表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/173

29 エミジャ村の現状

 屋敷へ戻る前に、村へ寄ってスライムの皮を渡すことにした。


 ダンジョン一周で拾い集めたスライムの皮、その数百二十五枚。

 一軒当たり十五枚ずつ渡し、端数は俺達で食べることにした。


 薬草も渡そうと思ったのだが、そんな高級なものは受け取れないと断られてしまった。

 ゲーム内でも薬草はそこそこの金額で売れていたが、受け取ってもらえないほど高級品では無かったと思う。

 疑問に思いつつも各家に渡し終え、最後に村長の家のドアを叩いた。


 家から出てきた村長は、とても驚いた表情で出迎えてくれた。


「もう、お戻りになられたのですか?」

「はい、思いのほか順調に進んだもので、巨大スライムの皮は無事に入手出来ました」

「おお!ありがとうございます。さぁ、どうぞお入りくださいませ」


 村長に促されて応接室へ向かうと、いつものように夫人がお茶を出してくれる。


「スライムの皮も取ってきたので、後でお渡ししますね」

「まぁ、うれしいわ!ありがとうございます」


 夫人も皮は好きなようだ。とても嬉しそうに軽い足取りで部屋を出て行った。


「巨大スライムの皮はどうしましょうか?ここで広げるには大きすぎますよね」

「中を綺麗に洗わなければなりませんので、お帰りの際に広場の水場に入れてくださるとありがたいです」

「わかりました」


 洋介に視線を向けると、皮を持っている彼は了解したように頷いた。


 それから村長に視線を戻すと、彼は困ったように眉毛を下げていた。

 この村長は、割とコロコロ表情が変わる人だ。


「ところで皆様は、町へ買い出しにいくご予定などございませんか?」

「町へ?特に必要な物は……」


 と言いかけたところで、村長が何を言いたいのかを理解した。

 巨大スライムの皮を町まで運ぶのはかなりの重労働だろう。村人が運ぶより俺達がマジックポーチで運んだ方が遥かに楽だ。


「町へは行ったことがないし、見物にでも行ってみようか?」


 セーラと洋介に視線を向けると、二人は快く頷いてくれた。


「何から何まで申し訳ありません。配達料はしっかり払わせていただきますので」

「いや、ついでですからいいですよ。それより、せっかく行くんで買い出しでもしてきましょうか?ここからなら町へも滅多に行けないでしょう」


 村からダンジョンへの距離を考えると、村から町までは歩くと二日くらいかかるんじゃないかと思う。

 馬なら一日でたどり着けそうだが、この村でまだ馬を見たことがないので、いるのかどうかも怪しいところだ。


「ありがたいお申し出ですが……、大変お恥ずかしいことに、出稼ぎへ行っている者達が帰って来なければ、村にはあまりお金がないもので……」

「そうですか……。巨大スライムで得たお金は村人で分けるのですか?」

「いえ……。秋に徴収される税金の一部に充てる予定でございます。今年は皆様が無償で引き受けてくださったのでいつもより余裕ができました」


 つまり村人の手元には一銭も残らないわけか。この村は思っていたより貧乏なようだ。


 そんな環境でも、スライムの皮にはお金を出そうとしていたのだから、村人にとってはそこまでして食べたい物だったみたいだ。


 町へは責任をもって運ぶことを約束し、広場の中央にある水場へ巨大スライムの皮を浮かべると、俺達は屋敷へ戻る道に入った。


「なぁ……、この村の現状どう思う?」


 何となく村長との会話が心に残ってしまった為、二人がどう思っているのか尋ねると、洋介は神妙な表情になった。今回のその表情は妥当なところだろう。


「自給自足は出来ているようですが、畑の規模からいって町に売りに行っているようには思えませんね。家具なんかはどの家も質の良い物をそろえていましたが、どれも年季が入ったものばかりで新しそうな物はありませんでした」

「冒険者で賑わい羽振りの良かった頃に揃えたんだろうな。食べ物は確保できているがお金に関しては、村長が言っていた出稼ぎ頼りってことか」

「洋服も刺繍やパッチワークが素敵なので分かりにくかったけれど、あちこち繕って大切に着ている印象だったわ」


 セーラも女性らしい視点から意見を述べてくれる。


「衣類にまではあまりお金をかけられないようだな。俺は金属製品があまりないなと思っていたんだ。金目の物はすでに売り払ってしまったのかもしれない」


 セーラが屋敷の温泉に設置してくれたスズラン型の街灯。ゲーム内ではこの村にも各建物の前に設置されていたが、ここには一つも無い。


「最低限の生活はできるけれど、税金が負担になっているようですね。僕達ならそれを改善できるのではないでしょうか」

「私達も村人の一員ですもの、お手伝いできることはしましょう」


 俺もそう思って二人に話しかけたのだが、どうやら気持ちは同じのようで良かった。

 意見が一致したところで、話は早めにしておいた方が良いだろうと、村長の家へと三人で戻った。


「お話とは何でしょう?」


 再び応接室に通してもらい、不思議そうに見つめる村長。

 俺は中二な容姿で不審がられないよう、極力さわやかに微笑んだ。

 何故なら、これから持ち掛ける話はごくごく健全なものだからだ。


「単刀直入にお聞きします。村人全員でお金を稼ぐ気はありますか?」

来週は本日の続きと屋敷でのお話になります。

そろそろカイトは気が付くかな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ