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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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45 露天風呂の屋根と庭の完成

 その後、露天風呂の屋根を建設する作業を見学した。


 手伝おうとも思ったが、木工ランクの低い俺が手を出すと、逆に出来が悪くなる気がしたので大人しく見守ることにした。


 今回は露天風呂と洗い場、裏口から露天風呂までの通路に屋根が設置される予定だ。今の所、雨には降られていないが、これでいつ降られても安心して入浴する事が出来る。

 冬までには壁も取り付ける予定だが、その前に男女をどう分けるか考えなければならない。露天風呂が二つあれば良かったのだが、セーラは一つしか所持していないらしい。


 大体の形になってきたところで、積み上げられていた板の上に座っていた俺は立ち上がった。


「そろそろ開花しているだろうから、様子を見てくるよ」

「行ってらっしゃいカイト殿、姉上喜ぶと良いですね」

「きっとお喜びになられますよ、マスター」

「そうだといいな、行ってくる」


 二人とも、庭の出来具合には興味があるようだ。後で二人にも見てもらおうと思う。




 建物を回って庭へ出ると、数時間で驚くほど風景が変わっていた。


 花壇から溢れんばかりにこんもりと育ったそれは、品種によって大小さまざまなバラの花が咲き乱れていた。

 通路に設置されていたアーチにもツタが絡まり、そこにもバラが零れ落ちそうなほど沢山咲いている。


「男の俺が見ても圧倒される出来栄えだな……」


 課金アイテム頼りだったとはいえ、想像以上の完成度に確かな手ごたえを感じた。


 ――これは、絶対に喜んでもらえる!


 俺は足取り軽く、屋敷の中へと入った。


 広間へ行くとセーラとエミリーが、ソファーに座って雑談をしながら刺繍をしていた。

 完成したものも並んでいて、この様子だと必要な強化は終わっているように思える。


「二人ともずっと部屋で作業していたんだろう?少し庭で休憩しないか?」

「えぇ、良いわよ。ずっと刺繍をしていたから、のどが渇いたわ」

「わたくしも少しお腹が空きましたわ。セーラ様、お菓子は残っていますか?」

「ふふ、沢山あるから心配しないで」


 ちょうど休憩するのに良さそうな時に声をかけたようだ。


「それじゃ、俺が準備してくるよ。セーラ、ガーデン用のテーブルとイスを貸してくれるか?後、ティーセットも」

「わざわざ貸さなくても、私も行って準備するわ」

「たまには俺がやるよ。十分後くらいにでも来てくれ」

「そう?それならカイトにお任せするわ。エミリーちゃん、その間にここを片付けましょう」

「かしこまりました、セーラ様」


 セーラから道具一式を借りて俺は庭へ戻った。


 花壇に囲まれていて、池にも近い場所にテーブルを設置した。それからティーセットも取り出す。このティーセットのポットは常に温かい紅茶が入っていて、無限にカップへそそぐことが出来る。

 俺も多少は所持しているお菓子も置いたら準備は完了だ。


 あと忘れている事はないだろうかと辺りを見渡した俺は、ふと池が目に入った。


「ここにバラを浮かべたら、良くなるんじゃないか?」


 よくリゾート地の写真で、風呂とかに浮かべているようなイメージだ。

 早速ポーチから剪定鋏を取り出すと、バラのとげが刺さらないよう気を付けなが摘み取った。


 すると、摘み取った茎からまた新しい蕾が出てくるではありませんか!


「うわっ、まじかよ……」


 あちこち摘み取ってみたが、どれも同じくまた蕾が出てくる。

 洋介が壁紙で青ざめていたのが、ちょっと理解できた。

 課金アイテムは一歩間違えると怪奇現象だ。


 摘み取ったバラを池に浮かべてみると、思った通りのリゾート感になった。


「俺、庭師の才能があるんじゃないか……」


 植物学がSランクだから庭師に必要な知識は十分にあるが、庭師には美的センスも必要だろう。独創的なケーキを作っていたセバスにはとても任せられない仕事だ。


 庭の手入れは俺が頑張ろうと決意していると、屋敷から出てきたセーラとエミリーがこちらへやってきた。


「カイト……!このお庭どうしたの?とても素敵だわ……」

「本当ですわね!夢の国にいるようですわ」


 二人ともここへ来るなり、庭の変わりように驚いているようよだ。思った通りの反応にとても満足する。


「おー、来たか。まずは、座ってくれ」


 椅子を引いて一人ずつ座らせてから、ポットの紅茶をカップに注いで差し出す。


「二人には刺繍で助けられたからな。他にもセーラには色々と世話になったし、これはほんのお礼だ」

「まぁ……。そのためにわざわざお庭を、こんなに素敵にしてくれたの?とても嬉しいわ……」


 セーラは頬を染めながら改めて庭を見まわしてから「ありがとう、カイト」と、ここのどのバラよりも華憐に微笑んだ。


 ――うっ……、可愛すぎて直視できない。


「わたくしも微力ながらお手伝い出来て良かったですわ」


 エミリーはそう言いながら俺に目配せをした。どうやら、大半の理由がセーラの為というのはバレているようだ。


「二人ともゆっくり、お茶を楽しむといい。それじゃ、俺は戻るよ」

「え……待って!カイトも一緒にお茶しましょう」

「そうですわよ、マスター!せっかく整えてくださったのに、ご本人がいらっしゃらないなんて……」

「俺はこの雰囲気に合わないからな……。二人で楽しんでくれ」


 あまり引き留められるのも困るので、俺はさっさと退散することにした。

 エミリーが言ったようにこの夢のような空間に、中二な容姿の俺が混ざっていては雰囲気が台無しだ。

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