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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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30 かつての村

「単刀直入にお聞きします。村人全員でお金を稼ぐ気はありますか?」

「と、申しますと……?」


 村長は明らかに目の色を変えたのが分かった。

 見た目はお金儲けなど興味の無いような雰囲気の彼だが、即食いつくとはよほどお金に困っているようだ。


「実は俺達、町に行く際に薬草を売ってこようと思っているのですが、乾燥させる作業に人手がいるんですよ。皆さんにお手伝いしていただけると大変助かるのですが。もちろん皆さんの仕事に支障が出ない程度のお手伝いで構わないです」


 仕事内容はここに来るまでの間に三人で考えた結果、簡単で尚且つ材料を集めやすい薬草干しに決定した。

 ゲーム内では干す作業は必要なかったが、現実では必要だということは知識として頭に入っている。


「薬草干しでしたら何度も請け負った事がございますので、是非お手伝いさせてください」

「手順が分かるのでしたらありがたいです。……ところで、皆さんに確認を取らなくていいのですか?」


 村長は完全に請け負ってくれる気でいるようだが、村人の都合もあるだろうに。


「断る者などおりませんのでご安心ください。冒険者が村を訪れていた頃はそういった商売もございましたので」

「へぇ、そんな商売があったのですか。村が賑わっていた頃は、他にどんな商売があったんですか?」


 ゲーム内には無かった商売にちょっと興味が沸いて尋ねてみると、村長は懐かしそうに当時の話をしてくれた。


 当時は冒険者がより楽に狩が出来るよう、生産スキルでサポートするような商売が盛んだったようだ。

 武器や防具のメンテナンスはもちろんの事、刺繍代行や、細工代行。

 マジックポーチを持っていない低ランク冒険者が多かったため、集めた素材はなるべく軽くするために、薬草やスライムの皮を干す商売も繁盛したそうだ。


 東の大河に航路ができ、次第に冒険者が減るとともに仕事も減っていき、高い技術を持っていた職人達は都会へと流出してしまったそうだ。


「なるほど……。スライムの皮を干した物も町で売れると思いますか?」


 今の話でふと思ったのだが、スライムの生息場所はこの国に数か所しかない。この辺りではこの森にしかいないので意外と需要がある気がする。


「勿論ですとも。スライムの皮はとても栄養価が高く、美肌効果もありますので高く売れると思いますよ」


 俺の隣に座っていたセーラは村長の言葉に反応して、自分自身の頬をまるで弾力を確かめるように触れている。


 ――その可愛い頬っぺた、俺も触りたい。


 と思ったが手を出す勇気はないので、村長に視線を戻す。


「余裕があればスライムの皮も干してもらえますか?これは次回でもいいんですけど」

「お任せくださいませ。久しぶりの仕事なので、村人も喜ぶでしょう」


 村長は今日の夕方にでも村人を集めて話をすると言ってくれた。

 俺達は明日のダンジョン帰りに材料を渡すと約束し、三人で屋敷へと戻った。




 屋敷に戻ると、執事のセバスとメイドのエミリーが出迎えてくれた。


「「お帰りなさいませ、マスター、洋介様、セーラ様」」


 こうして出迎えられると、どこかの貴族にでもなった気分だ。


「ただいま、二人ともお昼はちゃんと食べたか?」

「はい、マスターのご指示通りカツ丼を美味しく頂かせていただきました」

「わたくしも、ベーグルサンドをとても美味しく頂きましたわ」


 セバスは何を食べていいか分からないと言うので俺と同じカツ丼にして、エミリーはセーラのオススメ数点から自分で選んだようだ。


 二人の生活サイクルは、午前中に屋敷の掃除をしてもらい、午後は用事がなければ自由時間という事になっている。


 午前中の屋敷内での様子を聞いた後、エミリーはセーラにくっついてどこかへ行ったようだ。

 セバスは何をしたら良いのか分からないのか玄関に立ち尽くしていたので、声をかけて一緒に裏庭へ連れていくことにした。


「マスターと洋介様は何をされるのですか?」

「今から洋介の矢を作るんだ。セバスは生産スキルって使えるのか?」

「はい。いずれ執事やメイドは、サポートキャラより便利に生産スキルを補助する役割を担う予定でしたので、一通りの生産スキルはSランクになっております」

「未実装のシステムですか。セバス殿は僕達よりハイスペックだったのですね……」

「そのようだな……。それなら、セバスにも手伝ってもらおうかな」

「はい!是非、お手伝いさせてください」


 今までで一番いい返事だ。

 セバスは意外とこういう事が好きなのかもしれないが、本人にその自覚はあるのだろうか。


 洋介はサポキャを連れて木材の調達に行ったので、俺はその間に矢じりの準備をすることにした。


 俺は鉄工系のスキルを上げているので、一通りの道具はマジックポーチに入っている。

 鍛冶をするには鍛冶台が必要なので、鍛冶セットを二つ取り出した。


 この設置アイテムには金属を熱する炉や、整形するための金床、冷却用の水など鍛冶に必要な物が一通り揃っている。

 ゲーム内では画面上で材料をセットすれば叩いて作るモーションが流れて完成だったが、設置アイテムは意外と忠実に再現されていたようだ。


 ゲーム内で精錬したアイアンインゴットと、鍛冶用ハンマーも取り出したら準備は完了だ。

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