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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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37 ダンジョンのモンスター

 ダンジョンを出た俺達は再びダンジョン前広場へ戻っていた。


「薬草採取は昼休憩後にして、もう一周しよう」

「「はーい」」


 再びダンジョンへ入ったが最初の部屋で俺達は、ここは現実なのだと思い出す。


「スライムがいない……だと」

「ゲームではないので、すぐには湧かないようですね」

「どのくらいで湧くのかしら」

「二十四時間以内には湧いているようですが……、どうします?カイト殿」


 問われて少し考える。ここのダンジョンはこれからも使うし、湧き時間は把握しておきたい。


「一人を見張りに残して、後の二人は薬草の採取にでも行ってくるか」

「それなら僕が残ります。矢の内職も残っていますし」


 そう言いながら洋介はポーチから、矢のシャフトと矢じりを取り出した。

 昨日は俺も洋介も途中で飽きてしまった為、まだ組み立てが残っている。


「分かった、ここは洋介に任せるよ。セーラ、時計ってまだ残っているか?」

「えぇ、あるわ」


 セーラはポーチから、ハウジングアイテムである時計、それから作業用のソファーとテーブルを取り出した。


 現在の時刻は十一時すこし手前だ。


「ありがとうございます、姉上。快適すぎて寝てしまいそうですね」

「ちゃんと見張っていてくれよ」

「対策はしますので、お任せを!」


 何を対策するのか分からないが、後は洋介に任せて俺とセーラは薬草採取へ行くことにした。


 薬草が生えている場所へは、ダンジョンを出て外から回った方が距離的には近いが、屋上への通路は不思議な力が働いているようで、ボスの部屋を抜けて階段を上らなければ入れない仕組みになっていた。


 モンスターが出ないダンジョンを歩いていると、自然とまた手を繋ぐことになり、俺は一人でデート気分を味わっていた。

 会話の内容はまるでデートっぽくなかったが、むしろそれが俺達らしい。


「カイトはDランクになっても、体力強化の装備をするのかしら?」

「そうだな、攻撃力は当分必要なさそうだし、しばらくは体力メインでいいと思っている。それがどうかした?」

「Dランク装備に刺繍をしようと思っていたのだけれど、戦士の装備は鎧でしょう?カイトはどうするのかしらと思っていたのよ」


 体力の刺繍は布にしかできないから、気にしていてくれたようだ。


「戦士の装備はしばらく必要なさそうだな」

「それなら、カイトの好きな服に刺繍をするわ。いつまでもサンタ服では嫌でしょう?」


 確かにセーラのサンタ服は可愛いが、俺の容姿では怪しさ満点だ。そして、この季節だと結構暑い。


「それは嬉しいけど、三人分の刺繍なんて大変じゃないのか?」

「大丈夫よ、エミリーちゃんにも手伝ってもらおうと思っているし、刺繍は結構楽しいのよ」

「そっか。それなら、頼むよ。出来れば半袖にしてくれるとありがたいな」

「ちょうど良さそうな黒い開襟シャツがあるわ」


 セーラはポーチからシャツを取り出して見せてくれた。

 俺の好みを熟知していてくれて、いつもながら嬉しくなる。


 そんな話をしているうちに、あっという間にボスの部屋を抜けて階段へたどり着いた。

 ここからは話す余裕はあまりないので、階段を上る事に専念する。


 セーラは随分と長い階段にも慣れてきたようだが、手は繋いだままにしておいた。

 理由は特になく、ただ単に繋いでいたいだけだ。


 薬草畑にたどり着き、二人で手分けして薬草を採取し、お昼頃に洋介の元へ戻った。


「洋介ったら、やっぱり寝ているわ」

「あの内職は飽きるからなぁ……気持ちは分かる」


 洋介は途中で力尽きたのか、シャフトと矢じりを手に持ちながら、気持ちよさそうに眠っている。


 しかし、出来上がっている矢は五本だけ。飽きるの早すぎだろ!


「そろそろ昼食の時間だが、どうしようか」

「待ってて、私が起こすわ」


 そういえば、セーラじゃなければ起きないとか言っていたな。セーラに毎日起こしてもらえるなんて羨ましすぎるぞ。


 セーラは洋介が寝ているソファーの前に立つと、彼に顔を近づけて耳元で囁いた。


「洋介、会議中に寝るなんて部下に示しがつかないわよ」


 セーラがすぐさま顔をよけると、洋介は勢いよく起き上がった。


「違う!今のは寝ていたのではなく、目を閉じて考えていただけなんだ!……って、あれ?」


 洋介はあたりを見回して、俺達に気が付くと「なんだぁ……」とため息をついた。


「お前……、未だに社畜から抜け出せていなかったんだな……」

「そんな憐みの目で見ないでください……カイト殿」

「洋介を起こすには、これが一番効果あるのよ」


 これで毎朝起こされているなら、とても心臓に悪そうだ。


 洋介はぐったりした顔でソファーに座りなおすと、セーラに視線を向ける。


「姉上、そろそろ異世界バージョンに変えてくれませんかね……」

「異世界バージョン?んー……考えておくわ」


 とても理解できないが、基本的な起こし方についてはこれで問題ないらしい。


 洋介が羨ましいと思っていたが、俺はセーラより早く起きようと心に決めた。

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