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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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21 での考えは

 朝食の席、いつも俺の隣に座っているセーラは今、洋介の隣に座っている。

 これが本来の姿なんだよなと思いつつも、今までは何故俺の隣に座っていたのか疑問に思う。


 洋介の顔を見たかったから?それだって、隣に座っていたほうが近くで見られるし、ゲーム内なら好きなアングルに出来るんだから、キャラを並べたいのが普通じゃないのか。


 今日の予定を話し合った結果、まず村長にセバスとエミリーを住まわせる許可をもらいに行くことにした。

 その後、家賃替わりであるスライムの皮を集めに行くので、俺と洋介とセーラは戦闘装備に着替えた。


 村までは普通に歩いて十分程度だが、俺達はひ弱なのでゆっくり歩いて十五~二十分といったところだろう。

 のんびり歩いていると、洋介が隣にやってきた。


「カイト殿、負担でなければ姉上の手を引いてあげてくれませんか?彼女、道の悪い場所は歩きなれていないもので」


 歩きなれていない?振り返ってセーラを見てみると、確かにゆっくり歩いている割にはぎこちない歩き方をしている。

 今までは靴や体力のせいかと思っていたけど、そうではなかったようだ。

 都会に住んでいる女の子だと山道はきついのかもしれない。


 ――だが何故、俺に言う……。彼氏なんだから、自分で手を引けばいいだろう。


「設定なら気にしなくてもいいぞ。弟が手を引いたって別に問題ないだろう」

「……カイト殿、何かあったのですか?」


 洋介は不思議そうに俺の顔を覗き込む。


 この様子だと俺が二人の関係に気が付いた事を、セーラはまだ言っていないのかもしれない。


 洋介は俺の気持ちに気が付いていただろうから、今まで言い出せなくてこうやって気を使ってきたのかもしれないな。

 こんな気の使われ方は全く嬉しくないし、普通なら怒るところなんだろうが、俺は何だか怒る気になれない。

 彼はいつも俺の事を慕ってくれたし、セーラとの関係に対して気を使ってくれていたように思う。


 一歩踏み出さずにいた俺のことを、ゲーム内だけの関係と割り切っていると思って、セーラに好意を寄せることに対して口を出さずにいてくれたのかもしれない。


 だがもう、ここは現実の世界だ。


「いいんだ洋介、もう俺に気を使う必要はない。設定上、人前では難しい事もあるかもしれないが、仲の良すぎる姉弟としてセーラを支えてくれ」

「はあ……」


 洋介は腑に落ちない様子だったが、俺が手を引く気がないのは察したのだろう。自分でセーラの元へ向かっていった。


「姉上、僭越ながら僕が村までエスコートさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「ふふ、ありがとう洋介。お願いするわ」


 さっきまで暗い表情だったセーラの顔に笑みがこぼれた。

 さすがは彼氏だな、セーラの扱いがうまい。


 って、エスコートってなんだ、お前ら貴族かよ。




 村の広場まで来ると、村長と村人数人が話し合っているのが見えた。

 皆、肩を落としているようだが何かあったのだろうか。


「おはようございます、皆さん」

「カイトさんに皆さん、おはようございます」

「何か困り事ですか?俺達に出来ることならお手伝いしますよ」

「おぉ、それは助かります!実はお頼みしたい事がありまして……。立ち話もなんですので、我が家へどうぞ」


 村長に言われるまま俺達は、村長宅へお邪魔して応接室へ通された。

 皆でお茶を頂くと、村長はセバスとエミリーに視線を向けた。


「ところでそちらのお二人は……」

「今日は、その事でこちらへ伺いました。実は、うちの執事とメイドが俺達を心配してついてきてしまったんですよ。ここまで来てくれたのに帰すのも気が引けるので、屋敷に住まわせても良いでしょうか?」

「それは構いませんが……。執事とメイドを雇うなど、貴族でなければ……」

「今はただの平民ですよ。俺達は静かに暮らしたいだけなので、できればこの話は村内だけに留めていただけるとありがたいです」


 驚いている村長に、俺は穏やかに答えた。

 俺たちの財産的に一般人では無理がありすぎるから、洋介が考えた身分差の駆け落ち設定は妥当だったのかもしれない。

 けれど、駆け落ち設定は言う気になれなかったので、身分を隠しているように勘違いしてくれるのを願うだけだ。


 それにしても、洋介はこんな設定を作ってどうするつもりなんだろう。洋介はともかく、セーラは結婚したいと言っていたからこのままでは可愛そうだ。

 二人が幸せになるためには、俺は適当な所であの屋敷を出たほうが良いのだろうか。


 そこまで考えて、心の中で苦笑してしまう。

 自分に自信がなさ過ぎた結果、さっきから二人がこの世界で幸せに暮らすにはどうしたら良いのかと、そればかり考えている。

 物語の主人公なら、ここからヒロインを振り向かせようと頑張るのだろうが、俺にはできそうにない。


「村民には周知徹底させますのでご安心ください」

「ありがとうございます。それで、村長の依頼とは?」

「はい、大変恐縮なのですが、冒険者である皆様にしかお頼み出来ない要件でして」

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