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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

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66 出稼ぎに来ている村人たち

 酒の体質を確認しながらと言いつつも、脳は実に正直だ。

 アルコールを早くよこせと腕に、口に、喉に指令を出しまくっている。

 俺は脳にされるがまま、ジョッキを傾けエールを一気に流し込むと、ゴクゴクと喉が歓喜の音を鳴らしたてた。


 一気飲みなど、決して俺の意志ではない。俺の脳に、俺は操られているだけだ。


「ぷはぁ!エールめちゃくちゃ美味い!!」

「わお!カイト様、行ける口ですね!今、おかわりをお持ちします!」

「ありがとうござます」


 俺は余韻を楽しむように目を閉じた。

 久しぶりのアルコールは、俺の高揚を表現するように体内から熱を帯びてくる。


 ――はあぁぁ、幸せだ。


「エール美味しいわね」

「そうですね、とても味わい深いです」

「二人とも大丈夫そうか?」

「えぇ、なんともないみたい。これならたくさん飲めそうだわ」

「僕にもついに、酒豪の時代が来たようです」

「そうか、だがあまり飲みすぎるなよ。食べ物もちゃんと食べないと、空酒は体に悪い――」


 と、テーブルを見回すと飲み物しか見当たらない。まだ料理は頼んでいなかったようだ。

 今までジョッキしか目に入っていなかったとは恥ずかしい。


「皆さん、好きなものを頼んでください。今日は俺がご馳走しますんで」

「しょっしゃー!数年ぶりの外食だ!」「カイト様、太っ腹―!」「ありがとうございま~す!」


 今日はご馳走すると事前に伝えてあったのに、わざわざ俺たちが来るのを待っていてくれたようだ。


 メニューが配られると、ちびっ子女子が身を乗り出して手を上げた。


「カイト様!わたし、お子様ランチが食べたいわ!」

「あぁ、お子様ランチでもデザートでも好きなのを頼んで良いよ」

「きゃー!食べていいって、ママ!」

「良かったわね。ありがとうございます、カイト様」


 この世界でもお子様ランチとは、子供心をくすぐる魅惑の料理のようだ。


 料理を頼み終えてから、改めて自己紹介をすることにした。

 十人もいると名前を覚えるのが大変そうだが、俺の従業員になるんだから頑張って覚えたいと思う。


 まずは既に顔見知りである、村長の息子ナッシュさん。


 レオくんの両親、リオさんとララさん。


 畜産農家の息子アンディさんと、奥さんのカーラさん。そして先ほどのちびっ子ジェシーちゃん。


 大工の息子トマスさんと、娘ニーナさん。


 肝っ玉母さんの息子ベンさん。


 果樹の心配をしていた気弱お爺さんの娘マリさん。彼女がここのウェイトレスだ。


 ほかにも兄弟がいる人たちもいるようだが、王都やここより大きな町に住んでいるらしい。


 仕事内容を説明すると、村で働けるならなんでもやると、皆もナッシュさんやリオさんと同じ返答をしてくれた。

 しばらくはあまり希望を聞いてやれないが、ゆくゆくは本人たちが望む仕事に着いてもらえたら良いと思っている。

 だが、それはずっと先になるだろう。

 色々な職業を作るには人口を増やす必要がある。


 皆が村へ帰る時期については、一人を除き他の九名は俺たちと一緒に帰れることになった。ちょうどお祭り後は仕事も減り気味になるらし。


 だがその帰れない一人が、技術職なのが痛い。


「あいにく俺は現場監督なもので、今改修している建物の工事が終わってからでないと帰れません」

「そうですか、トマスさんのお父さんも張り切っていたので。残念ですが仕方がないですね」

「手紙からも、その様子が目に浮かぶ内容でしたよ。でも、大丈夫です。こいつもいるんで」


 バシッとトマスさんに背中を叩かれたのに動じない彼女は、確かトマスさんの妹でニーナさんだ。


「ニーナさんも大工仕事ができるんですか?」

「もちろんよ!うちは大工の家系だから、私も幼い頃から手伝いをしていたし、今日も兄ちゃんの現場で働いていたわ!」

「それは頼もしい。ですが、ニーナさんを帰してしまったらトマスさんが困るのでは?」

「さすがに二人とも帰らないんじゃ、親父が拗ねますから。これも親孝行のうちですよ」


 親父を頼むぞと話しているこの兄妹、とても仲が良さそうだ。


 全体的にエミジャ村の人たちは、人間関係が良好でおおらかな性格の人が多いように思える。

 そういう土地柄なのか、それとも最後に残った八家族がそうだっただけなのか。

 どちらにせよ、人間関係が良好なのはありがたい。


 村でのこれからに皆、期待をしながら楽しく飲み食いしているのを見ると、俺も頑張らなきゃなと思えてきた。


 だが……。今はそれよりも、この状況をどうにかしたい。


「もぉ~~洋介はカイトにくっつかないでぇ~」

「なんでだよぉ~姉さんだけずるいじゃないかぁ~姉さんこそ離れてよぉ~」

「いやよぉ~カイトは私のなんだからぁ~」

「俺だってカイトさんの弟なのにぃ~」


 ――俺ってセーラさんのだったんですか。嬉しいけど初耳だなー……。


 俺を挟んで二人は今、超スローモーションのネコパンチバトルを繰り広げているが、相手の体に命中する様子は見受けられない。


 俺は既に五杯目のエールを飲み終える頃だが、セーラと洋介はまだ一杯目のジョッキが空いていないのにこの状態。


 ――たくさん飲めるんじゃなかったのかよ!酒豪どこ行った!

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