると、彼女は口元に手を当てながらクスクスと笑い始めた。


「確かに、新規アイテムばかりね。こんなに沢山ありがとうカイト、嬉しいわ!着替えてみてもいいかしら?」

「あぁ、もちろんだよ!」


 どうやら喜んでくれたようで、ほっと一安心した。


 しばらくして寝室から出てきたセーラは、ショーウインドーに飾られていたフリフリのワンピースに着替えていた。


「カイト、どうかしら?可愛いお洋服ばかりなので、どれに着替えようか迷ってしまったわ」

「あ……うん。めちゃくちゃ可愛いよ」

「本当?ありがとう、とても嬉しいわ」


 俺はこのワンピースに惹かれて、あの店へ入って新作コーナーを見つけた。新規アイテムという認識で大人買いしたので一着ずつをじっくりとは見ていない。

 なので唯一、俺が選んだと言っても良い服をセーラも選んでくれて、なんだかとても嬉しくなった。


「それじゃ出かけようか。午後の広場は混んでいるし、はぐれない様に手を繋いでもいいかな……?」

「そうね、はぐれたら大変だわ……」




 宿屋を出ると、中央広場は景色が一変していた。


「お祭りの準備が始まったのか、すごい数の人だな」

「露店も沢山出るのね。賑やかになりそうだわ」


 広場をぐるっと囲むように露店の設営が始まっていて、あちこちで人が動き回り、金槌の音が甲高く聞こえてくる。


 中央の噴水横にも何かを設営しているが、これはきっと巨大スライムのお菓子作りをする為の場所ではないかと思う。

 大きな鍋や広い作業台のようなものもあり、何に使うのか分からないが、大掛かりな(やぐら)のようなものもいくつかある。これは毎年使っているのか移動式のようだ。


 作業の邪魔にならないよう気を付けながら中央広場を横切っていると、露店の設営をしている人たちの中から手を振る二人が目に入った。


「おーい!カイト様ー!セーラ様ー!」「こんにちはー!」


 村長の息子ナッシュさんと、レオくんの父親リオさんだ。


「こんにちは。今日は、設営の仕事ですか?」

「はい!明日はここの店番もするんで、良かったら遊びに来てください!」

「俺は設営だけです。明日はララとお祭りを見学する予定なんで」

「チッ!お祭りに行く相手がいないのは俺だけかよ……」


 恨めしそうに俺達とリオさんを交互に見るナッシュさん。


 そういえば、村の恋愛事情はどうなっているんだろう。確か独身が五人いるはず。


「他の人達も相手はいるんですか?」

「独身は男が三人、女が二人。自然と二組できて一人余る計算です……。カイト様ぁー!誰かいい子いませんかぁ??」


 情けない声を上げながら俺にすがりついて来るナッシュさん。よほど困っているようだ。


「うーん……、女性なら屋敷にメイドが一人いますけど……」


 ただ、エミリーはまだまだ色気より食い気のような気がする。


「村に帰ったら是非、紹介してください!!」

「良いですよ。お菓子を上げると喜ぶと思います」

「お菓子ですね!バリバリ働いてお菓子代を稼ぐぞ!」


 ナッシュさんは気合が入ったようで、腕をブンブン回しながら設営作業に戻って行った。


 二人と別れた俺とセーラは、彼女が今朝行きたいと言っていた手芸用品店へ向かった。

 場所は食料品店のすぐ近くにあった。午前中はそれどころでは無かったので、全く目に入っていなかったようだ。


 中に入ると、壁の棚には沢山の生地がグラデーションのように並べられていて、とても賑やかな雰囲気の店内だ。

 手芸人口が多いのか、店内はとても広くて種類も豊富だ。服とかは買うより作る人が多いのかもしれない。


 セーラは店に入るなり「わぁ!」と目を輝かせて、商品の元へ駆け寄った。


「これなら、欲しい材料は何でも揃いそうだな」


 生産スキルでも手芸の材料は作れるが、素材集めの手間暇を考えると、買ってしまったほうが早い物もたくさんある。

 セーラは意気揚々と材料を選んでいくが、黒い生地に黒い糸、黒いボタンや黒いビーズ。何故か黒い物ばかり集めている。


「何を作る予定なんだ?」

「あの……、今はまだ内緒よ……」


 セーラは頬を染めながら、商品に視線を移す。


 この反応……。それに、これだけ黒い物ばかり集められると、俺でも察しが付いてしまう。


「そうか。良い物が出来るといいな」


 気が付かないフリをしてみたが、顔が緩んでいないか心配だ。

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