表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第二章 イーサ町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/173

59 ムーア商会

 事情は把握したが、これは彼らに任せるより俺たちの方が解決できそうな気がする。


「わかりました。俺たちちょうど商会にも用事があったので、様子を見てきますよ。リオさんは商会に顔を知られているのですか?」

「いえ、妻は二か月前に商会で働き始めたので、知っている人はいないと思います」

「ではリオさんは、これから俺たちと一緒に来てもらえませんか?探そうにも俺たちではララさんの顔がわかりませんので」

「わかりました、どうぞよろしくお願いします!」


 深々と頭を下げているリオさんの横で、ナッシュさんは拳を握りしめて俺を見た。


「俺もなにか、できる事はありませんか!」

「そうだな……。もし手間でなければ、手紙をほかの人たちに届けてもらえませんか?今日中に全員へ渡したいと思っていたのですが、商会へ行くとなると時間が足りないかもしれません」

「それくらいお安い御用です!夕方までには配り終えますよ!」

「それから皆で集まることは可能でしょうか。できれば村へ帰る前に顔合わせがてら、説明をしたいのですが」

「酒場で働いている一人を除けば、夜には皆仕事が終わると思います」

「それでは、その人が働いている酒場で親睦会でもしませんか?ご馳走しますよ」


 それを言ったと同時に、ナッシュさんの瞳が輝いたように見えた。


「お任せください!皆集めて連れて行きますんで!やほ~い、久しぶりの酒だ~!俺、早速行ってきますね!リオ、後は頑張れよ!」


 手紙を受け取ったナッシュさんは、疾風の如く部屋を飛び出していった。


 わかるよナッシュさん、俺もこの日をどんなに待ちわびたことか。後、数時間で酒が飲める!


 そのためにも、ララさんの件は速やかに解決せねば。


「すみません、ナッシュのやつ……。ああ見えて、皆のまとめ役なんで役目は果たすと思います……」

「大いに期待しておきます」


 村長と性格は随分と違うようだがさすがは村長の息子なだけあり、皆の世話を焼くのは得意なようだ。




 リオさんの案内で向かった商会は町の南東、中央広場の裏側に大きな建物を所有していた。

 一階は馬車ごと入れる商談場所のようで、かつてはそこにずらりと馬車が並んでいたのだろうが、今は三台ほど止っているだけだ。


 ゲーム内ではアイテムは雑貨屋などのNPCに売るか、自分で露店を開いて売る方法しかなかったので商会はなかったが、村長曰くこの世界では商会に売りにいくものらしい。薬草を売るため町に薬屋はあるかと尋ねた時に、そういう回答をもらった。


 巨大スライムの皮については利益が多くなるよう、お菓子屋が気を利かせて直接頼んでくれているらしい。


「とりあえず本来の目的を果たそうか。そのついでにさりげなく聞き出してみよう」


 三人にそう告げると、三人とも気合の入った表情で頷いてくれた。


 馬車が止っていない所に適当に入って、暇そうにしている商会の人に話しかけてみる。


「すみません、ここの商会を利用するのは初めてなのですが、薬草とスライムの皮を売りたいと思いまして」

「こっ、これはこれは、よくおいでくださいました!奥の商談室へどうぞ!」


 他の人はこの場で商談しているようなのに、なんだろうこの態度。

 またセーラが間違われているのだろうかと思いながらも、案内された通り商談室へ向かう。


「ただいま、会長を連れて参りますのでお待ちください!」


 案内してくれた人が出て行くのを見送りながら、洋介が口を開いた。


「なぜ、会長に会わせるのでしょうか」

「俺たちと馬車で来ていた人たちで、何が違うのだろう……」

「まさかもう、こちらの目的が知られてしまっているわけではないわよね?」


 三人それぞれ疑問を口にしていると、リオさんが遠慮がちに手を上げた。


「あのう……、きっと皆様の身なりで判断されたのだと思います……」

「俺たちの?」


 そう聞き返すと同時に部屋のドアが勢いよく開いて、初老の男性が腹を揺らしながら部屋へ入ってきた。

 俺も転生前は腹を気にする毎日だったが、あんなにひどくはなかったと言っておきたい。


「お客様にお茶もお出していないじゃないか!さっさとお出ししろ!」

「もっ申し訳ありません!ただいますぐに!」


 再び案内してくれた人が慌てて部屋を出ていくのと入れ替わりに、リオさんよりも少し若そうな男性が部屋に入ってきた。

 会長はその男性にも「遅いぞ!」と叱責してから、やっと俺たちに視線を移した。


「手際の悪い者たちばかりで申し訳ありません!私はムーア商会の会長ジェイス・ムーアと申します。こちらは息子のバレットです。どうぞよろしくお願い致します」

「初めまして、俺は冒険者のカイトと申します。こちらの三人は旅の仲間です」


 商談に同席させるのだから、この人が跡取り息子と考えるべきだろう。会長とはあまり似ていない、遊び人という風貌だ。


 お互いに名乗り合ってから席に座り直すと、会長は満面の笑みで俺たちを見た。丸餅と表現するのがしっくりくる顔だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ