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02 目覚めた先は異世界?

 肌に触れるジメっとした感触と、風の冷たさで身震いがして目が覚めた。

 ゆっくり目を開けると間近に地面があり、腐葉土になりかけの枯れ葉上を小さな虫が歩いているのが目に入った。


 どうやら、うつ伏せに寝ていたようだ。


 ゆっくりと起き上がってみたが特にどこも痛い場所は無い。顔や腕に着いた土を落としながら上を見上げた。

 大きな木々に囲まれていて、生い茂る葉の隙間からは多少、日の光が差し込んでいる。

 見たことある木だなと思いつつも、自分が何故こんな所にいるのかを思い出そうとしたが。


 ――うーん俺は確か、PCの爆発に巻き込まれたんじゃなかったか?


 普通なら病院のベッドで寝ている筈では。もしくはすでに……。

 そこまで考えて、肌寒さが一層強くなった。


 ――やっぱり俺、死んだのか?ってことはここは天国?


 にしてはジメジメとした森だ、とても天国のような暖かい雰囲気は無い。かといって地獄のような毒々しさも無いが。


 視線を周囲に向けると――。


「……セーラ?」


 さっきまでゲーム内で会っていたセーラとは服装が違うが、薄い紫の長い髪の毛に清楚な顔立ち。目は閉じているが、きっとあれはセーラだと俺は直感した。


 その彼女が今まさに、スライムの餌食になろうとしていた。大きく開けた口のようなもので、セーラを飲みこもうとしている。


 ――待て待て!それはまずいだろう!


「セーラを飲み込むなーーー!」


 慌てて立ち上がってコケそうになりながらも駆け寄ると、スライムを思い切り蹴飛ばした。


 スライムは木に当たると、ぷよんとバウンドしてこちらへ戻って来る。再度蹴り飛ばすが何度も戻って来てきりがない。


 ――何か武器になる物は無いか?


 辺りを見回すと、俺が倒れていた辺りに槍が落ちているのが見えた。

 ゲーム内で俺が使っていた物ではなく、木の柄に簡素な穂が付いただけの見るからに弱そうな槍だ。


 だが、スライムならあれで十分だろう。


 俺はスライムを力強く遠くに蹴り飛ばしてから、槍に向かって走った。

 素早く拾い上げると、スライムに向かって走り出す。


「これで終わりだー!」


 こちらに向かって飛び跳ねてくるスライムめがけて、勢いよく槍を突き刺した。


 するとスライムは、まるで水の入った袋に穴をあけたように中の液体がドロっと流れ出ると、透き通った皮だけになって息絶えたようだ。


 これだけでもすごい運動量だ。


 大きく肩で息をしながら、日ごろの運動不足を痛感する。

 デスクワークだった俺は三十過ぎた今、運動なんて一切やらない生活を送っていた。

 年々育ってきた腹を気にしつつも、休みの日は一日中ゲームをする毎日だった。


 ゲームが楽しかったというのもあるが、彼女に会いたかったのもゲームにのめり込んでいた理由の一つだ。


 振り返るとセーラは、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。


 守れたことにほっとしながら、彼女の元に膝を付く。


 ――さて、どうやって起こそうか。勝手に触って気持ち悪いと思われても嫌だしな……。


 考えた結果、耳元で声を掛けることにした。

 驚かせないように落ち着いたトーンで呼びかける。


「セーラ、起きてくれ。ここで寝ていたら風邪を引くぞ。セーラ聞こえるか?俺だ、カイトだよ」


 俺の呼びかけが耳に届いたのか、セーラはうーんと唸りながら静かに目を開けた。

 アメジストのような瞳が俺を捉える。


 やっぱりセーラだった、思わず笑みがこぼれる。


「……カイト?」

「あぁ、俺だ。調子はどうだ?」


 彼女は起き上がると、自分の体を確認する。


「特に何ともないみたい。カイト、ここはどこなの?」

「それが良く分からないんだ、森の中のようではあるれけど……。それより、目覚める前の記憶はあるか?」

「……記憶?確かカイトがレアアイテムを手に取った後、PCが突然凄い音を立てて……」


 そこまで言うとセーラは自分の体を抱いて、今にも泣きそうな顔になった。


「セーラ落ち着け、多分だが俺達は生きている。どうやら、異世界に転生されてしまったようだが……」


 セーラの顔とスライムで確信した。


 ここはあのMMOPRGの世界に似た何かだ。ゲーム内にしては全てがリアルすぎるし、寒さを感じたり息切れしたりするから生きてはいるんだと思う。


「転生?そういえばカイトの顔、ゲームと一緒ね」

「やはりそうか、セーラもゲーム内の顔をしているよ。だからセーラだってわかったんだ」

「私も?どうしよう……私いま、美少女なの?」

「そうだな、セーラは超絶可愛いよ。……っと言うことは、俺も今はイケメンなのか?」

「ふふ、そうね。カイトも超絶かっこいいわよ」


 セーラは口に手を当てて上品に笑った。


 面と向かって可愛いと言うのは気恥ずかしかったが、多少は気がまぎれただろうか。


「ところで、私達がいるってことは洋介もいるのかしら?」

「その可能性は高いな……どこかその辺にいないか……?」


 辺りを見回すと、少し先の方に洋介らしき人物が倒れているのが見えた。


 そして正に今、洋介はスライムに飲み込まれそうになっていた。


 ――おいおい、嘘だろ!?


「洋介、お前もかーーーーー!」


 槍を握りしめると、俺はダッシュで洋介の元へ駆けだした。

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