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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第四章 王都

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161 新年

「お頭ー!あけましておめでとう!ぷぷぷ」

「おう、あけましておめでとう。今年もよろしくな」


 部下の間では、俺が間違えた新年の挨拶がブームとなってしまった。

 あちらはとても面白そうだが、俺にとってはごく普通の挨拶だ。

 こうなったら開き直って『あけましておめでとう』を広めたいと思う。


「三が日の王城警備を任せてしまって申し訳ないな。来年はうちの隊も参加できるようにするから、今年は我慢してくれ」

「大丈夫だよ、お頭!今回はランクの底上げが目的なんでしょう?やつらのランクが上がれば私たちも助かるよ」


 長く騎士団にいる部下の話によると、元冒険者の騎士が増えたため年々貴族生まれの騎士はランクを上げる努力を怠るようになってきているようだ。

 モンスター退治は元冒険者に任せ、彼らは王城内での警備ばかりしている。

 それに加えてイベントごとがあれば休みたがるのだから、どうしようもないやつらだ。


 部下たちに感謝をしてから、俺は王城へと向かった。


「カイト、改めて今年もよろしくね」


 頬を染めながらそう言ったセーラは、振袖姿で出迎えてくれた。

 牡丹と藤の花が描かれた紫色の振袖は、とても優美でセーラの美しさをより一層引き立たせている。


「こちらこそ、今年もよろしくな。振袖とても似合うよ」

「ありがとう、嬉しいわ。あの……、カイトの着物も用意してあるのだけれど……」


 セーラはもじもじしながら黒い着物を見せてくれた。どうやら俺に着物を着てほしいようだ。


「せっかくだから俺も着ようかな。着付けを頼めるかな?」


 下着姿をセーラに見せるのは少々恥ずかしいが、俺一人では着られそうにないので仕方ない。


「うん!任せて」


 セーラはまるで振袖に描かれている牡丹のように、可憐な微笑みを見せてくれた。

 新年早々、可愛さが満開だ。


 俺の裸を見て真っ赤な顔になりながらも、セーラは着付けを始めてくれた。


 ソファーでは着物を着た洋介が、日本茶を飲みながらくつろいでいる。


「姉上は、カイト殿と初詣デートがしたくて着付け教室に通ったこともあるんですよ」

「よっ……洋介。そういうことは言わないで……」


 セーラは恥ずかしそうに頬を膨らませた。


「俺も、毎年そう思っていたよ……」

「本当?」

「あぁ。雰囲気だけでもこうして味わえて嬉しいよ」

「ふふ、私も嬉しいわ」


 日本でセーラと体験してみたかったことが一つずつ叶っていくのは、とても幸せだ。

 あのころの俺には想像もできなかった現実だ。


 セーラは手馴れた様子で着付けを完成させた。着付け教室に通っていただけのことはあり、とても素晴らしい完成度だ。


「ありがとうセーラ。洋介の着付けもセーラがしたのか?」

「僕は自分で着ましたよ。ゲーム内アイテムなので適当に着てもそれなりの完成度になります」


 それを聞いた瞬間、セーラの顔は再び赤くなった。


「洋介くん……そういうことは早く教えてくれよ……」


 セーラに裸体を晒した俺は、変態みたいじゃないか。




 着物を着た俺たちが向かったのは初詣ではなく、王都の外にある転移ゲートだ。

 すでに多くの騎士が集まっている。


 セーラが馬車から降りると、騎士たちからざわめきが起きた。彼女の美しさを前に、声を上げずにはいられないようだ。


 一方、レアな着物姿の洋介に悲鳴を上げる女性はとても少なかった。

 貴族生まれの騎士は全員が男性だ。

 今回のイベントには王都の平民にも声をかけたが、集まったのはごくわずか。その中の数名がキャーと声をあげただけだ。


 全員が集まったようなので、騎士団長から今回の作戦が伝えられた。


「このモンスターに攻撃力は必要ないそうだ。攻撃回数が重要なので各自、攻撃回数の多いスキルや武器を使うこと」


 ゲーム内では敵に与えたダメージは数字として表示されるが、これから戦うモンスターには一しか与えられない。そのため、攻撃回数がとても重要になってくる。


 騎士団長からこまごまと配置などについての指示が終わると、そろそろモンスターの目撃情報があった時刻となった。


 俺はポーチから国宝の槍を取り出した。

 この槍は見た目はSSランクの槍と同じだが、ランク制限がないのでポーチで出し入れが可能となっている。

 そして、セーラと洋介も国宝の武器を取り出している。

 アークドラゴンは三人でなければ倒せないと国王に言ったところ、二人にも国宝の武器が与えられた。 親バカなのでそんな理由がなくとも貸してくれたんじゃないかと思っているが。


 準備が整うと辺りが急に暗くなった。

 曇ってきたのだろうかと思いながら空を見上げると、巨大な塊が降って来たではないか。


「散れ!モンスターが降ってくるぞ!!」


 慌てて声をかけると、その場にいた者たちは一斉に退避を始めた。

 ゲーム内ではその場に突然現れたが、そんな心霊現象はこの世界では起きないようだ。だからといって、上から降ってくるのもどうかと思うが。


 空いた場所にその塊が着地する寸前、俺たち三人と平民の冒険者はジャンプをした。

 ドスン!と地面を揺らしながら着地したモンスターの攻撃を、そのジャンプで回避する。


 冒険者にとっては基本動作のようなものだが、騎士たちの多くは回避動作をしなかったのでダメージを受けたようだ。


「こんなことも知らないとは、驚きですね……」


 洋介は呆れた顔で弓を構えた。


 モンスターが地面を揺らせば、それは攻撃となる。

 それを回避するにはジャンプをするのがとても有効で簡単な手段だが、まさかそれすら知らなかったとは俺も驚きだ。

 さすがに騎士団長や指揮官レベルの騎士たちは回避できたようだが、騎士団長もこれには苦い顔をしている。


 ヒールは各隊に任せて、俺たちはモンスターへ攻撃を始めた。


 今回のイベントモンスターは、巨大鏡餅だ。

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