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大好きなゲーム世界に転生出来たんだから、仲間とのんびり暮らしたい  作者: 廻り
第一章 エミジャ村の夏

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12 物件紹介

 村長は、何だか困っている様子で説明を始めた。


「実は、前の領主様が住まわれていた屋敷なのですが、領主様がこの地を離れられる際に好きに使えと譲ってくださったのです。ですが、村人が住むには広すぎて維持費がかかりすぎますし、かと言って領主様から譲り受けた物を放置するわけにもいかず……。月に一度は村人総出で掃除などしているのですが、それも負担になっていて、正直持て余しているのです」

「次の領主は住まないのですか?」

「この辺りは領主を置いて管理するほど人はもう住んでおりませんので、隣の領地と併合されたのです。あなた方でしたら、あの屋敷を維持できるとお見受けします。どうか、引き受けてくださいませんか?」


 大河に航路ができたことによる冒険者の減少は、こんなところにまで影響が出ていたようだ。まるで日本の高速道路のようだな。

 予定より少々大きな家になりそうだが、俺たちは城だって買えるだけのお金があるから問題ないだろう。

 二人に視線を移すと、二人とも異議はないようだ。


「わかりました、俺たちがその屋敷を引き受けることで、皆さんの負担が減るのでしたら売ってください」

「売るだなんて……、元々は領主様から無償で譲り受けたものですから、引き受けてくださるだけで結構です」

「そういわれましても……」


 タダより怖いものは無いって言うしな。

 お金で受け取ってもらえないなら、物でも渡すか?と思っていると、セーラがポンっと妙案を思いついたように手を叩いた。


「それなら、私達が定期的にスライムの皮を提供するというのはどうかしら?」

「それはいい考えだなセーラ!皆さんではスライムを狩れないのですよね?」

「はい……奴ら意外と硬くて、村人では歯が立たないのです」


 あれが硬い?セーラのふざけた……いや、とても可愛らしい武器でも倒せるのに、Eランクとはいえ冒険者と村人では力に差があるのかもしれない。


「ではスライムの皮と交換でどうですか?」

「よろしいのですか?私どもばかりが得をしているように思えますが」

「俺たちにとっても、好条件ですから」


 むしろこっちが、申し訳ないくらいだ。この村の中にある空き家と皮の交換だって少なすぎると思う。

 俺たちにとっては価値のない皮でも、村人にとっては価値のあるもののようだし、逆に村人では持て余す物件でも、俺達にはありがたい物件だ。


「村人も喜ぶでしょう、ありがとうございます。では、明日にでも屋敷にご案内いたしましょう」

「こちらこそ、よろしくお願いします」





 次の日、朝食にはデザートとしてシロップに漬けたスライムの皮が出てきた。餡子のようなものを皮で包んであって、めちゃくちゃ美味かった。

 スライムの皮、最高だな!


 食後に村長は屋敷へと案内してくれたのだが、10分も歩けばそりゃ疲れるわけで。


「こちらが、屋敷になります。皆様、お疲れのようですが……大丈夫でしょうか?」

「すぐに……はぁはぁ、落ち着き……ますので、ご心配なく……はぁはぁ」


 むしろ、村長は何故疲れていないのかと問いただしたい。

 そんなに丈夫でスライムが狩れないなんて、わけがわからないな。


 少し落ち着いたところで屋敷に目を向けると、そこは三階建ての中世ヨーロッパ風な建物だった。

 ゲーム内ではこの辺りに入る道がなかったので、未実装の場所なのだろう。

 庭は手入れする余裕がなかったのか荒れ果てているがかなりの広さで、整備すればセーラが喜びそうな庭になる気がする。

 屋敷の横には馬小屋と作業小屋のような建物がある。その奥に畑のような開かれた場所があるが、そこも荒れ果てている。


「これは整備のし甲斐がありそうです」

「申し訳ありません、館内の手入れしか余裕がなかったもので」

「全然かまいません。いい暇つぶしになりますよ」

「そう言っていただけるとありがたいのですが……」


 整備されていると手を出しにくいが、これだけ荒れているなら好き勝手にやっても文句は出ないだろう。

 本来は村で小さな畑でもと思っていたが、そこそこ作物も作れそうだ。


 屋敷内は落ち着いた雰囲気だが領主の屋敷なだけあって、どこも手の込んだ作りになっている。

 村人は本当に毎月手入れをしていたようで、傷んでいて修理しなければならないような箇所はなく、今日からでも住めそうな雰囲気だ。


「中も綺麗だし、今日から住もうか?」

「そうですね、何度も往復するのも疲れますし今日はもう動きたくありません」

「食料もそこそこあるし、いいと思うわ」


 二人の賛同を得ていると、村長が焦った様子で声をかけてきた。


「あの、申し訳ありませんがこちらには家財道具が一切ありませんので、どこかで調達する必要が」

「それなら問題ありません、この中に一式入っていますので」


 ウエストポーチをぽんっと叩いて見せると、村長は納得した顔になった。

 主に家財道具を持っているのはセーラだが、俺と洋介も多少は持ち合わせている。


「それでお一人ずつマジックポーチをお持ちなのですね」

「そんなところです」


 そういえば昨日、夫人も言っていたような気がするが、これはマジックポーチと言うようだ。


 村長は困ったことがあれば何でも相談してくれと言い残し村へと戻っていった。

 これからお世話になることも多いと思うので、優しい村長で本当に良かったと思う。


 村長を見送り玄関のドアを閉めると、振り返って二人を見た。


「それじゃ、始めるとしますか!」

「「はーい」」


 相変わらず気合の入らない返事だか、二人ともやる気に満ちた表情はしている。

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