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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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73 二人の約束

 突然の謝罪に、俺はセーラの意図が分からず呆然としていると、彼女は頭を下げたまま言葉を続けた。


「私……本当は全部、覚えているの……」

「……覚えているって?」

「昨日の酒場での出来事は、全部覚えているの……。もちろん、起きていた時の部分だけだけれど。今朝は洋介がいたから恥ずかしくて言い出せなくて……、その後に何度か言おうと思ったのだけれどなかなか言い出せなくて。カイトには要らぬ心配をかけてしまったわ。本当にごめんなさい!」


 そういえばセーラは何度も昨日の事を話そうとしていたが、タイミングが悪かったり俺が勝手に具合が悪いと思い込んでいて話を聞けていなかった。


「いや……俺も、もっと落ち着いて話を聞けば良かったよ。ごめんなセーラ、頭を上げてくれよ」


 静かに頭を上げたセーラは、恥ずかしさより罪悪感が勝っているのか、今にも泣きだしそうだ。


「もう気にするなよ。具合が悪いんじゃなくて良かった。セーラの顔があまりにも赤いから俺はてっきり……」


 てっきり、熱があるのだと思っていたが。


 セーラは違う理由で顔が赤くなっていたんだな……。


 ――あれ?どうしてセーラは顔が赤いんだ?


 昨日のセーラは酔っ払い過ぎたせいで、俺の事をセーラの物だとか、俺の事が大好きだと言ったのが恥ずかしかったって事は理解できる。


 セーラは酔っていたから、どのような気持ちでその発言をしたのかまでは、あまり期待していなかった。

 洋介と俺を取り合っていたのは、親戚のお兄ちゃんとかを取り合っているような感覚だと思っていたし、大好きにも色々ある。仲間として好きとか、友達として好きとか、まさかとは思うが中二な容姿が好きとか。色々だ。


 俺はどんな意味だとしても嬉しかった。


 慰めの意味で好きだと言われたことはあるが、はにかむように大好きだと言われたのは初めてだったから、それだけで俺にとってはセーラに気持ちを伝えるための大きな勇気に繋がった。


 二度目の告白も伝わらなかった事に関しては、酔った勢いだったから仕方がないと俺の中で処理したはずだったのに……。


 セーラはそれを覚えていて、頬を染めながら俺にその事実を何度も伝えようとしていた。


「セ……セーラさん、確認なんですけど……、昨日の発言は酔っ払いの戯言とか冗談ではなく、本心だったのでしょうか……?」


 セーラはこくりと頷くと、恥ずかしそうに俺を見つめる。


 ――俺を見て、照れている……だと?


 どうして俺は、今朝からこの視線に気が付かなかったんだ?セーラが頬を染めていた対象は、パンケーキでは無くて俺だったんだ……!


 つまり、昨日のセーラの発言については、彼女自身も告白だったと認識しているという事でいいんだよな!?


「っということは、俺達は両想――」

「まっ……待って、カイト!」

「はいっ!!」


 核心に触れようとしたところで止められ、俺は思わず背筋を伸ばす。


「カイトにはもっと、ちゃんと伝えたい気持ちがあるの。今はまだ心の準備ができなくて……。村へ帰ってから改めて聞いて欲しいの。その時に返事を貰えないかしら……」


 彼女は自分の両手を心臓の辺りで重ねながら微笑んだ。それはまるで、目に見えない大切な何かを抱えているような仕草だ。


 そんなセーラを見て、俺の焦りは一気に消えた。


 俺だって十六年間も想ってきたのに、こんな答え合わせみたいな気持ちの確かめ合いでは、一生後悔する。


「わかった。俺も……セーラに伝えたい気持ちがあるんだ。その時に聞いてくれるか?」

「うん……」


 告白の約束をするなんて俺達くらいなものだろうが、これくらいのクッションが無ければ落ち着いて気持ちを伝えられそうにない。

 セーラもきっとそういう心の準備が欲しいのではないかと思う。


 俺達は似た者同士だ。


 これでもかと言うほど石橋を叩いてからでなくては、お互いの距離を縮められない。うっかり叩くのを忘れて一歩踏み出そうものなら、すぐに怖くなって振り出しへ戻ってしまう。


 なので、そうならない為に。そして村へ帰るまでの心の安寧を得るためにも、俺達の間にある石橋をもう一叩きさせてもらいたい。


「一応、確認してもいいかな……、俺は楽しみにしていていいんだよな?」

「うん……私も、楽しみにしているわ」

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