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04 情報整理

「っと言っても分かっている事は少ないんだが、俺が最初に目覚めたからこれまでの説明をするな。まず、俺達は同じ状況で転生したようだが、……二人もPCが爆発したんだよな?」

「えぇ……」

「そのようです……」


 自分達の最後の状況を思い出させるのは忍びないが、きっかけが爆発ならほかにも同じ境遇の人がいるかもしれないし、情報は共有しておいた方がいいだろう。


 二人とも辛そうな表情になり、洋介はテーブルに置いていた手を強く握りしめている。


「……あのPCを組むのにかなりの額を投資したので、とても悔しいです」


 ――そっちかよ……!


 まぁ、彼なりに場を和ませようと思っての発言だということにして、スルーし先に進む。


「俺がこの森で目覚めると、近くにセーラも倒れていたんだ。セーラはスライムに飲み込まれそうになっていたから、慌てて俺の近くに落ちていた槍で倒したんだ」

「え……、私も襲われていたの?もしかして……洋介みたいに……?」

「大丈夫だよ、セーラが飲み込まれる前に俺がスライムを蹴り飛ばしたから」

「そうだったの……、心から感謝するわ。ありがとう、カイト」


 洋介が飲み込まれた状況を見てしまうと、ああはなりたくないって思うよな。

 セーラは両手を胸元に当て心底ほっとした様子で感謝を述べた。


「あのう……その言い方だと、まるで僕がスライムに飲み込まれたように聞こえるのですが……」

「残念だが、その推測は当たっている。洋介は俺達から離れた場所に倒れていたから、間に合わなかったんだ。すまん……」

「そ……そうですか。でも、こうして生きているということは、カイト殿が助け出してくれたのですか?」

「一応、飲み込まれてすぐに助け出したから消化されている様子は無かったが、体は大丈夫か?」

「体は問題ないようですが……そうですか、僕は危うくスライムの液体になるところだったのですね……カイト殿、ありがとうございます。貴殿がいなければ今頃僕はスライムのようなドロドロに……」


 洋介は遠い目になりながら笑っている。

 自分が寝ている間に液体になっていたなんてシャレにならないもんな。

 ある意味、彼が真っ先に異世界の怖さを感じているのかもしれない。


「そんなわけで何とかスライムは倒せたんだが。これから異世界で生活するにあたって俺の持ち物といえば、ゲームを始めて最初に装備している白いタンクトップと短パン、靴に槍。そしてウエストポーチという悲惨な状況だ。それは二人も一緒のようだな」

「そうね、私も杖が落ちていたから一応は持ってきたわ」

「僕も弓があったので持ってきましたが、矢が無いので攻撃は出来そうにありません」

「矢は村に売っていると思うが、先立つお金がないんだよな。これじゃ宿屋にも泊まれないし、食事も山で自給自足しなければならない」


 俺と洋介は野宿でもいいが、セーラはさすがに宿屋に泊めてやらなければ危険だろう。


「スライムからお金やアイテムはドロップされなかったのですか?」

「そういうのは無かったな、スライムの皮もしばらくしたら消えてしまったし、素材として売ることも出来そうにない」

「それは困りましたね。僕達はどうやってお金を稼いだら良いのでしょう……。村で都合よくクエストなどあれば良いですが。その前に多少なりともお金は得ておきたいですね」


 洋介は神妙な顔で頬杖を付いて考え込み始めた。

 お前、リアルでもその顔出来るんだな。


「お金ならあるわ……」


 そう呟いたセーラに、どこに?と聞こうとして彼女に視線を向けると、セーラはウエストポーチからお金を取り出した。


「大金貨……その中に軍資金が入っているのか?」

「二人も、中を確認してみて」


 セーラに促され、俺と洋介は自分達のウエストポーチを確認した。


「こっ、これは……!」

「マジかよ……」


 中はとても不思議な空間だった。

 確かにポーチの中を見ているのに、視界はゲーム画面のアイテム欄を見ているような感覚になる。

 そして、そのアイテム欄には見覚えのあるアイテムがずらりと並んでいた。


「……これ、マジックボックスの中身じゃないか?」

「そのようですね……、転生前に入れておいた弓もしっかり入っています」

「ふふ、びっくりしたでしょう?」

「あぁ……セーラ、お手柄だよ!」


 嬉しそうに微笑む彼女に微笑み返すと、もう一度ウエストポーチの中に視線を向けた。


 武器と装備があれば、ダンジョンでいくらでも稼げるんじゃないか?SSランクの俺達なら容易くこの世界でものし上がれるんじゃ……。


 そう思いながら、ポーチの中に手を入れて愛用のSSランク用武器を取り出そうとしたが。


「……あれ、武器が取り出せない。お金は取り出せたのに何故だ?」

「僕も取り出せません。消耗品は取り出せますが……」


 洋介はポーションを取り出して見せた。どういうことだ?


「セーラの武器も取り出せないか?」

「そうみたいね……あ、待って。これは取り出せるわ」


 そう言って彼女が取り出したのは、ランクに関係なく装備できる武器だった。

 イベント報酬のそれは、武器とは名ばかりで見た目は良いが攻撃力はとても低い。


「もしかして、この世界ではSSランクが無くて取り出せないのだろうか」

「いえ、Sランクの武器も取り出せませんよ」


 どれなら取り出せるのか確認をするため、全てのランク武器を取り出してみることにした。

 っと言っても、俺と洋介は低ランク武器を持っていなかったので、アイテムコレクターのセーラに任せたのだが。


 セーラに確認してもらったところ、最底辺であるEランク装備しか取り出せないとわかった。


「まさかこの世界はEランクしかないなんて事はないよな?」

「それは無いと信じたいですが、僕達が初めの森にいる事から推測するに、もしかして僕達はEランクなんじゃないでしょうか」


 ――ちょっと、待ってくれ!それは少し……いや、かなりきつくないか?

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