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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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50 ターキー祭り

 各家に三羽ずつ配れるようターキーを狩り終えた俺達は、一度村へ戻り解体作業を村人にお願いした。

 それからいつものようにダンジョンへ行って、レベル上げがてらスライムの皮集めをし、村へ戻る頃には辺りは薄暗くなっていた。


 村の中央広場へ行くと村人全員がいるのか、とても賑わっているのが見えた。

 焚火が設置され、網の上には俺達が狩ってきたと思われるターキーが焼かれていて、肉汁が滴り落ちるたびに焚火が勢いよく燃え上がっている。

 それを囲うようにあちこちにテーブルと椅子が運び込まれていて、テーブルの上には灯りと共に、村人が作ったであろう野菜料理が並べられていて、完全にパーティー会場のような状態になっている。

 いや、パーティーというよりは、祭り?ターキー食べ放題祭りと言うべきか。


「皆様お帰りなさいませ!お待ちしておりましたよ、どうぞこちらへ!」


 村人が俺達に気が付き、席に案内してくれる。


「皆さん随分と楽しそうですね」

「そりゃ、久しぶりのお肉ですから!それに、イーサ町でお祭りがある時期は村でもささやかながら、皆で集まって飲み食いするんですよ!」

「そうだったんですか、ちょうど良くターキーを提供できたようで良かったです」


 町までは中々行けないので、毎年村でもお祭りっぽい事をしていたらしい。近年は慎ましくおこなっていたそうで、こんなに盛大に騒げるのは久しぶりだと案内してくれた村人は喜んでいた。


 席に着くと、エミリーとセバスが焼きあがったターキーをのせたお皿を、俺達のテーブルに運んできてくれた。


「旦那様、ターキーが焼けましたわ。どうぞお召上がりくださいませ」

「奥様と洋介様もどうぞ」

「二人も来ていたのか。っというか、その呼び方は何だ……」

「嫌ですわ、旦那様。屋敷の主ですもの、そうお呼びするのが当たり前ですわ」

「セーラ様は旦那様の奥様でございますので」

「そうだった……」


 忘れかけてたな、その設定。

 村人の前だから配慮してくれているのだろうが、旦那様はまだしも奥様と呼ばれるのは、セーラとしてはどうなんだ?

 隣に座っているセーラに視線を向けると、動揺している様子のセーラと目が合ってしまった。


「あ……嫌だったら、いつも通りに呼んでもらっていいと思うぞ……」

「嫌ではないの……、突然だったので少し驚いただけよ……」

「そ……そうか。それならいいけど……」


 この設定を作った時は必要だと思ったから受け入れたけれど、何で今になってこんなに気まずいんだ!

 思わずお互いに視線を逸らしてしまった。


「新婚の初々しさが漂ってきますねー。ターキーを食べる前に胸やけしそうです」


 そう言いながら洋介は呑気にターキーにかぶりついた。


 ――この設定を作ったのは他でもない、君じゃないのかい?洋介くん。


 抗議すると気まずさが長続きするので、スルーしてターキーを食してみる事にした。


 こんがりと焼かれたターキーは皮から出た油でテラテラと輝いていて、それを見ただけで急に腹が減って来る。

 早速かぶりついてみると、パリっとした皮の内側から溢れる肉汁と、シンプルに味付けした塩が絡み合ってなんとも美味い!


「ターキーは初めて食べたが、鶏肉に負けない美味さだな」

「モンスターなのでもっと獣っぽいのかと思っていましたが、とても美味しいです」

「油もくど過ぎなくて美味しいわ」


 初めての動物型モンスターだったが、中々満足のいく狩りになったようだ。

 ゲーム内では経験値稼ぎが主な目的だったので、こういう楽しみがあるのも現実の醍醐味と言えよう。

 セバスとエミリーも初めてのターキーに大満足のようだ。


 しかしこのターキー、塩味だけでは勿体ない気がする。

 何と言うかもっと……スパイシーな、唐辛子的な、刺激ある味も似あうのではないだろうか。


 そう思って、ポーチから瓶を取り出すと、セーラがそれを覗き込んだ。


「カイト、それは?」

「ふふふ、これは俺特製の一味唐辛子だ。っと言ってもポーチの中にあった唐辛子を、粉末状にしただけだけどな」


 ポーチの中にはフードプロセッサーもあったので、それを使って作ってみた。ちょっと荒い粉末だがそれがまた、食欲をそそる出来になっている。


「カイトは辛い物が大好きね。いつの間に作ったの?」

「唐辛子は目に入ったりしたら危険だから、夜中にこっそり裏庭で作ったよ」


 このフードプロセッサーも唐辛子専用にしようと思っている。間違ってほかの食材に混ざって一般人の口に入ってしまうと、大変な事になってしまう。


 瓶の蓋を開け、ティースプーンに一杯ほど一味唐辛子をすくいターキーに振りかけると、真っ赤な衣をまとったような姿に変貌した。


 以前、俺が掛ける赤い物は辛いと学んだセバスは、青ざめた表情でターキーを見守っている。


「旦那様……そんなにかけてしまっては気絶してしまうのでは……」

「大丈夫だよ俺、辛いの好きだから。くぅ~!やっぱり美味い!モンスター肉はこのくらいの刺激が無きゃな!」


 自家製一味唐辛子に満足していると、隣のテーブルに座っていたガッツポーズ爺さんが、物珍しそうに俺のターキーを見つめた。

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