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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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23 ステータスとスキル

 休憩を終えた後、だだっ広い広場のど真ん中に置いていたソファーをマジックポーチに戻し、ダンジョン入口へと向かった。


 入口に近づくと、下の階へと降りる階段が見えるのはゲーム通りだ。


 だが、ゲームには無かったものが入口の横に設置されていた。


「何だこれ?」

「石板……に見えますが、何も書かれていませんね」

「飾りにしてはシンプルすぎるし何かしら?」


 入口の横に大きな石板状の物が壁に埋め込まれている。


 何となく気になってそれの前に立ってみると突然、石板に文字が浮かび上がった。


「これって……俺達のスキルやステータスの情報じゃないか?」

「どうやらそのようですね。各自、自分のデータが見えているということでいいんでしょうか?」

「そうだと思うわ。左上に名前が表示されているもの」


 セーラに言われて左上を見てみた俺は、顔を引きつらせた。


「た……確かに、俺の名前が表示されているな……」

「その表情……もしや、正式名ですか?カイト殿」


 数年前のアップデートでニックネームを表示できるようになったので、今は『カイト』に改名したが俺の正式名は『卍海斗卍』と言う。


 お別れしたはずだった中二の残骸が、まさか転生先に付いて来るなんて!


「あぁ……、でもこれは俺しか見えないようだから問題ない!」

「久しぶりに見たかったわ、残念」


 セーラさん、可愛い顔していじめないでください。


「そ……それより、ステータスを確認しよう!」


 この石板はどうやらマジックポーチと同じような物のようだ。

 石板を見ているのに、ゲーム内のステータス画面を見ているような感覚になる。


「やはり予想通り、僕たちはEランクのようですね」

「そうだな。スキルも表示されているが、なんで使えなかったんだろう」


 スキル欄にはしっかりと、この前使ったスキル名が表記されている。


「……待ってください!このスキル、変ですよ」

「本当……、ホーリーランサーの攻撃範囲が360度になっているわ」


 Eランクであるなら、ホーリーランサーは前方に槍が一本飛び出すだけだ。


「それってSSランクの攻撃範囲じゃ……」

「僕のスキルもSSランク仕様になっています。カイト殿のスキルはどうです?」


 言われて俺のスキルを確認するが……正直わからん!


「槍のスキルは攻撃力が上がるだけだから、よく覚えてないな……ただ、体力消費は明らかにEランクのものじゃない」


 なんせ、現在の体力より、消費体力が多いのだから。


「スキルが発動しなかった原因はまさにコレですね。体力が足りなきゃスキルが発動するはずがありません」

「セーラの魔法が発動しなかった理由も同じか?」

「そうみたい。これでは当分の間、魔法は使えそうにないわ。唯一、今の魔力で使えるのはヒールかしら」

「ヒールか、存在をすっかり忘れていたな。ちょっと試してみないか?」

「良いけれど、このままかけても体力が回復したのかわからないわよね」

「ちょっと待ってな!俺、走ってくるから!」

「え……、カイト……!」


 突然走り出す俺を見て驚いた様子のセーラに手を振りながら、広場の中を三周ほど走ってみた。

 学校の体育館ほどの大きさだが、三周走り終える頃にはかなり疲れてしまった。


「はぁはぁ……これで、はぁはぁ……少しは減ったはず……」


 再び石板の前に立ってみると、体力が三分の一ほどに減っている。が、どんどん回復してるのも分かる。おそらくパッシブスキルの自然回復が機能しているのだろう。


「はぁはぁ……セーラ、自然回復する前に……ヒールを頼む」

「分かったわ!」


 セーラは慌てて魔法少女の杖を取り出した。

 それを俺に向かって突き出すと、スキル名を唱えた。


「ヒール!」


 その言葉と共に、俺の周りにはキラキラとした光が現れ、なんとも心地良い気分になった。


 息が楽になり体の疲れがほぐれ明日、筋肉痛になる心配が消えた。


 まるで、温泉に入っているような気分だ。


 ステータスを見ると体力はMAX値に戻っていて、どうやらヒールは成功したようだ。


「ありがとう、セーラ。ヒールで体がとても楽になったよ。体力もMAXに戻っている」

「本当?成功して嬉しいわ」


 杖を握りしめて喜ぶ彼女を見て、さらに癒される。


「消費体力や魔力さえ確保出来れば、スキルは問題なく使えるようですね」

「そうみたいだな、パッシブスキルの自然回復も機能しているようだった」

「そうですか。では、これも機能しているようですね……」


 洋介は神妙な表情で石板を見た。どれかのスキルを見ているのだろうか。


「これって?」

「パッシブスキルの移動強化ですよ。これ、SSランクだと地味に体力を持っていかれるんですよね」

「これか。SSランクの体力だと微々たるものだが、Eランクだときついな。だから歩くとすぐに疲れていたのか」


 パッシブスキルの移動強化は移動速度を速めてくれるが、普通の速度で歩いていても体力は消費される。

 ランクの体力に合わせて設計されているだろうから、俺達のような状態は想定外なのだろう。

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