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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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49 カイトvsターキー

 脇道に入って少し歩いたところで、セーラは立ち止まり指を刺した。


「洋介、あのつる(・・)が欲しいわ」

「お任せください、姉上!」


 洋介はマジックポーチから素早く小さめの斧を取り出すと、つるに向かってそれを勢いよく振り下ろす。

 それによってつるは、木の枝から崩れ落ちた。


 なんて残忍な!


 と思ったかもしれないが、心配は無用。洋介が襲い掛かったつるは、動物の鶴ではなく植物のつるだ。

 叩き切ったつるを、洋介は手慣れた様子で回収していく。


「それ、何に使うんだ?」

「リースを作りたいのよ」

「リースってクリスマスリースとかのアレか?」

「えぇ、そうよ」


 本当にどうしたんだ、この二人。サンタ服の次はリース作りとは。

 今って夏だよな……クリスマスはまだ先だよな。季節を先取りしすぎじゃないか!?

 サンタ服の二人を見ていると、俺の認識が間違っているのかと思えてくるから恐ろしい……。


 俺は自分の服を見降ろした。半袖でちょうどいい季節、今は夏のはずだ。


 脇道を十五分ほど歩くと、木々がまばらになり草原へ出た。ゲーム内ではここがターキーの生息地で草原に隠れるように巣があった筈だ。


「ターキーいましたよ」


 洋介が指さした方向に、焦げ茶色をした鳥が歩いていた。大きさは中型犬くらいで、尾羽が扇子のように開いている。

 首から上が赤くなっていて、それを見ただけで食べられる鳥だなと思えるから不思議だ。完全に脳が鶏と勘違いをしている。


「ターキーは動きが速いから、洋介の矢では当てにくいだろうし俺が倒すよ」

「お願いします、カイト殿。僕達は巣を探す旅にでも出ましょうか、姉上」

「そうね、カイトは強いからヒールも必要なさそうだわ」

「ヒールは必要ないが、巣を探してどうするんだ?」

「オーナメントを探すのよ。レオくんにプレゼントしようと思って」


 なるほど、思い出した。

 二人の目的は、サンタ服を着て巣を探すとクリスマスツリーの飾りになるオーナメントがゲットできるという、クリスマスイベントだ。

 ゲーム内ではそのイベントにバグがあり、イベント時じゃなくてもサンタ服を着ていれば入手できるようになっていた。それを狙っているようだ。


 それで二人はサンタ服を着ていたのか。レオくんにプレゼントするために。


「お……俺も、オーナメント欲しいなぁ……」


 オーナメントなら過去に拾った分がポーチに入っている筈だが。どういう訳か、欲しいと口から出てしまった。


「ふふ、任せて。カイトの分も探しておくわ」

「ありがとう、セーラ」


 セーラのポーチにも過去に拾ったオーナメントは沢山あると思うが、わざわざ探すのは楽しいからなのだろう。

 約束を取り付けると、俺達は別れてそれぞれの目的を果たすことにした。


「カイト殿は、意外とヤキモチ焼きですねー」

「うっ……」


 別れ際、洋介にそう呟かれ、五歳児に対抗意識を燃やしている自分がちょっと恥ずかしくなった。




 気を取り直して俺はポーチから槍を取り出し、先ほど洋介が見つけたターキーに近づいた。


 だがモンスターとはいえ、動物っぽいものを槍で突き刺すのは少し抵抗がある。

 今まではスライムしか狩っていなかったからそんな感情は湧いてこなかったが、これから色々なモンスターを狩るなら、それについては割り切らねばならない。


 しかし、鳥の羽もむしれない俺達に、動物型のモンスターを倒すなんて事ができるのだろうか……。


 ターキーを前にして躊躇していると、ターキーは俺の気配に気が付いたようだ。

 地球上の鳥ならここで逃げ出す場合が多いだろうが、モンスターであるターキーは獲物を捕らえたかのような目つきで、俺に向かって走り出してきた。


「うわぁ!待て待て、まだ心の準備が!」


 俺は槍を回転し、穂先と逆側をターキーに向けると、襲い掛かってくるターキーに突き出した。

 穂先じゃなくてもかなりの衝撃はあっただろう、ターキーはよろけながら少し後退した。


 こちらを睨みつけたターキーは、グルルルルと威嚇の声を上げながら、その場で片足を何度も蹴っている。まるで闘牛が襲い掛かる前触れのような体勢だ。


 次は、あちらも易々とは怯んでくれないだろう。

 俺は槍を再び回転させ握り直すと、穂先をターキーに向けた。

 それを見とめたターキーは、俺に向かって再び突進を始める。


 ふくよかなボディーはなかなかに迫力があり、こっちが怯みそうになるのを必死にこらえる。


 ――あれはモンスターあれはモンスターあれはモンスター


 呪文のように自分に言い聞かせ、槍を構えた。


「あれは、モンスター!」


 気合の声と共に突き出した槍は、丸々と太ったターキーの腹に命中した。


 ぱたりと倒れたターキーは、さすが全年齢対象のゲームなだけありグロさは無く、倒れて尚、綺麗な状態を保っている。

 スライムの倒れ方は割とリアルだったが、こちらはお子様に配慮されているのだろう。実にありがたいご都合主義だ。


 俺は息を大きく吐くと、倒したターキーをポーチに回収した。


 ――これなら、俺でもやっていけそうだ。


 今後の冒険者生活への不安が一気に解消されると、俺は次のターゲットを探しに草原を歩き出した。

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