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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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48 七面鳥食べ放題への道

 それは、巨大スライムの皮を納品しに町へ向かう前日。村の広場の横にある作業場で、干し上がった薬草やスライムの皮を確認していた時の事だ。


「丁寧な仕事をしてくださってありがとうございます」


 作業台に並べられた薬草は、種類・部位ごとに綺麗に分けられている。薬草はそれぞれ日干しや陰干しを分ける必要があり、この分け方はそれをしっかりとやってくれたという証拠になる。

 この仕事は慣れていると言っていたのは、本当だったようだ。


「このような仕事でしたら、またお手伝いさせてください。村人も農作業以外の仕事が出来て良い気分転換になったようです」

「そう言っていただけるとありがたいです。また何かお願い出来ることがあれば持ってきますね」

「何卒よろしくお願いいたします」


 報酬額は町で売ってから決めることになっているが、最低限支払える額を提示した時は皆、この冬は余裕ができると喜んでいた。

 明日は、その報酬額から差し引きく形で、買い物も代行してくる予定だ。


 薬草とスライムの皮をマジックポーチに収納していると、ここで毎日作業をしていた陽気なお爺さんが洋介に声をかけた。


「ところでいつも気になっていたんだがね、洋介様の矢には羽根が付いていませんが、それで使い物になるんですかい?」


 俺達はこの後、ダンジョンへ行こうと思っていたので洋介とセーラはDランクの装備を着ている。俺はセーラが刺繍してくれた黒い服を着ているが、これはお気に入りなので狩りに関係なくずっと着ている。ヘビロテしているので、生地の傷みが早くならないか少し心配だ。


 洋介は背中に矢筒を背負い、そこにはこの前作った羽根無し矢が差してあった。彼はそれを一本引き抜いてみせた。


「あぁ、これですか?多少威力は落ちますが一応は使えますよ。お恥ずかしい事に僕達、鳥を解体して羽根をむしるのが怖くて」

「ははは!さすがはお坊ちゃま方だ!鳥さえ仕留めて来てくれれば、ワシらで作業できますがね」


 お爺さんの言葉に、その場の空気が一変した。

 その場にいた村人全員が、顔色を変えてお爺さんに視線を向けた。


 何だろう、この緊張感。

 洋介もそれには気が付いたようで、探るようにお爺さんに返答した。


「ありがたいお話ですが、羽根は大量に必要でして……、そんなに沢山お願いしても大丈夫でしょうか?」


 鳥の解体となれば、そこそこの重労働ではないだろうか。老人ばかりなのにきつい仕事を頼んでも良いのか、洋介も困っているようだ。


 周りで様子をうかがっている村人の緊張した表情。余計な事を言うなとお爺さんに威圧しているのではないだろうか。


 そう思っていると、この場に遊びに来ていた村で唯一の子供であるレオくんが、目を輝かせて俺を見上げた。


「カイトさま!おにく、たべられるの!?」


 その発言に、周りにいた大人たちは少し恥ずかしそうに俺達から視線をそらした。


 ――なるほど、そういう事か。


 俺はレオくんの頭を撫でながら頷いた。


「あぁ、今日は沢山食べようか!洋介、せっかくだしお願いしよう」

「そうですね、羽根はいくらあっても良いですし、定期的に頼めるとこちらとしても助かります」

「報酬は解体した鳥肉で良いですか?」


 そう尋ねると、村長は申し訳なさそうに頷いた。その後ろでは、話を持ち掛けたお爺さんがガッツポーズを決めている。


「申し訳ありません、とても助かります。何せ村には野菜以外の食べ物があまりないもので……」

「野菜だけ?それだと栄養が偏るのでは……。皆さん不健康には見えませんが」


 この村の貧乏具合に気が付けなかったのは、これが大きな要因だと思う。村人は皆、顔色も良くはつらつとしている。


「それはスライムの皮のおかげです。以前にもお話いたしましたが、スライムの皮は栄養価が高いのです。村では干したスライムの皮を刻んで、少量を食事に混ぜて栄養を補っておりました」

「そうだったんですか」


 ――スライムの皮、万能すぎだろう!


 だからお金が無くとも、スライムの皮は買い取りたかったのか。単に美味しいだけではなく理由があったんだな。


「去年、巨大スライムの皮を取ってきてくれた騎士から買い取った皮も、そろそろ無くなりそうだったもので、皆様にはとても感謝しております」


 俺達は思っていた以上に、村に貢献していたらしい。今年は騎士も来られなかったし、俺達がここに転生したのは村を救うためだったのかもしれない。なんて、勝手に転生の理由付けをしてみたが、実際は転生に理由なんてあるのだろうか。




 村を出てイーサ町へ続く森の道を三十分ほど歩くと、脇道が見えてくる。


「確か、この脇道を奥に進めばターキーの住処がある筈です」


 マップに詳しい洋介の案内で、俺達は深い森へと足を踏み入れた。村より南には巨大な木は生えていないので、至って普通の森である。


「ところで、二人とも何でサンタ服に着替えたんだ……」


 さっき休憩した際に、二人して示し合わせたかのようにそれに着替えていて、俺はちょっと疎外感に浸っていた。


「え?ターキーを狩るんですよ。この格好は必修ではありませんか!」

「そうよ、ターキーにはサンタ服と決まっているわ」


 何だこの姉弟、妙に張り切っているのだが……。クリスマスイベントでもないのに、張り切る意味がわからん。

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