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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第四章 王都

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169 村へ帰った日

 結婚式のあとは、パレードがおこなわれた。

 王都で平民と接する機会はあまりなかったので、王女であるセーラはともかく俺の名前まで呼ばれて祝福されるというのはなんだか不思議な気分だったが、これはリアムが今まで国のためにがんばってきた結果なのだろう。これからは彼に代わり、俺たちがモンスターの脅威から国を守っていきたい。

 今までは俺たちが幸せに暮らすためにアークドラゴンを倒す必要があるという考えが大きかったが、こうして守るべき人たちに会うと改めてがんばろうという気持ちになる。


 そして夜は披露宴がおこなわれた。

 俺とセーラはひたすら貴族たちから祝福を受けていたので、洋介がその間にラークレットチーズを自ら貴族たちに振る舞ってくれた。

 チーズは手はず通り、部下がエミジャ村まで受け取りに行ってくれたので、昨日届いたばかりのものを使っている。


 王子が作るラクレットはさぞ映え(・・)ただろう。女性の歓声が何度も聞こえてきた。


「お二人とも、お疲れ様でした。最後のラクレットを残しておきましたよ」


 やっと落ち着いたところで、洋介ができたてのラクレットを持ってきてくれた。


「ありがとう。洋介たちは食べたのか?」

「はい。アメリのをひとくち食べましたが、とても美味しかったですよ。ね?」


 アメリとはアメリーヌさんのことのようだ。

 話しを振られたアメリーヌさんは、木彫りのクマをぎゅと抱きしめてうなずいた。


「はっはいっ。チーズもとろりとしていて美味しかったですが、セーラ様が作られたパンもとても美味しかったですわ」

「ふふ、ありがとう。アメリーヌちゃん」


 祝いに来てくれた人たちをもてなしたいと、チーズをかける食材はセーラが作った。

 洋介によるとチーズもセーラのフランスパンも好評だったようだ。


 冷めないうちにと促され、俺とセーラはラクレットを口に運んだ。

 初めてエミジャ村で作られたチーズなので、環境の変化でうまくいくか心配だったが、初めて食べたときと変わらない美味さだ。


「皆、がんばってくれたのね。とても美味しいわ」

「あぁ。初めてでこの完成度なら安心だ」

「それにしても、まさかご自分たちの披露宴を商談会にするとは思いませんでしたよ」


 洋介は苦笑しながら、大広間の一角に目を向けた。

 そこには椅子とテーブルが置かれ、部下がラクレットの注文を受けてくれている。


「せっかくラクレットを振る舞うんだから、味を忘れないうちに注文を取りたいだろう」

「ふふ、とても良いアイディアだったわ」


 今回は俺たちの披露宴なのでご祝儀的な注文もあるだろうが、きっかけはとても大切だ。

 ぜひとも貴族たちにはラクレットを広めてもらいたい。


 この世界の披露宴は、二人の幼少期を紹介されたり、ケーキ入刀したり、友人が出し物をしたり、両親に花束贈呈と手紙を読んだり、なんてことはしない。

 ただひたすら祝福され、とても穏やかな気持ちで披露宴は終了した。




 そして俺はついに、ずっと前から願っていた『初めてはセーラと』を実現した。

 そのときの様子はスマートさの欠片もない実に俺たちらしい展開だったが、初めての共同作業はこの上ない幸せなもので、俺たちはまた一つ絆を深められたのだと思う。




 そのあとの俺たちは、三人(・・)で新婚旅行へ行ったり、秘密のダンジョンでSランクまで一気に昇格させたりしながら春まで過ごした。


 桜が咲いたころには第二王女フィーナの輿入れがあり、俺たちも結婚式へ出席するために隣国へ足を運んだ。

 披露宴では祝いとして、ムーア商会から買い取ったラークレットチーズを振る舞い、ここでも販路拡大に成功。

 修道女となった第三妃のがんばっている姿も見られたので、有意義な旅となった。






 王都の桜が散ってからしばらくして、エミジャ村へ偵察に行っていた部下からのゴーサインがでたので、俺たちはやっとエミジャ村への帰路についた。


 エミジャ村へ行くのは俺たちのほかに、トム爺とアーリ、俺の部下二十名、転移ゲートの建設作業員、それから牛が二十頭だ。

 残りの部下は、転移ゲートが完成してから移住する予定になっている。


「それにしても、よく国王が許してくれたな。てっきり洋介がエミジャ村へ戻るのは転移ゲートができたあとかと思っていたが」


 俺たち(・・)の中には、セーラのほかに洋介も含まれている。

 一緒に戻れるのは良いが、洋介はそもそも勉強をサボってセーラの部屋に入り浸っていたから学校へ入れられたので、国王が学校のない村へこころよく送り出したとは思えない。


「それには辛く長い戦いがあったんです。そして僕は見事、勝利を勝ち取りました!」

「ふふ、私がいないと起きられないと駄々をこねたのよね」

「まぁ……、ぶっちゃけるとそうなんですが。実際問題、姉上以外の誰も僕を起こすことができなかったので、仕方ありません」

「確かに起きられないんじゃ、学校へも行けないしな」

「そうなんです。その代わり、村で真面目に勉強をするために見張りをつけられました」

「見張り?」


 村へ向かっている一団に、それっぽい人はいなかったが。


「イーサ町で合流予定なんです。しばらく屋敷に住んでもらいますが良いでしょうか」

「部屋はいくらでもあるから、構わないぞ」


 屋敷にはほかにトム爺とアーリ、部下たちもとりあえず住む予定だ。部屋はじゅうぶんにあるが、しばらくはにぎやかになりそうだ。




 今日はイーサ町で一泊だ。


 町の壁が見えてくると、懐かしいという気持ちがこみあげてくる。

 春になり壁の外の住居建設が始まったようで、労働者が集まり町は活気づいていた。


 いつもの宿屋に泊まり、主人から近況を教えてもらった。

 ラークレットチーズはこの町で順調に人気を集めているようだ。

 隣の高級レストランの窓にはセーラが描いたラクレットの絵が飾ってあり、その絵に誘われて店を訪れる人が多いそうだ。




 翌朝のまだ薄暗い時間に、俺たちは出発の準備を整えた。

 牛が歩くペースに合わせると、早めに出なければ夕方までに村へたどりつけそうにないので、余裕を持った出発だ。


 広場に並んでいる馬車を見回すと、一台だけ見慣れない馬車を見つけた。

 その馬車から、一人の令嬢が降りてきた。


「皆様おはようございます。洋介様の家庭教師をさせていただくことになりました、アメリーヌでございます」


 ふふっと笑いながら挨拶をしたアメリーヌさんが、どうやら洋介が言っていた見張りのようだ。

 見張りをつけられたなんていっていたが、自分で手を回したんじゃないのか洋介のやつ……。


 アメリーヌさんをここまで送ってきたディデリクさんによると、貴族は王都の学校へ通わなければならないそうで、転移ゲートで通わせるか寄宿舎に入れるかで迷っていたそうだ。

 どちらもそこそこお金がかかるので、うちの屋敷から通えると助かるようだ。


 ちなみに親バカの国王は、エミジャ村の転移ゲートを誰でも無料にしてくれるらしい。

 ゲートができれば、エミジャ村はかつてのような村に戻れるのかもしれない。


 ディデリクさんや、朝早いのに駆けつけてくれたイーサ町の人たちに見送られながら、俺たちはエミジャ村へ向かった。


 まだ日陰に雪が残っている道を進み、夕方に村へと到着した。


 広場には村人全員がいて、俺たちの到着を待ってくれていたようだ。


「皆、ただいま戻りました!」


 馬車を降りて挨拶をすると、皆が笑顔で口々に挨拶を返してくれた。


 俺たちが貴族と王族だと知っていても、正式な礼を取る人は一人もいない。

 今まで通りの俺たちとして迎えてくれることに、とても安心感を得られた。


 もう村人に隠さなければならないことは、なにもない。

 リアムたちの件も解決した。


 これでやっと心置きなく、仲間とのんびり暮らせそうな気がする。




 誤字報告ありがとうございます!


 ここまでお読みいただきありがとうございました!

 今回で本編は完結となります。

 今後は、番外編を出せたら良いなぁと思ったりしています。


 この小説は今まで書いた中で一番の長編となりました。

 ブクマや評価、感想もいただけて嬉しかったです。

 誤字報告をいつもしてくれた方々にも感謝いたします。

 ありがとうございました!

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