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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第四章 王都

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162 巨大鏡餅

 巨大鏡餅は、二段になっている餅の上段部分に目と口がついており、ゆるキャラのようなモンスターとなっている。

 攻撃を与えると驚いたような表情になり、最上部のミカンがぽんぽん跳ねる仕様だ。


(いち)しかダメージを与えられないだけあって、めちゃくちゃ硬いな」


 実際に攻撃をしてみると、全くと言ってよいほど武器が食い込まない。

 さすがは鏡餅というべきか。今でこそパック状になって売っているものばかりの鏡餅だが、昔は親が苦労しながら鏡餅を割っていたのを思い出す。


 国宝の槍が刃こぼれしないか心配になってきたので、俺はEランクの武器に変更して攻撃を再開した。


 ヒールの手当が終わった騎士たちも加わると、辺りは馬車に繋がれた馬が驚くほどの攻撃音に包まれた。

 巨大鏡餅はひたすら驚いた表情をするだけで、攻撃は仕掛けてこない。

 タコ殴りにするだけで良い、とても楽なモンスターだ。


 しばらく攻撃を続けていると、巨大鏡餅はなにかを我慢しているように、苦し気な表情に変わった。


「おっ、そろそろだな」

「姉上、頼みます」

「ふふ、任せてちょうだい」


 セーラが楽しそうに後退すると同時に、巨大鏡餅は苦しみを一気に放出するような表情になった。

 すると、頭上のミカンがすぽーんと遥か上空に舞い上がり、続いて普通サイズのミカンが大量に噴出し始めた。

 それはまるで、火山が噴火したような光景だ。


「おおおお!なんだあれは!!」「ミカンだ!大量のミカンが降ってくるぞ!」


 騎士や冒険者もこれにはとても驚いたようだ。


 セーラがミカンを拾い集めているのを見て、冒険者たちも拾い始めた。貴族生まれの騎士はミカンよりも経験値を優先したいのか拾う様子はない。


 セーラは一分間で大量に集めたミカンに満足した様子で、再び攻撃に加わった。


 それからしばらく。

 巨大鏡餅に、亀裂が入り始めた。


「おお、これはリアルだな」

「巨大鏡餅も息絶えそうな顔になってきましたよ」


 騎士団長も戦いの終わりが近づいてきたと察したのか、声を張り上げた。


「勝利は近いぞ!休まず攻撃を続けろ!」


 おお!と騎士も冒険者も雄たけびをあげると攻撃は一層激しくなり、次の瞬間。


 巨大鏡餅はバキッという音とともに見事に砕け散り、餅の破片が辺りに飛散した。それが地面に落ちたときには大量の鏡餅に変化していた。


「ふぅ、余裕で倒せたな」


 そう言いながら、俺は大量にドロップされた鏡餅をひとつ、拾い上げた。部屋に飾るのにちょうど良いサイズだ。


「リアム様、これはなんですか?」


 近くにいた騎士が不思議そうに鏡餅を手に取りながら問いかけてくる。

 どうやら、餅の存在を知らないようだ。


「これは、餅という食べ物だ。焼いてから調味料をかけて食べると美味いんだ」


 そう説明すると、皆がもの珍しそうに鏡餅を拾い始めたので、消えてしまう前に俺たちも回収に専念した。

 全員で拾い集めても全ては拾いきれなかったが、しばらくは餅に困ることはなさそうだ。


「ところで、レベルのほうはどうだ?」


 適当に近くにいた騎士に尋ねてみると、彼は意識を集中してから驚いたような表情になった。


「一気に数レベル上がった気がします!!」


 彼がそう叫ぶと、辺りにいた騎士たちも次々と歓喜の声を上げ始めた。


「本当だ!驚くほどレベルが上がっているぞ!」「俺なんかランクが上がっている気がする!!」「こんなに経験値を稼げるモンスターがいたなんて驚きだ!」


 どうやら低ランクの騎士たちは、とても満足のいく結果となったようだ。冒険者も驚くほど経験値が稼げたと喜んでいる。


「実際に倒すまでは半信半疑だったが、リアムたちのいうことは本当だったんだな。良い提案をしてくれて感謝する」


 騎士団長もとても満足した様子で感謝を述べてくれた。


 俺たちも正直なところ半信半疑ではあったが、ゲーム内通りの仕様だったのでほっとした。

 これをあと二日続ければ、騎士団は最低でも全員がCランク以上になれるだろう。




 王城へ戻りセーラの部屋に行くと、セーラは人払いをしてからこたつを取り出した。


「やっぱ、正月はこたつにミカンだよなぁ」

「やっと本当の正月がきた気分ですね」

「ふふ、たくさん拾ってきたから遠慮せずに食べてね」


 セーラはそう言いながら、鏡餅の底をべりっとはがして中から餅を取り出した。

 この鏡餅は近年の日本仕様と同じく、見た目だけ鏡餅のようだ。

 プラスチック容器をこの世界に採用して大丈夫なのだろうかと思ったが、餅を取り出すと容器は消えてしまった。


「世界観を大切にしているなら、普通の鏡餅にしたら良いと思うのですが」


 洋介は取り出された餅をオーブントースターに並べながら、最もな疑問を口にした。


「確かにな。だが衛生面を考えると、こちらのほうがありがたい」


 ミカンは洗えるが、餅は洗ってもなんとなく食べる気にならない。


「それに、鏡餅を割るのは大変だもの。便利なのは助かるわ」


 セーラはそう言いながらポーチからゴマを取り出した。どうやらゴマ餅にするようだ。


「僕は磯部巻きにしたいです。姉上、海苔はお持ちですか?」

「えぇ、あるわよ。カイトはなにをつけて食べるのが好きなの?」

「俺はこれだ」


 ニヤリと笑いながら、ポーチから瓶を取り出した。


「まさか、その唐辛子パウダーをかけるのですか……」

「あぁ。これがまた美味いんだ」

「ふふ、カイトは本当に辛いものが好きね」


 俺はセーラがゴマ餅を作る要領で唐辛子餅を作った。赤をまとった餅はなんとも美味そうだ。


「それじゃ、いただきます!」


 柔らかい餅と刺激的な味を口いっぱいに堪能する。

 これでビールがあれば最高の正月になるが、残念ながら午後はセーラの護衛があるので酒は夜までお預けだ。


誤字報告ありがとうございます!

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