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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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42 SSランクスキルの弊害

「あのう……マスターは戦いませんの?」


 洋介が弓を構えると、エミリーは訝しげに俺を見た。


 ここに来るまで、ひたすら洋介のガストアローで倒してもらっていた為、俺はただの皮拾い要員として働いていた。

 それを不思議に思っているようだ。エミリーにとって俺は、使えない奴認定されているのではないだろうか……。


「私もマスターが戦っている姿を是非、拝見させていただきたいと思います」


 セバスも俺が戦っていない事が、気になっていたようだ。


 もしかして俺、マスターとしての威厳を失いかけている?


「そうですね、今回はカイト殿お願いします。お二人とも、カイト殿はとても強いんですよ!」

「わぁ、楽しみです!マスターがんばってくださいませ!」

「是非ともこの目に焼き付けてから、屋敷へ戻りたいと思います!」


 洋介が持ち上げたせいで、二人の期待値が上がっているんだが……。


「それじゃ、今回は俺が倒すか……」


 俺は乗り気に慣れないまま、槍を握りなおした。

 期待されているところ申し訳ないが、俺は洋介のようには派手な活躍が出来そうにない。


「セーラは皆と一緒にいてくれ」

「わかったわ」


 セーラも察したようで、異論無く残ることを選択してくれた。


 部屋の中に入った俺は、準備運動がてら片手で槍を振り回しながら巨大スライムへ近づくと、両手で握り直した。


 俺に気が付いた巨大スライムが、飛び跳ねようと大きく体を沈ませたと同時に、思い切り槍を突き刺した。


 槍に皮を突き破られた巨大スライムは、どろーんと中身を流しあっけなく絶命してしまった。


「……やっぱりな」


 この前、飲み込まれて倒した時に確信したんだ。これなら、通常攻撃一発で倒せるだろうなぁと。


 あの時は液体の中だったから皮を突き破ることなくスキルを発動出来たが、外側から攻撃したらこんなものだろう。

 攻撃力を上げるパッシブスキルもあるから、SSランクのスキルが残っている俺達は、通常攻撃でも桁外れに強い。


 振り返り、皆に手を振ると微妙な雰囲気で皆がやってくる。


 皮だけになった巨大スライムを見下ろしたエミリーは、残念そうに呟いた。


「巨大スライムって、見た目に反して弱いのですね……」

「エミリー嬢!巨大スライムが弱いんじゃなくて、カイト殿が強いからあっさり倒してしまったんですよ!」

「あら……そうでしたの」


 洋介、そのフォローは何か悲しいから必要ないと思うぞ……。


 セバスの表情からも、俺の認識を改めるには至らなかったようだ。期待してくれたのに申し訳ない。


 ゲーム内でも、強敵に対しては絶大な強さを発揮する槍使いだが、そうでもない敵相手だとスキル発動までに時間がかかって効率が悪い為、正直あまり人気の無い職業だったりする。

 だが、そんな面倒くささも含めて、俺は槍使いが気に入っているんだ。




 盛り上がりに欠けたボスの部屋を抜け、長い階段を上って外へ出た俺は思わず息を飲んだ。


 月明りに照らされた薬草畑には、夜にしか咲かない白銀の花が辺り一面に咲いていた。


 とてもレアなこの花は、服の強化に使う糸の染料として使われる。まさに俺が今着ている服に施されている、刺繍の糸の原料となる花だ。


「どうしたの?カイト」


 出口で立ちふさがっていた俺の横で、セーラは不思議そうに俺を見上げた。


 ――そうか、セーラには見えないんだ。


「ちょっと、待ってな」


 俺は白銀の花を数本摘み取ってセーラに渡した。これで見えるはずだ。


「ほら、これが一面に咲いているんだ」

「まぁ!白銀の花ね。そんなに沢山、咲いているの?」

「あぁ、ゲーム内では見たことがないほど大量に咲いているよ」

「すごいわね……ゲームで見るより何倍も綺麗だわ……」


 セーラが見惚れるように花を眺める後ろから、後の三人も外へ出てきた。


「マスター!とても綺麗なお花畑ですわね!」

「夜にしか咲かない花でしたか、本当に綺麗ですね」


 エミリーとセバスには見えるようだ。見えていないであろう洋介は、セーラの手元に視線を移す。


「これが咲いているのですか。姉上の刺繍に役立ちますね」

「実際に刺繍をすると、ゲーム内より糸が多く必要になるので助かるわ」

「よし、それなら手分けして摘み取ろう!セバスとエミリーも手伝ってくれ」


 これが見える俺とセバス、エミリーで花を摘み取る事にした。


 この白銀の花は、植物学のスキルがSランクでなければ見ることが出来ない仕様になっている。

 現実でもそうなのには驚きだが、おかげで摘み取られること無くここまで増えたのだろう。

 普通は一本見つけられたらラッキーなレベルのレアアイテムだ。


 洋介とセーラは普通の薬草を採取できるだけのランクしか上げていないが、俺はSランクまで上げている。

 理由はとても打算的なもので、この花を裁縫スキルで糸が必要なセーラに貢ぎたかったからだ。


 ほかの花で染めた糸も存在するが、白銀の花で染めた糸が最も強化の数値が上がるとされている。


 セーラはその糸を使って俺達の装備をいつも強化してくれていたので、三人の装備は最高品質の強化が施されていた。


 それにしてもこのダンジョンは、Eランク向けなのに旨味が多すぎる。

 過疎化のおかげでこんなにも素材で溢れているなんて、他の冒険者は気が付いていないのだろうか。

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